2018年6月、オランダはアムステルダムにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、16位になったシンガポール代表のゼン・スーン(Zenn Soon)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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ゼン・スーン バリスタは、予選にてチームの平均スコアが最高得点だったチームストリーム(Team Stream)に所属しておりました。
チームストリームには、6名の代表(スイス、オーストラリア、スウェーデン、シンガポール、ウクライナ、ニカラグア)が在籍していましたが、スイス代表マチュー・タイス バリスタ、オーストラリア代表クレイグ・サイモン バリスタ、スウェーデン代表マット・ウィントン バリスタは予選でトップ15位以内の成績だったため、ワイルドカードは、その次に得点の高いシンガポール代表のゼン・スーン バリスタの手に渡り、セミファイナルへの出場権を獲得しました。
現在はシンガポールにあるカフェ&レストランStrangers’ Reunion(←facebookページです)に勤務されています。
なお、WBCは今回が初挑戦でした。
プレゼンでは、使用コーヒーの風味を格段に向上させたプロセスについて、とても詳細に説明しています。
WBC 2018 – ゼン・スーン-16位プレゼン動画
※ワールドバリスタチャンピオンシップ2018の詳しい動画視聴方法はコチラをご確認ください。
WBC 2018 -ゼン・スーン-16位プレゼン概要
使用コーヒー:コスタリカ・フィンカ・エル・ディアマンテ・カツーラ・カツアイ
- 国:コスタリカ
- 生産者:カルロス・フェルナンデス・モレナ(Carlos Fernandez Morera)
- 地域:ウエスト・バレー
- 農園:エル・ディアマンテ (El Diamante)
- 品種:カツーラ・レッドカツアイ
- 海抜:1300m
- プロセス:アナエロビック・ファーメンテーション
イントロダクション
- WBCに参加することをきっかけに、たくさんのコーヒーを試した。
- その一つに、とても惹きつけられたコーヒーがあった。
- ウォッシュトプロセスのような良い品質、ハニープロセスのようにフルーツの風味、ナチュラルプロセスのように複雑な酸。
- それらに加えて、明確なスパイスの風味、焼きたてのペイストリーのアロマを持つコーヒーだった。
- このコーヒーを選んだのは、単に素晴らしいフレーバーがあったからだけではなく、そのフレーバーが生み出された理由にある。
- 海抜1,300mで品種もブレンドされたもの。このコーヒーが素晴らしい風味を生み出せている理由は、その特別なプロセスにある。
アナエロビック・ファーメンテーションについて
- アナエロビック・ファーメンテーションは、ウォッシュト、ハニー、ナチュラルプロセスのすべてを融合させたようなプロセス。
- 果肉を取り除いたコーヒー豆、水をタンクに入れる。
- 水が発酵をゆっくりと進行させ、発酵のコントロールがしやすくなり、ウォッシュトのようなより良い品質を得られるようになる。
- それと同時に他のコーヒーから採取したより高い糖度を保有するミューシラージをタンクに入れる。
- 追加したミューシラージとの接触時間が増えることにより、より多くの糖の甘みがコーヒー豆内部に浸透される。
- それは良いハニープロセスのコーヒーにある、フルーツのような甘みをもたらす。
- 二酸化炭素をタンクへ流し込み、酸素を排除する。
- そして、解糖作用が起こる。
- 解糖作用によって糖は分解され、乳酸へと変換される。
- 高い濃度の乳酸が、ナチュラルプロセスのような複雑さと酸をもたらす。
- 注入した二酸化炭素はタンクの圧力を上げる。
- それによりコーヒー豆内部へフレーバーが浸透され、ボディが引き上がる。
エル・ディアマンテ農園について
- たくさんの雨、強い風、さび病など、厳しい環境にある。
- カツーラ種とレッドカツアイ種はこのような環境下でも育つことができる。
- 海抜1,300mという低さはコーヒーチェリーの完熟を早め、酸、ボディ、糖の発達が十分とはいえない。
- アナエロビック・ファーメンテーションは、これらの問題をすべて解決し、とてもユニークなコーヒーとなる。
WBC 2018 -ゼン・スーン-16位プレゼンの流れ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
エスプレッソコース
レシピ
- 粉量: 20 g
- 抽出量: 42 g
ディスクリプタ
- 酸:中
- 甘み:中
- 苦み:中~低
- ボディ:中
- ラウンド、スムース
- 1口目:弾けるようなグレープフルーツの酸
- 2口目:プラム、アップル、シナモンとモラセスの長いフィニッシュ
インストラクション
- 5回かき混ぜること。
ミルクビバレッジ
レシピ
- エスプレッソ:ミルク=1:2の比率
- 粉量: 20 g
- 抽出量: 42 g
- ミルク温度:60℃
- ミルクには繊細な甘みがあり、エスプレッソと相性が良い。
ディスクリプタ
- 甘いグレープフルーツ、シナモン、アップル、トーストしたウォールナッツ
- ベルベット、クリーミーなマウスフィール
シグネシャービバレッジ
コンセプト
アナエロビック・ファーメンテーションはこのコーヒーを次の次元に押し上げた。
このプロセスより理解するために、副材料を使用して説明する。
エスプレッソ
- 粉量: 20 g
- 抽出量: 42 g
- プレゼン最初に抽出し、クールダウンさせておく。
→冷やすことで複雑なフレーバーが増す。
材料1: クランベリージュース 50ml
- クランベリー40g、水100mlを使用。
- クランベリーはパルプドチェリーを表現。
- クランベリーをスマッシュして水を加える。
- 8分43秒間浸漬する。
- クランベリーは、繊細でクリーンなフレーバーがあり、ドリンク全体に複雑性をもたらす。
材料2:クランベリーマセレーション 35 g
- クランベリーマセレーションはエクストラミュシラージを表現。
- クランベリー:砂糖:水=1:1:1を混ぜ合わせ、冷やして48時間浸漬させたもの。
- 甘みとラウンドなマウスフィールをもたらす。
材料3:甘酒 5 ml
- 解糖作用を表現。
- 甘酒は、日本のノンアルコールのお米を発酵させたドリンクと紹介。
- 糖とお米を乳酸発酵させ、分解させたもので、それが甘みと食欲をそそるフレーバーとなる。
- ドリンクに複雑性をもたらす。
材料4: 炭酸
- フレーバーとアロマをより強化し、無酸素環境を作り出すために炭酸を使用。
- CO2チャージャーで加える。
- フレーバーと酸を引き上げる。
材料5:氷 5つ
- 希釈して冷やすため、氷を5つ加える。
→フレーバーを広げるため。
シグネチャービバレッジの工程
- CO2チャージャーにエスプレッソと材料5を加える。
- その他の材料を加える。
- CO2をチャージして提供。
ディスクリプタ
- アップル、甘みのあるチェリー、ダークプラム
- シロッピー、ラウンド、スパークリング、シナモンとグレープフルーツのフィニッシュ
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