2019年4月、アメリカのボストンにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、12位に入賞したニュージーランド代表Dove Chen(ダヴ・チェン)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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Grey Street Kitchen Cafe(←facebookページです。)のオーナーであるDove Chenバリスタは、WBCの出場はWBC2017にも出場していたので今回が2回目となります。
ニュージーランドのスペシャルティコーヒー協会(NZSCA)のバリスタチャンピオンシップでは、次のような大変ユニークな賞があります。
- Best Newcomer(新人バリスタの中で最も活躍した人に贈られる賞)
- People’s Choice(お客さんの投票で決定される人気バリスタ賞)
- Outstanding Milk Beverage(素晴らしいミルクドリンクを作ったバリスタに贈られる賞)
これはニュージーランドの大手乳製品製造会社Meadow Freshの協力の下で実現されています。
これらのユニークな賞のうち、2019のOutstanding Milk Beverageに輝いたのがDove Chenバリスタです。
ちなみに、Best Newcomerに選ばれると2,000ニュージーランドドル(約143,000円程度)、Outstanding Milk Beverageに選ばれると500ニュージーランドドル(約35,700円程度)キャッシュで授与されます。
今回のWBC2019では、幸せなひと時を感じるコーヒーについて明確な定義づけを行い、そのコーヒーを実現するという内容です。Outstanding Milk Beverageに輝くほどのミルクドリンクも見どころの一つです。
WBC 2019 -12位Dove Chen-プレゼン動画
World Barista Championship セミファイナルの動画で確認できます。
WBC 2019 -12位Dove Chen-プレゼン概要
使用コーヒー:パナマ・フィンカ ヌグオ・アナエロビック ハニー・ゲイシャ
- 国:パナマ
- 地域:チリキ県フルトゥンゴ
- 農園:フィンカ・ヌグオ(Finca Nuguo)
- 品種:ゲイシャ
- 標高:1900m
- 生産者:ホセ・マニュエル・ガヤルド(José Manuel Gallardo)
- プロセス:アナエロビック・ハニー
- エイジング:エスプレッソコースでは10日目の豆、ミルクでは15日目の豆を使用。
フィンカ ヌグオは1900 m地点の自然の熱帯雨林とコスタリカとの境界に位置する。
大西洋からくる温かい風ととても冷える夜の温暖さがあり、コーヒーチェリーはゆっくりとした熟成される。
それがこのコーヒーの甘みと酸を増加させている。
アナエロビック・ハニープロセスについて
生産者のホセは完璧に熟したコーヒーチェリーのみを摘み取り、甘みを引き上げている。それに加えて高い標高に位置しているため、シトラスのような酸をもっている。
摘み取った後パルピングし、発酵可能なミューシレージを残したまま、コントロールルームにある密閉容器に入れて容器いっぱいまで水をいれて5日間発酵させる。
発酵プロセスによって乳酸菌が増加する。それがマウスフィールを向上させ、甘いアップルのフレーバーを生み出している。
5日後、レイズドベッドに移して1ヵ月かけて乾燥させる。このゆっくりとした乾燥工程が次の2つをより濃厚していく。
その2つが”フレーバー”と”甘み”である。
プレゼンの内容
「コーヒーがとても美味しくて、幸せなひと時を感じたときのことを覚えていますか?」私は覚えている。それは我が子を持つことと同じように幸せなひと時。
私がコーヒーで重要だと思うことは次の2つ。”フレーバー”と”甘み”。
“フレーバー”は記憶を生じさせる。
“甘み”は記憶を幸せとつなぎ合わせる。
コーヒーにこの2つ”フレーバー”と”甘み”があることで、私は幸せなひと時を感じることができる。
この幸せな記憶を再現し、バランスのとれたエスプレッソを抽出するための焙煎と抽出をセレクトした。
焙煎について
エスプレッソコースとシグネチャービバレッジはドラムローストでフレーバーをより感じるようにテイストバランスに焦点をあてた。
ミルクコースの焙煎はジョン・ゴードン(John Gordon)氏が担当。このコーヒーを飲んで「虹のような味だ」といった。
熱源を熱風とハロゲンヒーターの両方を使う焙煎機を使用。
乾燥工程でのROR(Rate of Rise : 温度上昇)を最大化し、コーヒー豆内部を発達させて、徐々にハロゲンを減らすことでカラメル化を促進させた。
アナエロビックファーメンテーションと相まってスムースな質感をもたらしている。
抽出について
幸せな記憶を再現し、バランスのとれたエスプレッソを抽出するために、抽出は以下のようにした。
エイジングをドリンクによって変更。
粉量と抽出量を各ドリンクで調整。
WBC 2019 -12位Dove Chen-プレゼンの流れ
- シグネチャービバレッジ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
シグネチャービバレッジ
コンセプト
フィンカ ヌグオを訪れた時、囲まれたコーヒーの木々から放たれているフローラルでシトラスのアロマて圧倒された。
この経験は私にとって幸せな記憶の一部であり、ぜひ共有したくこのアロマにインスパイアされたフィンカ ヌグオの自然環境を再現する。
私の幸せな記憶と初めて経験したアナエロビックハニープロセスと関連する副材料を用いてドリンクを作成。
エスプレッソ 4ショット
- 粉量:20 g
- 抽出量:46 g
材料1:ジャスミンとライムのミスト
- フィンカ ヌグオを訪れた時に圧倒されたコーヒーの木々からもたらされたアロマを再現。
- 2:1=ジャスミン:ライムオイルの比率で作成。
- ジャッジの前にあるセットの中にアロマディフューザーが仕込まれており、その上にカップを置く。
- ジャスミンとライムのフレーバーを引き立てる。
材料2:カスカラヌガーシロップ 20 g
- 完熟したコーヒーチェリーの甘みを表現するために使用。
- 1:1:3=白砂糖:フィンカ ヌグオのカスカラ:水の比率でゆっくりと1時間加熱調理したもの。
材料3:発酵させたアップルジュース 30 g
- アナエロビックハニープロセスのフレーバーを引き出すために使用。
- 20 gの白砂糖と200 gのアップルを温度管理のできる容器で12時間乳酸発酵させたもの。
- リッチな濃厚なアップルの風味がある。
- このリダクションをドリンクと混ぜ合わせることで、マンゴーネクターの新しい風味が生まれる。
材料4:卵白のフォーム 20 g
- クリーミーな質感を作り出すために使用。
- アナエロビックファーメンテーションによって増加したラクトースを表現している。
シグネチャービバレッジの工程
- あらかじめグラスへ材料1がミストされるようにセットする。
- 他材料とエスプレッソを合わせてミキサーで混ぜ合わせる。
ディスクリプター
- ライム
- ジャスミン
- マンゴーネクター
- 砂糖漬けのライム
- 煮込んだアップル
エスプレッソコース
レシピ
- 粉量: 20 g
- 抽出量: 46 g
- 10日前焙煎の豆を使用。
ディスクリプター
- 弾けるような白ブドウ
- 甘いライム
- 青リンゴ
- ジャスミン
- ミディアムボディ
- シルキーでスムースな質感
インストラクション
10回混ぜること。
ミルクビバレッジ
ダブルヘビーエクスペリエンスなミルクドリンクを作成。
甘みがあり、リッチなミルクコーヒードリンクは、ヘビーな成分が入っている。高い糖と高い脂肪分がある。
これを実現するため、凍結蒸留したミルクを使用。凍結蒸留して水分を取り除くことで50%まで濃縮した。
また、フレーバーと甘みがより濃厚になるようエスプレッソもヘビーなレシピにしている。
レシピ
- 粉量:20 g
- 抽出量: 20 g
- 抽出時間:20秒
- ミルク量:80 g
- 15日前焙煎の豆を使用。
ディスクリプター
- 熟れたバナナ
- ココアニブ
- モルト
- バタースコッチ
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