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ボストンにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)2019での日本代表 山本知子バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
バリスタチャンピオンシップで良い成績を残したバリスタは往々にして忙しいものです。そして、そんなバリスタのコーヒーが実際に飲めるカフェやコーヒー豆屋は実のところかなり稀です。そんな稀なスペシャルティコーヒー豆屋&コーヒーバーがウニール(Unir)です。
山本知子バリスタは、ジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC)でファイナリストになり続けているウニールのヘッドバリスタであり全店統括マネージャーです。ウニールは京都を中心に大阪と東京にも店舗展開されています。ウニールほどの規模で責任ある立場なら、普通であればバリスタ業は後回しになってもおかしくありません。しかし山本知子バリスタは実際に店舗に立ってコーヒーを提供し続けています。本当にバリスタとして働かれている日本のトップバリスタです。WBC2019のインタビューでは「ご自身について5年後はどのようになっていると思いますか?」という質問に対し、「5年後も変わらずショップでコーヒーを淹れ続けているでしょう。」と回答しています。
Where do you see yourself in five years?:
5 years from now, I think I will be brewing coffee in my shop, surrounded by delicious coffees.
引用:https://www.worldcoffeeevents.org/competitors/japan/
JBC常連の山本知子バリスタですが、WBCは今回が初めての出場となります。結果32位となり惜しくもセミファイナルに残ることはできませんでしたが、プレゼン自体とても魅力的な内容で笑顔とパッション溢れるものでした。
プレゼンでは美味しいエスプレッソを抽出するための2つのメソッドを紹介しています。そしてバリスタとしての役割について言及し、それを証明するように多角的な視点から使用コーヒーの魅力を伝えています。
WBC2019 予選 山本知子-プレゼン概要
使用コーヒー:コスタリカ・ドン・アントニオ・ゲイシャ
- 国:コスタリカ
- 地域:タラス
- 農園:ドン・アントニオ
- プロセス:ブラックハニー
- 品種:ゲイシャ
- エイジング:8日目
プレゼンの要旨
いかにして美味しいエスプレッソを作り出すか、2つのメソッドを紹介。
1つ目:焙煎の異なる豆をブレンドして使用。
2つ目:EKグラインダーに静電気除去装置を装着。
豆を挽くことでプラスに帯電したコーヒー粉を静電気除去装置によってマイナスの電子を流すことで静電気の偏りを無効化する。サラッとしたコーヒー粉はストレスの低い抽出が可能となり、よりスムースで苦みの少ないエスプレッソとなる。また、強い抽出を行った場合でもクリーンなフィニッシュになる。
コーヒー生産者の努力を伝えることは変わらないミッションではあるが、今回の15分間のプレゼンではバリスタとして行ったアプローチを通して、多角的な視点から使用コーヒーの魅力を伝える。
バリスタの役割
バリスタとして働き始めた頃は、バリスタの役割はすばらしいコーヒーとそのコーヒー生産者の努力を伝えることだと考えていた。もちろんそれは今もなお重要なこと。
その一方、現在では世界中ですばらしいコーヒーが生産されるようになり、多くの生産者が高品質なコーヒーに見合う報酬を受け取れるようになっている。
バリスタとして次にすべきことは使用するコーヒーが活きる焙煎、抽出、レシピを通して、そのコーヒーにとって何が大切なのかを説明すること。そのコーヒーの品質にはなぜ高い価値があるのかを説明すること。
WBC2019 予選 山本知子-プレゼンの流れ
- エスプレッソ
- シグニチャービバレッジ
- ミルクビバレッジ
エスプレッソ
- 粉量:21 g
デベロップメントタイムの短い豆:20 g
デベロップメントタイムの長い豆:1 g
デベロップメントタイムの短い豆は素晴らしい酸を引き出し、デベロップメントタイムの長い豆は重厚な甘みをもたらす。 - 抽出量:41 g
フレーバー
- 1口目:オレンジ、甘みを伴った酸味
- 2口目:ダークチェリー、カカオ
- ミディアム、スムースボディ、美しいクリーンなフィニッシュ
インストラクション
- 5回混ぜること
シグネチャービバレッジ
コンセプト
シグニチャービバレッジで五感の他に重要な2つのこと
- 天然成分を使用すること
- フルーツを使用しないこと
フルーツというすでに美味しい素材に頼らないシグニチャービバレッジを作成することで、使用コーヒーの価値に見合う高い品質を説明する。
ウォーターケフィアを全ての副材料に使用。ウォーターケフィアはほぼ水と砂糖でできたもの。
ウォーターケフィアは、1:1:30=ウォーターケフィアグレイン:砂糖:軟水の割合で配合し、26℃で40時間発酵させたもの。
ドン・アントニオのブラックハニープロセスは、乾燥工程で意図的に発酵させる。ウォーターケフィアの発酵とのシナジーが、ドン・アントニオの美しさを引き出す。
エスプレッソ 4ショット
- 粉量:21 g
エスプレッソと同じ配合
デベロップメントタイムの短い豆:20 g
デベロップメントタイムの長い豆:1 g - 抽出量:41 g
材料1:コーヒーインフュージョン 80 g
- 1:1:4=ドン・アントニオコーヒー:ミルク:ウォーターケフィアで配合し、遠心分離機を通したもの。このプロセスはカクテルの技術でミルクウォッシングと呼ばれ、ミルクのテクスチャーを液体に移すことができる。
→フルーツを使わずに華やかなフレーバーをもたらす。
材料2:イタリアンハニーシロップ 20 g
- シチリア島のはちみつを使用。クリーンな甘みとドン・アントニオコーヒーに似た力強い酸がある。
- 1:2=ケフィアウォーター:はちみつで配合
→甘みのバランスをとる
シグネチャービバレッジの工程
- 全材料を混ぜ合わせる。
- 窒素ガスを注入、2分間クールダウンさせる
- 冷やしたグラスに注ぐ
フレーバー
- 1口目の前に美しいアロマを感じることができる
- ジューシーななし、ライチ、レッドプレープ
- スムースボディ
- スムースでシロップのようなマウスフィール
ミルクビバレッジ
エスプレッソ
- 粉量:22 g
デベロップメントタイムの短い豆:20 g
デベロップメントタイムの長い豆:2 g
デベロップメントタイムの長い豆を増やした強力なエスプレッソを抽出。EKグラインダーに設置した静電気除去装置により、それでもクリーンなフィニッシュになる。 - 抽出量:41 g
ミルク
- 使用量:120 g(凍結蒸留にて65%)
- 上記レシピの強力なエスプレッソと通常のミルクを合わせるとバランスを欠くため、凍結濃縮分離(凍結蒸留)したミルクを使用。
- ミルクを凍らせて溶かすことで、濃厚なミルクが抽出させる。重厚な甘みが強力なエスプレッソとマッチする。
ミルクビバレッジはコーヒー好きではない人にとっても関わりを持ちやすく、スペシャルティコーヒーへの入り口のようなもの。
ミルクウォッシングについて
今回の山本知子バリスタのシグニチャービバレッジででてきたカクテルのテクニック「ミルクウォッシング」について、イメージしやすい素晴らしい動画があったのでシェアします。
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