2017年韓国ソウルにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)にて11位に入賞したイタリア代表、フランチェスコ・マシューロ(Francesco Masciullo) バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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フランチェスコ・マシューロバリスタは、フランチェスコ・サナポ氏が運営しているディッタアルティジアナーレ(Ditta Artigianale)に所属しています。
プレゼンテーションでは、コスタリカ・フィンカ・エルディアマンテ農園のカツーラ種とコロンビア・ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン農園のシドラ種とSL28の3種類の異なるコーヒー豆を使用しています。
地球温暖化がコーヒーのフレーバーに及ぼす問題を言及したうえで、地球温暖化に自然的に順応した例と、技術や知恵によって地球温暖化に適応した例を紹介しています。
また、クリストファー・ヘンドン博士の研究について言及し、全てのコースのコーヒー豆をショックフリーザーで-25度まで冷やして使用しています。
シグネシャービバレッジでは、グレープ、バラ、リゼティー、シンプルシロップ、窒素ガスを使用し、地球温暖化への自然的な順応と技術による適応をイメージしたドリンクを作成しています。
WBC 2017, 11位 – フランチェスコ・マシューロ-プレゼン概要
3種類のコーヒー豆を使用。
使用コーヒー1:コスタリカ・フィンカ・エルディアマンテ・カツーラ
基本情報
- 国:コスタリカ
- 地域:ウエスト・バレー
- 品種:カツーラ
- 標高:1400m
- プロセス:アナエロビック・ファーメンテーション
- ミルクビバレッジで使用。
- 地球温暖化への技術による適応の一例として紹介。
アナエロビック・ファーメンテーション・プロセスについて
- コーヒーチェリーをステンレスのコンテナに入れ、20時間発酵させる。
- 他のプロセスで処理されたコーヒー豆のミューシレージを20%をステンレスのコンテナに入れ、さらに20時間発酵させる。
→明確なシナモンフレーバーをもたらす。
- 地球温暖化がもたらす温度・湿度の変化は発酵に影響しうる。
- しかし、生産者がアナエロビック・ファーメンテーション・プロセスのような新しい方法を考案すれば、地球温暖化にも適応できる。
使用コーヒー2:コロンビア・ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン・シドラ
基本情報
- 国:コロンビア
- 地域: クンディナマルカ県
- 農園:ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン
- プロセス:ハニー・アナエロビック・ファーメンテーション
- 品種:シドラ(Sidra)
- エスプレッソで使用。
- 異なる土地に植えたシドラ種の風味特性を通じて、地球温暖化への自然による順応の一例として紹介。
品種シドラについて
- 元々はエクアドルのもの。
- レッドブルボン種とティピカ種の自然交配種。
- コロンビアのラ・パルマ・イ・エル・トゥカン農園へ植付。
- この品種とこの農園のテロワール(土壌、雨量、気温、気候)が合わさることで、風味特性を形成。
- 異なる品種を異なるテロワールに植えることで、地球温暖化へ順応できる可能性を示唆している。
ハニー・アナエロビック・ファーメンテーションについて
- コーヒーチェリーをステンレスのコンテナに48時間入れて発酵させる。
- 乳酸が増加し、シルキーなマウスフィールとなる。
- 外皮を除去し、ベッドに移動させる。
- メカニカルな乾燥室にて絶対に38度を超えないように管理される。
- このゆっくりとした乾燥プロセスで、フルーティでクリーンになる。
使用コーヒー3:コロンビア・ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン・SL28
基本情報
- エスプレッソで使用したコーヒー豆と同じ農園、異なる品種。
- 国:コロンビア
- 地域: クンディナマルカ県
- 農園:ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン
- プロセス:ウォッシュト
- 品種:SL28
- シグネチャービバレッジで使用。
- 地球温暖化への自然的な順応と技術による適応を組み合わせた例として紹介。
ショックフリーザーについて
- 最近の研究でコーヒー豆を凍らせることで、より均一な粒子を得られることが分かっている。
- 豆を凍らせるには時間がかかるため、ショックフリージングを実験した。
- ショックフリージングは-25度までコーヒー豆のセル構造にダメージを与えることなく急冷できる。
- エスプレッソの甘み、フレーバー、タクタイルを向上させることができる。
- 各コースでは、プレゼンテーション序盤に挽いた粉をショックフリーザーで冷却し、-25度にする。
- エスプレッソマシンの抽出温度設定は93度にすることで、大きな温度差が生まれる。
- 室温のコーヒー豆と比較して、5秒間長く抽出することができる。
- より甘く、より明確なフレーバーをもたらす。
WBC 2017, 11位 – フランチェスコ・マシューロ-プレゼンの流れ
ミルクビバレッジ
- コスタリカ・フィンカ・エル・ディアマンテを使用。
- 地球温暖化への技術による適応の一例。
レシピ
- 粉量: 19 g
- 抽出量: 48 g
→抽出量を増やすことで、フレーバーを開かせ、エル・ディアマンテのアナエロビック・ファーメンテーション・プロセスからもたらされる特有の甘いシナモンフレーバーを引き出す。
ミルク
- たんぱく質 3%
- 脂肪分 5%
→クリーミーな質感となる。
- ミルク温度:55度
→アロマとフレーバーを引き出す。
- 総量:120 ml
→エル・ディアマンテ特有の風味とミルク風味特性を最も感じるバランス。
フレーバー/タクタイル
- シナモン
- ダークチョコレート
- バタリーテクスチャー
エスプレッソコース
- コロンビア・ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン・シドラを使用。
- 地球温暖化への自然による順応の一例。
レシピ
- 粉量: 19 g
- 抽出量: 48 g
- マシン設定温度:93度
- プレゼンテーション序盤に挽いた粉をショックフリーザーで冷却し、-25度にする。
→抽出直前に使用することで、大きな温度差が生まれ、より甘く、より明確なフレーバーをもたらす。
フレーバー
- ホワイトピーチ
- ストロベリー
- ラズベリー
- ココアでフィニッシュ
- 酸味:ミディアムより少し下
- 甘み:ミディアム
- 苦み:ロー
タクタイル
- シルキー
- ミディアムボディ
- とてもクリーンで長いフィニッシュ
シグネシャービバレッジ
コンセプト
地球温暖化への自然による順応と技術による人為的な適応をイメージしたドリンク。
エスプレッソ
- コロンビア・ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン・SL28を使用。
- 粉量: 19g
- 抽出量: 44g
- レッドフルーツ、ベリー、バランスの良い酸がある。
- プレゼンテーション序盤に抽出、ペーパーフィルターでこして、室温にしたもの。
→リンゴ酸、ボディ、テクスチャが向上する。
材料1:サルタニーナ種のグレープソース 18 g
- 自然的な順応を表現。
- トスカーナのテロワールに植付、順応した品種サルタニーナ(Sultanina、サルタナ)
- グレープ50 gと砂糖50 gを真空で24時間圧力を加えたもの。
- プロセスをイメージ。
→レッドフルーツと複雑な甘みをもたらす。
材料2:ローズウォーター 10 g
- バリスタの技術で、人為的な適応を表現。
- 30gのバラの花と60gのシンプルシロップを使用。
- ソーダサイフォンに入れ、窒素ガスで6気圧の圧力をかけて1時間でエキスを抽出したもの。
- バラはベリー系のフルーツと多くの同様の化合物を含んでいる。
→明確なベリーのフレーバーをハイライトする。
材料3:リゼティー(紅茶) 30g
- 1gのリゼティー(トルコチャイに使用される紅茶)と100mlの低いTDSの水でコールドブリューしたもの。
- リゼティーはリンゴ酸がある。
→酸のバランスを整える。
シグネチャービバレッジの工程
- エスプレッソに全ての材料を混ぜる。
- フローサーで完全に混ぜ合わせる。
フレーバー
- ラズベリーキャンディー
- ストロベリー
- 白桃
- レッドフルーツ
- ベリーフレーバーとバランスのとれた酸
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