2016年のワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC) にて3位に入賞したカナダ代表ベン・プット(Ben Put)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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ベン・プットバリスタは、モノグラムコーヒー(Monogram Coffee)創設者のひとりです。
ワールドバリスタチャンピオンシップには4度出場しており、成績は2014年11位、2015年3位、2016年3位、2017年は4位でした。
プレゼンテーションでは、ナインティプラス社のエチオピア・ネキセ・エアルームを使用し、生産者とバリスタが取ったリスクを例に、規範から外れてリスクテイカーになることで新たな道を開くことの重要性をプレゼンテーションしています。
シグネシャービバレッジでは、グラナディージャジュース、アプリコットコンポート、リンゴ酸を使用し、フルイマージョン・エスプレッソと名付けたドリンクを作成しています。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016, 3位 –
ベン・プット-プレゼン概要
使用コーヒー2:ナインティプラス・エチオピア・ネキセ・エアルーム
ナインティプラス・エチオピア・ネキセ・エアルームの基本情報
- 国:エチオピア
- 地域:シダモ
- 農園:ネキセ
- 農園主:ナインティプラス社
- 管理者:シメオン・アベイ(Semeon Abay)
- プロセス:ナチュラル
- 品種:エアルーム
- 標高:1800m-2000m
農園管理者シメオン・アベイが取ったリスクについて
- 農園管理者シメオン・アベイは、エチオピアシダモ地域のネキセのミルを統括している。
- シメオン・アベイは、ごく少数しかとれない小ロットのコーヒー豆を、品質とそれに見合ったお金が保障されている確立されたプロセスで処理するのではなく、リスクをとって、全く新しい方法でプロセスした。
- 品質が保障されている確立されたナチュラルプロセスでは、乾燥工程でコーヒー豆を1層にすることで、均一な乾燥と発酵を実現できる。
- シメオン・アベイは、コーヒー豆を意図的に複数の層にして乾燥させることで、不均一な温度となり、不均一な発酵を進ませた。
→素晴らしい複雑性を得る結果となる。 - その複数の層で合計35日間のスロードライイングを行う。
→実とコーヒー豆の接触時間が拡張されたことで、濃厚なトロピカルフルーツと甘みをもたらす。
焙煎前にスクリーンサイズで生豆を選別
- シメオン・アベイ方式の不均一な発酵スタイルは、コーヒー豆のバリエーションが豊かになり、焙煎時に不均一な焙煎をもたらすリスクがある。
- ナインティプラス社は、スクリーンサイズで選別し、ベンプットへ配送した。
- スクリーンサイズごとの風味の特徴は以下の通り。
- 全体の50%を占めるスクリーンサイズ13以下のコーヒー豆の特徴:フルーティー。
- 全体の50%を占めるスクリーンサイズ14から16のコーヒー豆の特徴:複雑さがある。
ベン・プットが取った2つのリスク
リスク1:真空シーラーを使用する
- エスプレッソは加圧式の抽出方法である。圧力が加わることで、二酸化炭素(CO2)が形成され、ネガティブな苦みを伴った酸をもたらす。
- 真空シーラーを使用するメリットは、エスプレッソ内の二酸化炭素を抜くことができること。
- ネガティブな酸を取り除ける。
- トロピカルフルーツの甘みが引き上がる。
- エスプレッソの温度がほんの少し下がり、適温になる。
- 真空シーラーを使用するデメリットは、エスプレッソのフレーバープロファイルを少し変更してしまうこと。
- 二酸化炭素の入った水(炭酸が抜けきっている可能性のある)をジャッジに飲んでもらい、二酸化炭素がもたらす苦みの質を知ってもらう。
- エスプレッソコースで真空シーラーを適用する。
リスク2:フルイマージョン・エスプレッソ
- シグネチャービバレッジで細かくメッシュ調整したものに圧力をかけ、高い抽出収率のドリンクを作成する。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016, 3位 –
ベン・プット-プレゼンの流れ
- エスプレッソコース(シグネチャービバレッジ用のエスプレッソを抽出。)
- ミルクビバレッジ(シグネチャービバレッジ用のエスプレッソを抽出。)
- シグネシャービバレッジ
エスプレッソコース
エスプレッソコースのレシピ
- 粉量:20.5 g
- 抽出量:50 g
- エスプレッソ抽出後クレマを評価する時間を設けて、真空シーラーを使用して二酸化炭素を除去。
- 42秒かけて抽出する。
→より濃厚になり、バランスのよいエスプレッソとなる。
エスプレッソコースのフレーバー
- パッションフルーツ
- イチゴ
- チェリー
- カンタロープメロン
- 長くチョコレートのような甘みでフィニッシュ
- ミディアムウェイト
- 溶けたバターのような粘度
- スムース
- シルキー
- ワインをお漏らせるタンニン
ミルクビバレッジ
ミルクビバレッジのレシピ
- 粉量:22 g
- 抽出量:48 g
→ドース量を多くし、抽出量を減らしたショットは、ミルクが高い酸を緩衝するためよりバランスが伴った濃厚なフルーツ感のあるドリンクとなる。 - 35秒かけて抽出する。
- ミルク温度:45度
→様々な温度を試した結果の一番良い温度。
ミルクビバレッジのフレーバー
- バナナパン
- チョコレートクリーム
- チョコレートで覆われたベリー
シグネシャービバレッジ
コンセプト
フルイマージョン・エスプレッソ(全浸漬エスプレッソ)を作成し、高い抽出収率を確保し、熟したフルーツと甘さを強調。
エスプレッソ 98 g
- エスプレッソコースとミルクビバレッジで同時に抽出したもの。
材料1:メッシュ調整したコーヒー粉 60 g
- 断熱仕様のディスペンサーを使用。
- 300〜600ミクロンのメッシュに揃えたコーヒーの粉を使用。
→この粒子サイズは、非常に明確なトロピカルフルーツのフレーバー、甘みをもたらし、高い収率になる。
材料2:カスタムウォーター(お湯) 280g
- 100 ppm のマグネシウム
- 50 ppm のバッファ→高いバッファは酸度のバランスを保つため。
材料3:グラナディージャ ジュース 18 g
- グラナディージャはパッションフルーツの仲間
→複雑さをもたらし、バランスを調整、エスプレッソにあるパッションフルーツを強調。
材料4:アプリコットコンポート 12g
- アプリコットと水を1:1をブレンドし、濾したもの。
→カンタロープメロンの風味とシルキーな口あたりを加える。
材料5:リンゴ酸 3g
- リンゴ酸1gに対し、水100gで作成。
→鮮やかさとフルーツフレーバーを伴った長く続くフィニッシュをもたらす。
シグネチャービバレッジの工程
- 材料1と2をディスペンサーに入れ、15バールで20秒間圧力をかける。
→甘みを引き上げ、バランスが整い、フルーツフレーバーをもたらす。 - 金属メッシュのエアロプレスでこす。
→エスプレッソに似たマウスフィールにするため。 - できたコーヒーを60g(収率26%)エスプレッソに加える。
- 材料3,4,5を加える。
シグネシャービバレッジのフレーバー
- パッションフルーツ
- イチゴ
- カンタロープメロン
- チョコレートと長く続く弾けるようなリンゴ酸のフィニッシュ
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