オランダアムステルダムにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ2018(WBC) の日本代表、石谷貴之(TAKAYUKI ISHITANI)バリスタ(フリーランス)のプレゼンテーションを紹介します。
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今回初めてワールドバリスタチャンピオンシップに挑戦した石谷貴之バリスタは、セミファイナルまで進出し11位という輝かしい結果となりました。
今回のWBC 2018では、ジャパンバリスタチャンピオンシップ2017の時に使用していたコーヒー豆と同様の生産者のものを使用しています。
プレゼンでは、その生産者から聞いたという3つの重要なことをシェアしています。
そして、理想とする高いポテンシャルを持つコーヒーと出会った経緯と、そのコーヒーを最大限活かすために行った取り組みを実践しています。
WBC 2018–石谷 貴之-11位プレゼン動画
※ワールドバリスタチャンピオンシップ2018の詳しい動画視聴方法はコチラをご確認ください。
WBC 2018–石谷 貴之-11位プレゼン概要
使用コーヒー:エチオピア・ゲシャ・ビレッジ・オマブロック
- 国:エチオピア
- 農園:ゲシャビレッジ・オマブロック
- 農園主:アダム・オバートン(Adam Overton)
- プロセス:ナチュラル
- 品種:ゲシャ1931
- 使用ロット:Lot 96。2018年早期収穫されたもの。
- 乾燥:スロードライ。31日間、水分量が11%になるまで乾燥させる。
使用コーヒーを選んだ経緯
- 好きなコーヒーの特徴は、クリアで甘くて、フローラル、そしてトロピカルフルーツやシトラスのような明るい風味を持つコーヒー。
- そしてそれが、お客様に提供したいコーヒーの特徴でもあり、ジャッジにも提供したいもの。
- バリスタチャンピオンシップでは、12年間中央アメリカの標高の高いコーヒー豆を選んで使用していた。なぜなら、上記の特徴をもったコーヒーが存在していると思っていたから。
- しかし、バリスタチャンピオンシップでは甘みが足りないという評価を受けていた。
- 好きなコーヒーの特徴もありながら、「どうすればより甘みのあるコーヒーを得ることができるのか」という点をFrom seed to cup 全体を考え直した。
- その結果、テロワール、品種、プロセスのコンビネーションで理想とするポテンシャルを持つエチオピア・ゲシャ・ビレッジ・オマブロックのコーヒーにたどり着いた。
グリーンコーヒーのポテンシャルを最大化するために重要な3つの要素
1. テロワール
- ゲシャビレッジは、アラビカ種の生まれたエチオピアにある。
- エチオピアのコーヒーは、一般的に明るく、フルーティで、複雑さがある。
- 生産者アダム・オバートンは、高い標高、十分な降雨量、マイルドな気候があるため、ゲシャビレッジに農園を作った。
- これらの特徴は、明確な酸と発達したフレーバーをもたらす。
2. 品種
- 生産者アダム・オバートンは、オマブロックにゲイシャ種を植えた。
- 移植したゲイシャ種は、パナマのゲイシャにとてもよく似ている。
- その品種は、ゲシャ1931と呼ばれる。
- テロワールと合わさることで、フローラルなアロマ、トロピカルフルーツフレーバー、繊細な甘みをもたらす。
3. プロセス
- 使用のコーヒーは、ナチュラルプロセス。
- 通常ナチュラルプロセスはレッドフルーツ、パープルフルーツ、ワイニー、チョコレートを想起させる風味をもたらす。
- しかし、上記のテロワールと品種にナチュラルプロセスが組み合わさると、異なる結果が生まれる。
- レッドフルーツ、パープルフルーツ、ワイニー、チョコレートに加えて、フローラル、トロピカルフルーツの風味、複雑な甘みを持つようになる。
- 使用コーヒーは早期に収穫されたもの。
- 早期収穫することでより長い乾燥期間とゆっくりとしたドライイングプロセスが必要になる。
- そのスロードライングは、フレーバーの可能性、甘み、クリーミーなボディをさらに増加させる。
高いポテンシャルのコーヒーを活かすための抽出について
- 高いポテンシャルを持つコーヒーの特徴を引き出すために、次の抽出テクニックを使用。
- 粉量:25g
- 抽出量:46g
- 抽出温度:低温の90.5度
- 粉量に対しての抽出量の比率も温度も通常ではない。
- 全てのコーヒーに対して最適な抽出テクニックではないが、イエローフルーツとオレンジフルーツの風味を引き出すことができる。
- 粉量25gは、ブラインドシェイカー(Blind Shaker)で振って密度を上げる、ライトローストのコーヒーを使用することでバスケットに収まる。
- ブラインドシェイカーの振る回数を変えてガス抜きの量をドリンクごとにコントロールしている。
高いポテンシャルのコーヒーを活かすための焙煎について
- 焙煎者:カポ・チウ
- 1ハゼの直前でガスを下げデベロップメントタイムを2分、デベロップメント比率22%に設定する。
- アロマ、甘み、フレーバーを発達させる。
WBC 2018–石谷 貴之-11位プレゼンの流れ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
エスプレッソ
イエローフルーツとオレンジフルーツに焦点を当てて抽出。
- 粉量:25g
- 抽出量:46g
- 抽出温度:90.5度
→明確な甘みと、トロピカルフルーツやシトラスの明るいフルーツを引き出すことができる。
- フローラルアロマ
- 1口目:パッションフルーツ、パイナップル
- 2口目:甘いオレンジ、レモン
- クリーミーボディ、ミディアムウェイト、とても長いフィニッシュ
ミルクビバレッジ
イエローフルーツとオレンジフルーツに焦点を当てて抽出。
- 粉量:25g
- 抽出量:46g
- 抽出温度:90.5度
- オレンジクリーム、かすかなパイナップル、甘みのあるブラウンクッキー
シグネチャービバレッジ
コンセプト
- 副材料を使用して、エスプレッソのもつオリジナルフレーバーを保ちつつ、エスプレッソのバランスを変化させる。
- たくさんのフルーツフレーバーのあるコーヒーのイエローフルーツとオレンジフルーツのフレーバーを分離させる。
- そして、もう一つのエスプレッソコースを体験しているかのようなドリンクを作成。
エスプレッソ
- エスプレッソを2つに分割する。
- イエローフルーツエクストラクション:抽出から10秒間までのもの。明るいイエローフルーツ 30g
- オレンジフルーツエクストラクション:次の8秒間のもの。オレンジフルーツ 16g
2種類のパッションフルーツジュースを使用。
材料1:みそパッションフルーツジュース 3g
- パッションフルーツジュース:白みそ=1:1の分量で作成。
- 酸味を和らげ、発酵からくる風味を引き上げる。
- こちらをイエローフルーツエクストラクションに加える。
材料2:パッションフルーツハーブティシロップ 15g
- 砂糖、ドライローズ、ラベンダー、エルダーフラワーを同量使用して作成したハーブティシロップとパッションフルーツジュースを合わせたもの。
- アロマと複雑さを引き上げる。
- こちらをオレンジフルーツエクストラクションに加える。
シグネチャービバレッジの工程
- エスプレッソを2つに分割する。
- 材料1とイエローフルーツエクストラクションを混ぜる。
- 材料2とオレンジフルーツエクストラクションを混ぜる。
- 全てを混ぜ合わせ、ブレンダーで5秒間ブレンドする。
→スムースなマウスフィールとソフトな質感を加えるため。
フレーバー
- ハーブのアロマ
- 1口目:パイナップル、イエローピーチ
- 2口目:マンダリン、グレープフルーツ
- クリーミーボディ、ミディアムウェイト、とても長いフィニッシュ
インストラクション
- スプーンで3回かき混ぜてから飲むこと。
- 他のエスプレッソコースを体験しているかのようにイメージすること。
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