2018年6月、オランダはアムステルダムにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、3位になったスイス代表マチュー・タイス(Mathieu Theis)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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スイスのチューリッヒにあるカフェMAME(←facebookページです。)を運営しているマチュー・タイスバリスタは、WBCは2度目の挑戦です。前回の成績はWBC2016では50位でした。
ジャッジの名前を一人ひとり呼び、テーブルへ着く前にこれからするプレゼンテーションの概要を説明しています。ゆっくりはっきりと発言し、プレゼン中盤でも再度一人ひとりの名前を呼んだりと、ホスピタリティ溢れるおもてなしのようなプレゼンです。
また、ミルクの凍結濃縮分離、スゥヴィー、リバース・スフェリフィケーション(Reverse Spherification)などあらゆる手法を用いて、ユニークな方法でコーヒードリンクを作成しています。
WBC2018のファイナルラウンドでは結果的に3位となりましたが、予選とセミファイナルラウンドともに1位でした。それだけ惹きつけられる魅力的なプレゼンです。
WBC 2018 – マチュー・タイス-3位プレゼン動画
※ワールドバリスタチャンピオンシップ2018の詳しい動画視聴方法はコチラをご確認ください。
WBC 2018 -マチュー・タイス-3位プレゼン概要
使用コーヒー:コスタリカ・カトゥーラ、レッドカツアイ・ナチュラル・アナエロビック・ファーメンテーション
- 国:コスタリカ
- 地域:タラス
- 農園:確認中
- 品種:カトゥーラ、レッドカツアイ
- 標高:1800m
- プロセス:ナチュラル・アナエロビック・ファーメンテーション
ナチュラル・アナエロビック・ファーメンテーションについて
- 果肉、ミューシレージ、種子をタンクの中で密閉されて20時間発酵させる。
- 酸素の欠いた環境は、独特な発酵を進ませて、シナモンのような新しい風味が生まれる。
ドライングプロセスについて
- 静置乾燥室にて6日間かけて40度で乾燥させる。
- 安定してオイルを豆に保存することができる。
焙煎について
- ウォッシュトとナチュラルの間の温度上昇カーブで焙煎。
- ウォッシュトのように始まり、ナチュラルのように終わる曲線。
- デペロップメントタイム:1分27秒
WBC 2018 -マチュー・タイス-3位プレゼンの流れ
- イントロダクション
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
イントロダクション
- テーブルへ案内する前にプレゼンの導入を行う。
- すばらしいコーヒーを淹れるためには、適切な品種、プロセス、焙煎、レシピ、それぞれの段階がとても大切。
- しかし、もっと大切なものは適切な感情。適切な感情を持つことで、素晴らしいコーヒーが並外れたコーヒー体験へと昇華する。
- 私がこのことを知っているのは、カフェで毎日お客様に、一口ごとに感じる風味を説明する練習をしているから。
- エスプレッソに意識を向けてもらい(マインドフルネス)、リッチでクリーミーなミルクドリンクでとても心地よい気分を味わってもらい(コンフォート)、最後に、今までに経験したことのないようなシグネチャードリンクであっと驚いてもらう(サプライズ)。
- これがいつもカフェで行っていること。
- 今日のプレゼンではこの3つを体験してもらう。
- マインドフルネス:エスプレッソコース
- コンフォート:ミルクコース
- サプライズ:シグネチャービバレッジ
- 正しい感情になるためには、信頼し合うことが大切。
- だからまずはテーブルに着く前にお互いを知る機会を作った。
- (テーブルに置いてあるブックレットにはジャッジ一人ひとりの名前と似顔絵が描かれている。)
エスプレッソコース- マインドフルネス
エスプレッソを味わうその瞬間事に意識をむけられるようにガイドする。
レシピ
- 粉量:19 g
- 抽出量:41 g
- 抽出時間:20 秒
フレーバー
- シナモンのアロマ、オレンジ
- 1口目:シナモン、オレンジ
- 2口目:シナモン、チェリー
- ミディアムボディ、スムース・ラウンドマウスフィール、モラセスクッキーを思わせるようなモラセスとシナモンのロングフィニッシュ
インストラクション
- 5回かき混ぜること。
- アロマ、1口目、2口目と感じる風味をガイドしていくので従うこと。
ミルクビバレッジ- コンフォート
このミルクとコーヒーは、祖母が寒い冬の日にシナモン入りのホットミルクを作ってくれた子供時代のことを思い出させてくれる。
リッチでクリーミーなマウスフィールが嫌なことも消し去ってくれる。
コンフォートを実現するために、ミルクもデザインした。
レシピ
- 粉量:19 g
- 抽出量: 40 g
- 抽出時間:20秒
- ミルク量:80 ml
- ミルク温度:50度
→シナモンとキャラメルの風味をハイライトするため
ミルクの凍結濃縮分離とスゥヴィーを実施
- 凍結濃縮分離:ミルクを20時間凍結し、4時間かけて解凍。15%の水分を蒸留して取り除く。
→クリーミーでリッチなマウスフィールになる。 - 使用のミルクはブリックス値12%のところ、凍結濃縮分離させることで19%まで増加する。
- さらにミルクを1時間80℃でスゥヴィー(真空調理)することで、メイラード反応とカラメル化が進行する。
→キャラメルの風味をもたらす。
フレーバー
- シナモン、キャラメル、バター、シナモンロール
- リッチ・クリーミーマウスフィール
シグネシャービバレッジ– サプライズ
コンセプト
サプライズ。ビジュアル的にも風味的にも驚きのあるコーヒードリンクを作成。
ナチュラル・アナエロビック・ファーメンテーションが作り出したシナモンのような新しい風味を作り出したように、シグネチャーベバレッジでは、新しい風味を作り出す。
エスプレッソ
材料1:リンゴ酢 1.5 ml
→リンゴ酸と酢酸によってオレンジやチェリーがピーチのようなストーンフルーツの風味に変換される。
材料2:砂糖 5 g
→酸とバランスをとるため。
材料3:窒素
窒素を充填する。
→1口目にクリーミーな質感を感じるようになる。
材料4: エスプレッソドロップ
- エスプレッソ 4ショット
- バニラビーンズ 2 g
- 乳酸カルシウム 1 g
- エスプレッソに乳酸カルシウムを1g加え、24時間凍らせる。
- その後バニラビーンズを2 g加える。
→バニラとシナモンの風味が合わさることで、コーラの風味が生まれる。 - そして、アルギン酸ナトリウム水溶液に7分つけることでエスプレッソドロップとなる。(リバース・スフェリフィケーション、Reverse Spherification)
- アナエロビック・ファーメンテーションのように、エスプレッソドロップをステンレス容器にいれて二酸化炭素を注入して2時間置く。
シグネチャービバレッジの工程
- エスプレッソ4ショットと材料1,2を合わせる。
- 窒素充填機で材料3を注入する。
- 材料4の入ったグラスに注ぐ。
- 周辺環境温度で提供。
フレーバー
- 1口目:クリーミーマウスフィール、シナモン、オレンジ、ピーチのアフターテイスト
- 2口目:シナモン、コーラ、バニラ、発砲性のある弾けるようなマウスフィール
インストラクション
- 飲むときは、1口目が届くまでグラスを傾けること。
補足:Reverse Spherification(リバース・スフェリフィケーション)について
リバース・スフェリフィケーション(Reverse Spherification)は、マチュー・タイスバリスタがエスプレッソドロップを作った原理のことです。
ピッタリの日本語がまだないようで、「球体化」とか「球状化」と一部では紹介されています。
リバース・スフェリフィケーション(Reverse Spherification)は、人口イクラを作成する際に使われたり、今では1つの調理方法として確立しています。
リバース・スフェリフィケーション(Reverse Spherification)の動画
英語のサイトだとYoutubeでその詳しい作り方が見れます。
食べられるラッシー(リバース・スフェリフィケーション(Reverse Spherification))
日本語のサイトだと、こちらが詳しく書かれていました。
リバース・スフェリフィケーション(Reverse Spherification)を応用して、食べられるラッシーを作っています。
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