2018年6月、オランダはアムステルダムにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、5位になったカナダ代表コール・トロ-ド(Cole Torode)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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コール・トロ-ドバリスタご本人にわからないところを質問させて頂いたところ、大変丁寧にご回答いただきました。そこで使用コーヒーの生産国を間違えて記載してしまっていることに気付きましたm(__)m
2種類使用したコーヒー豆の両方ともコロンビアということでした。失礼しました。
また、副材料について分からないところも解消されましたので更新しています。(アーモンドシロップのことを英語ではorgeat (発音記号:ɔːrˈʒɑː,
今回ファイナリストになったコール・トロ-ドバリスタは、共同経営者の一人でありディレクターを務めるRosso Coffee Roastersで働いています。WBCは今回が始めてです。
スペシャルティコーヒーにおける2つのキーファクターは、「信頼」と「ストーリー」であると説明しています。
そして使用するコーヒーの物語を本にして紹介しています。
WBC 2018 – コール・トロード-プレゼン動画
※ワールドバリスタチャンピオンシップ2018の詳しい動画視聴方法はコチラをご確認ください。
WBC 2018 -コール・トロード-プレゼン概要
同じ生産者・生産国・同プロセスで品種違いの2種類のコーヒー豆のブレンドして使用。
使用コーヒー1:コロンビア・ゲイシャ・アナエロビック・ファーメンテーション
- 国:コロンビア
- 生産者:フェリペ・サルディ(Felipe Sardi)
- 地域:クンディナマルカ県(Cundinamarca)
- 農園:ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン(La Palma y El Tucan)
- 品種:ゲイシャ
- プロセス:アナエロビック・ファーメンテーション
- 風味特性:エレガント、複雑な酸、ベルベットのようなマウスフィール
使用コーヒー2:コロンビア・シドラ・アナエロビック・ファーメンテーション
- 生産者:フェリペ・サルディ(Felipe Sardi)
- 地域:クンディナマルカ県(Cundinamarca)
- 農園:ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン(La Palma y El Tucan)
- 国:コロンビア
- 品種:シドラ(レッドブルボンとティピカの交配種)
- プロセス:アナエロビック・ファーメンテーション
- 風味特性:さわやか、濃厚な甘み、クリーミーな質感
上記2種類のコーヒーをブレンドして使用。
ゲイシャとシドラのブレンド
- ゲイシャ種はパナマから、シドラ種はエクアドルから移植されたもの。
- ゲイシャの持つエレガントさと複雑な酸を活かしつつ、シドラの持つ爽やかさと甘み、クリーミーな質感、タクタイルのコンビネーションをエスプレッソで表現する。
- 割合:ドリンクによって異なる。
アナエロビック・ファーメンテーションについて
- アナエロビック・ファーメンテーションは実験的でリスキー。
- 生産者は2012年からアナエロビック・ファーメンテーション技術を取リ組んだため、十分な時間があった。
- ステンレスのタンクにコーヒー豆と水を入れて、全ての酸素を排除した環境で発酵させる。
- およそ2日間に近い時間涼しい温度で管理することで、乳酸が生成される。
- 乳酸が生成されることで、複雑な酸を持つコーヒーができる。
- トロピカルフルーツの風味をもたらし、マウスフィールとテクスチャーを向上させる効果がある。
スペシャルティコーヒーにおける2つのキーファクター
1つ目のキーファクター:信頼
- バリスタにとって、信頼はコーヒーサービスを通して経験する相互作用とともに築かれるもの。
- 信頼は、コーヒーサービスを提供するずっと前から築いていく必要がある。
- コーヒー生産者、焙煎業者、インポーターなどと関係を築き上げることで、コーヒーを提供するその瞬間に価値を提供することができる。
- それは次の要素の重要性を示す。
2つ目のキーファクター:ストーリー
- 今日のプレゼンテーションに至るまでに人々が行ってきたストーリーに焦点を当てて説明する。
- ジャッジの目の前の本には、今日までのストーリーが記されている。
- 物語の始まりは遠く離れた地からスタートする。そこにはコーヒー生産者がいる。
- 彼の名はフェリペ。フェリペはコーヒー生産者だが、実は元々はコモディティコーヒーのトレーダーだった。
- 辛いビジネスを経験したことから、コーヒーに対する世界の見方を変える必要があると気付いた。
- 地元に戻ると情熱のあるコーヒープロフェッショナルを集めて、このミッションを遂行した。
- まず最初に行ったことは、彼らの農園を作り、近隣のコーヒー生産者にも知識や価値を共有し、コミュニティ全体でミッションに向かって前進した。
- 素晴らしいことに、その生産者たちは今ではコモディティコーヒー価格の5倍の金額を受け取っている。
- フェリペはチームを築き、よりサステイナブルなコミュニティを作り、コミュニティ全体で前進することに成功した。
- コール・トロードバリスタとそのチームにも価値が共有され、それを今日のプレゼンで共有できることを誇りに思っている。
- 約10年スペシャルティコーヒー業界にいて気付いたことは、カップの中に作り出せるものはセンサリーエクスペリエンスだけではないということ。
- 情熱のある人々とストーリーをシェアすることで、すべてをつなぎ合わせてより素晴らしい経験へと昇華させることができる。
WBC 2018 -コール・トロード-プレゼンの流れ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
エスプレッソコース
レシピ
- 粉量:ゲイシャ16 g:シドラ6 g
フレーバー
- 1口目:パッションフルーツ、オレンジの花、甘みのあるパイナップル
- 2口目:ココナッツ
→特に2口目のフレーバーはブレンドしたときにしか生まれない。 - ウェイト:ミディアムからハイ
→シドラの影響 - テクスチャー:シルキー
→アナエロビック・ファーメンテーションの影響 - フィニッシュ:ミディアムロング
インストラクション
- 温度を下げるため、指示されてから飲むこと
- 5回かき混ぜること
ミルクビバレッジ
レシピ
- 粉量:ゲイシャ4 g:シドラ18 g
→シドラの甘みにフォーカスしたブレンド - 抽出量: 20 g
- 脂肪分:3.25%
- ミルク量:65 g
- アムステルダムのミルクを使用
凍結濃縮分離(凍結蒸留)して、一定の水分を抜くことで、甘みが濃厚になる。
フレーバー
- ナポリタンアイスクリーム(ストロベリー、チョコレート、バニラの3色アイスクリームのこと)、マジパン
→マジパンの風味はミルクと乳酸の融合からくるもので、アナエロビック・ファーメンテーションの影響
インストラクション
- 5回かき混ぜること
シグネチャービバレッジ
コンセプト
アナエロビック・ファーメンテーションの工程・風味からヒントを得たコーヒードリンク
エスプレッソ 4ショット
- シドラのみを使用。
→生産者フェリペとの信頼関係から、最新の試みであるシドラ種を手に入れることができたため、シェアする目的で使用。 - 粉量:22 g
- 抽出量:55 g
→より透明感を出すために、長めに抽出。 - さらに、透明感を出すために、冷やして、空気にさらして、フィルターする。
- 抽出後のエスプレッソをメタルフィルターでこしてデキャンタに移し、デキャンタを回して空気にさらす。
- 再度メタルフィルターを通して浮遊物を取り除く。
→透明感をもたらす。
材料1:キナの樹皮とシトラスのゼストをアナエロビック発酵させたもの 10 g
- 30gの粗糖、水1カップ、キナの樹皮に含まれるキナ酸 30gとレモン、ライム、オレンジの皮を書く10 gずつを使用し、アナエロビック・ファーメンテーションしたもの。
- 2日前に作成し、冷蔵庫で5℃で保管。
材料2:アーモンドシロップ 10 g
- 粗糖300 gとアーモンドミルク200 gを加熱して溶かしたシンプルシロップ。
- アーモンドミルクはミルクコースで感じたもの。ミルクに含まれるラクトースとアナエロビック・ファーメンテーションの乳酸による影響。
材料3:パロサントのエッセンシャルオイル
- パロサント(Palo Santo)はコロンビアの香木。このコーヒーのストーリーが始まった地のもの。
- 中米産のもので、ドライアイスにそのオイルを入れて、アロマを加える。
シグネチャービバレッジの工程
- エスプレッソをエアレート、フィルターする。
- 材料1,2を入れて混ぜる。
- 材料3をドライアイスへ入れてアロマを発生させる。
フレーバー
- ジューシーなマンダリンオレンジ、ミルクチョコレート、パイナップル、ローズ、ジャスミンのような複雑なフローラル
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