2018年6月、オランダはアムステルダムにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、14位になった韓国代表のジュヨン(Joo Yeon)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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韓国釜山(プサン)にあるMomos Coffeeにて11年間バリスタ及びバリスタトレーナーとして勤務されています。
2009年から韓国バリスタチャンピオンシップに参加し、7回目の今年ついに優勝しました。
WBCは今回が初挑戦でした。
化学のチカラを応用した難しい内容もありますが、PCモニターで映像を使用するなどビジュアル的にも理解しやすい工夫がなされています。
また多少トラブルがありましたが、常時笑顔で場を和ませていたのが好印象なプレゼンです。
WBC 2018 – ジュヨン-14位プレゼン動画
※ワールドバリスタチャンピオンシップ2018の詳しい動画視聴方法はコチラをご確認ください。
WBC 2018 -ジュヨン-14位プレゼン概要
使用コーヒー2:エチオピア・ゲシャビレッジ・ウォッシュト・ゲイシャ
- 国:エチオピア
- 地域:ベンチ・マジ地方(Bench Maji)
- 村:ゲシャビレッジ・オマ・ブロック
- 品種:ゲイシャ
- 標高:2000m
- プロセス:ウォッシュト
- 一番標高の高いオマ・ブロックで生産されたコーヒー。
- 2000mという標高の高さで育つことで有機酸をより多く生成し、エレガントな酸を生み出す。
- 自生の原生林により、天然の天蓋のあるプランテーションは脂肪分と糖を発達させる。それらがボディと甘みをもたらす。
- 発酵時間20時間のウォッシュトプロセスを経て、レイズドベッドで乾燥させる。
- これらの工程が、クリーンで明確なフレーバーをもたらす。
焙煎について
- ミディアムからライトロースト
- デベロップメントタイム:20%
- 焙煎時間:11分
- 有機酸を発達させることで、ゲイシャのもつすばらしさが際立つ焙煎プロファイル
イントロダクション
- エスプレッソ抽出は常に進化し続けている。
- シングルオリジンの流行や新しいプロセスが生まれるなど様々なイノベーションが起こっている。
- そのおかげでフレーバーを明確にできるようになった。
- しかし、近年ボディがとても弱く、テクスチャーを欠いたエスプレッソとなることが共通の問題となっている。
- ボディとテクスチャーはセンサリーに重要な影響を与えるため、これらが不十分だとバランスを欠いたエスプレッソとなる。
- そこで、フレーバーを明確にしつつ、タクタイルを引き上げる方法を考案した。
エスプレッソのオイルについて
- エスプレッソオイルが直接的にタクタイルの知覚に関わることがわかった。
- エスプレッソ1杯には、たった7.5 mgのオイルが含まれている。
- このことは焙煎豆に含まれるオイルのたった10%程度しか抽出されていないことを意味する。
- それと同時に、焙煎豆からはさらにオイルを引き出せるということを意味する。
フレーバーを損なうことなく、タクタイルを引き上げる方法の発見
- 国立釜慶(プギョン)大学の食品科学科との共同研究により、フレーバーを損なうことなく、タクタイルを引き上げる方法を発見した。
- それが、超臨界二酸化炭素(超臨界炭酸ガス、Supercritical carbon dioxide)を使用する方法である。
超臨界二酸化炭素プロセスについて
- 二酸化炭素を圧力250 bar、気温32℃の環境条件下におく。(二酸化炭素の臨界点を上回る環境条件)
- 臨界点以上の温度かつ圧力下に置かれた二酸化炭素は、気体でも液体でもない状態(超臨界状態)になる。
- その状態の二酸化炭素を超臨界二酸化炭素と呼ぶ。
- 生成した超臨界二酸化炭素を焙煎豆に5分間適用する。
- 超臨界二酸化炭素は、焙煎豆のセルにもオイルにも通り伝わり、行き来することで、よりオイルが溶け出しやすくなり、エスプレッソマシンでもより多くのオイルを抽出できるようになる。
WBC 2018 -ジュヨン-14位プレゼンの流れ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
エスプレッソコース
レシピ
- 粉量: 20 g
- 抽出量: 40 g
- 収率:20%
- マシン温度:91℃
→美しい酸が引き立つ。
ディスクリプタ
- レモンジャム、プラム、チェリー、エチオピアンハニー
- 酸:中
- 甘み:中
- 苦み:中~低
- ウェイト:高~中
- なめらかなテクスチャ
- 溶けたチョコレートのような粘度
- 長く続くフィニッシュ
インストラクション
- 指示があるまで飲まないこと。
→クールダウンすることで、最適なテクスチャーとフレーバーを引き出す。
ミルクビバレッジ
ミルクの加熱冷却
- ミルクにもオイルが含まれている。
- オイルはミルクのボディとテクスチャーに影響している。
- しかしミルクに含まれているオイルは、87%もの水分によって薄められている。
- そこで、ミルクを加熱し水分を蒸発させる。
- ミルクに含まれる水分量を減らし、オイルによるタクタイルの知覚を増加させる。
- 加熱したミルク入りの容器を、液体窒素をいれた容器に入れて冷やす。
- ミルクを加熱冷却した後、水分量は75%となる。
- クリーミーな質感が発達する。
レシピ
- 粉量: 20 g
- 抽出量: 40 g
- 収率:20%
- マシン温度:91℃
- オランダのジャージーミルクを加熱冷却したものを使用。
- 水分量:75%
- 脂肪分:5.0%
- スチーム温度:50度
- ミルクフォームの厚み:7 mm
→スポンジケーキのようなクッション性を感じる質感になる。 - エスプレッソ:ミルク=1:4の比率
→シュガーブラウニーのようなフレーバーをもたらす。
ディスクリプタ
- ストロベリークリーム、クッキー、アーモンドチョコレート
シグネシャービバレッジ
コンセプト
コロイドミルを使用して、混ざり合わない液体を乳化(エマルション、Emulsification)させ、テクスチャーを引き上げたドリンクを作成。
材料1:エスプレッソ 4ショット
レシピ
- 粉量: 20 g
- 抽出量: 40 g
- 収率:20%
- マシン温度:91℃
材料2:エクアドル産カカオオイル 30 g
- カカオオイル自体にフレーバーはない。ボディを強調するために使用。
- 粘度があがり、よりリッチなテクスチャーになる。
材料3: エチオピアンハニー 30 g
- 使用コーヒーを同じ地域から採取されたはちみつ。
- ドリンクのバランスを整え、甘みを引き立たせる。
材料4:卵の黄身 5 g
- 黄身の風味は感じない。
- 分離した液体がコロイドミルにかけて乳化させた後に、再び元の分離した状態に戻らないようにするために使用。
材料5:ジャスミンの花
- 伏せたグラスの中にジャスミンの花を入れておき、ジャスミンのアロマをグラスに取り入れる。
→フローラルをハイライトするため。
シグネチャービバレッジの工程
- 材料5を予め伏せたグラスの中に置いておく。
- 材料1,2,3,4を混ぜる。
- コロイド(油分など)が浮いた状態となっているため、コロイドミルを30秒間使用して乳化 させる。(エマルション)
- 体温の温度にする。
ディスクリプタ
- オイルによる柔らかく、ふわふわとした質感、フローラルなアロマ、
- チョコレート、ハニーの甘み、かすかなシトラス
インストラクション
- 手でグラスを覆って、10回グラスを回すこと。
→体温の温度に近づけるため。
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