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2017年韓国ソウルにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC) にて準優勝した日本代表、鈴木 樹バリスタ(丸山珈琲)のプレゼンテーションを紹介します。
鈴木 樹バリスタは、今回で3度目のワールドバリスタチャンピオンシップの挑戦となります。
日本代表としてWBC出場最多の経験者となります。
WBC 2010では5位、WBC 2011では4位、今回のWBC 2017では見事準優勝と右肩上がりの成績となりました。
2016年のジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC)で優勝したときは、パナマ・エルブーロ農園のゲイシャ種を使用して、微粉による過抽出を防ぐ方法を紹介していました。
今回のWBC2017では、ボリビアのゲイシャ種を用いて、全てのポジティブな側面を抽出できる新しい抽出方法「ダブルグラインド」を考案し、紹介しています。
JBC2016の内容を違う角度でさらに昇華させたような内容で、全く新しい画期的な方法です。
WBC 2017, 準優勝 – 鈴木 樹バリスタのプレゼン概要
使用コーヒー
- ボリビア・フィンカ・ラス・アラシータス
- 国:ボリビア
- 地域:ラ・パス県カラナビ地区・ボリンダ
- 農園名:フィンカ・ラス・アラシータス
- プロセス:ウォッシュト
- 品種:ゲイシャ
- 農園主:ペドロ・ロドリゲス・ペニャリエータ
- 標高:1,580 m
フィンカ・ラス・アラシータス農園の取り組み
フィンカ・ラス・アラシータス農園ゲイシャ種のコーヒーの特徴:素晴らしい甘み、フローラルフレーバー、クリーンフィニッシュ。
- 通常、ゲイシャ種はシェードツリーで直射日光を減らす。しかし、ペドロ・ロドリゲス氏はシェードツリーを取り除き、コーヒーノキに直射日光をあてることによって、コーヒーノキの健康状態を向上させた。
→コーヒーがより甘くなった。
- クリーンな水を維持するために2度水の入れ替えを行う。
→美しいフローラルフレーバーになる。
- 特別な低温ドライヤーにて、40度以下の温度を維持して乾燥させる。
→クリーンフィニッシュにつながる。
鈴木樹バリスタの取り組み:新しい抽出方法「ダブルグラインド」
- 美しいフローラルフレーバーと甘み、テクスチャーを同時に引き出せる。
- 鈴木樹バリスタが命名。
「ダブルグラインド」の4ステップ
- 44gのコーヒー豆に20gの液体窒素を加える。
- コーヒー豆をかなり粗めに挽く。
- かなり粗く挽いたコーヒー粉に、さらに20gの液体窒素を加える。
- かなり粗く挽いたコーヒー粉をエスプレッソ用の挽き目で挽く。
「ダブルグラインド」に思い至った経緯
- ドース量:エスプレッソ抽出量=1:2という典型的な抽出方法では甘みがあったが、苦みもあった。
- 抽出量60gと多めに抽出した場合、美しいフローラルフレーバーがあったが、渋みも感じた。
- 抽出量を多く取るショットで、美しいフローラルフレーバーと甘み、テクスチャーを同時に引き出せないか考えた。
- そこで、コーヒー豆を凍らせて抽出してはどうかと考えた。
- クリストファー・ヘンドン博士の研究によって、凍らせたコーヒー豆は粒子径の分布が狭くなり、細かな粒子が揃うことで、同量のコーヒーでも多くのフレーバーを抽出できることがわかっていた。
- 凍らせたコーヒー豆を使用する実験は、甘みとフレーバーの抽出に成功したが、まだ完全なエスプレッソ抽出ではなかった。
- クリストファー・ヘンドン博士の研究をさらに進化させるため、レーザー粒子分布計測テストを行った。
- 100マイクロン未満の粒子径の粉が増加していることがわかった。
- 抽出量を多く取るショットでは、小さな粒子径を揃えることも重要だが、それと同時に表面積も重要であると気付いた。
- 表面積を増加させるため、グラインド回数を2回にした。(ホールビーンの状態で一回、粗めに挽いた状態でもう一回挽く。)
- 表面積を分析にかけたところ、通常のグラインドに比べて、表面積が10%増加した。
- この大幅な増加によって、エスプレッソの抽出濃度が劇的に増加した。
- →抽出量を多く取るショットでもテクスチャーを確保できるようになった。
- →抽出量を多く取るショットで、フィンカ・ラス・アラシータス農園ゲイシャ種の美しいフローラルフレーバーと甘み、テクスチャーを同時に引き出せるようになった。
WBC 2017, 準優勝 – 鈴木 樹バリスタのプレゼンの流れ
- シグネチャービバレッジ用のエスプレッソを抽出(室温にする)
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
エスプレッソコース
レシピ
- 粉量:23g
- 抽出量:50g
- 抽出温度:92度
→甘さが最大になるポイント
フレーバー
- 1口目:マンダリンオレンジ、ベルガモット
- 2口目:ブラウンシュガー
- 後味:紅茶
- タクタイル:ミディアムローボディ、シルキー
カスタムメイドした間口の広くて薄いカップで提供。
→フレーバーをよりクリアに感じることができる。
ミルクビバレッジ
レシピ
- 粉量:23g
- 抽出量:50g
- ミルク量:70g/カップ
フレーバー
- マンダリンオレンジ、キャラメル、紅茶
ミルクを加えることで、
- マンダリンオレンジ→シトラス、甘いオレンジへ変化する。
- ブラウンシュガー→キャラメルへ変化する。
- フローラルフレーバー→紅茶へ変化する。
ダブルグラインドは、ミルクとも相性が良く、フィンカ・ラス・アラシータス農園ゲイシャ種の美しいフレーバーを維持できる。
シグネシャービバレッジ
とても長い抽出で、フィンカ・ラス・アラシータス農園ゲイシャ種の新しいフレーバーを発見する。
それを感じてもらうために、副材料を制限し、バランスとフレーバーを補うためにのみ使う。
材料:
- エスプレッソ:70g(とても多い抽出量)
→フィンカ・ラス・アラシータス農園ゲイシャ種に存在するグレープとアップルのフレーバーがでてくる。エスプレッソコースのときには感じなかったもの。
- 1gのフリーズドライした乳酸
→グレープとアップルのフレーバーをもたらす。
- 5gのフリーズドライ・ハニー
→はちみつの甘さでバランスをとる
→フリーズドライを使う理由は、これ以上の加水で水っぽくしたくなかったため。
- ラベンダーアロマ
→液体とシナジーを起こし、ピーチフレーバーをもたらす
工程
- 材料1,2,3をバキュームブレンダーで混ぜ合わせ、エスプレッソに存在するCO2を取り除く。
→エスプレッソに存在するCO2を取り除くことでシルキーなテクスチャーとなる。
- アロマディフューザーで材料4のラベンダーアロマをグラスに注入する。
- 室温で仕上げる。
- グラスに注ぎ、スワリングして提供。
フレーバー
グレープ、レッドアップル、ホワイトピーチ、紅茶でフィニッシュ
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