アイルランドのダブリンにて開催された2016年ワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC) にて2位に入賞した日本代表岩瀬 由和バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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岩瀬 由和バリスタは、レックコーヒー(REC COFFEE)のオーナーです。
プレゼンテーションでは、ナインティプラス社のパナマ・ゲシャエステートとエチオピア・マゴコロエステートを使用し、ブレンドではなくコーヒーを緻密な考えの下で織り交ぜることで、一つのオリジンでは存在しないフレーバーをもたらすインターウィービングコーヒーという考え方を考案し、プレゼンテーションを行っています。
シグネシャービバレッジでは、2つのコーヒーの発酵プロセスからヒントを得たドリンクを作成しています。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016, 2位 –
岩瀬 由和-プレゼン概要
2種類のコーヒー豆を使用。
使用コーヒー1:ナインティプラス・パナマ・ゲシャエステート
ナインティプラス・パナマ・ゲシャエステートの基本情報
- 国:パナマ
- 地域:ボルカン(Volcan)
- 農園:ゲシャエステート(Gesha Estates)
- プロセス:コールド・ファーメンテーション(Cold Fermentation)
- 品種:ゲイシャ
- 農園主:ナインティプラス社
- 標高:1650 m
- 規模:182ha
- 収穫:2016年1月13日
- エイジング:6日目
使用コーヒー2:ナインティプラス・エチオピア・マゴコロエステート
ナインティプラス・エチオピア・マゴコロエステートの基本情報
- 国:エチオピア
- 地域:シャキソ(Shakisso)
- 農園:マゴコロエステート(Magokoro Estates)
- プロセス:ナチュラル・メルティッド・ファーメンテーション(Melted Fermentation)
- 品種:シングルオリジンのエアルーム(名付けられていない)
- 農園主:ナインティプラス社
- 標高:1850 m
- 規模:180ha
- 収穫:2015年11月30日
- エイジング:13日目
究極のコーヒー「インターウィービングコーヒー(Interweaving Coffee)」
- バリスタはコーヒーをよく理解するために農園に訪れ、コーヒー作りに参加するようになった。
- コーヒーのポテンシャルを最大限引き出すために収穫、焙煎、抽出までを行う。
- しかし、シングルオリジンでは見つけることができないフレーバーを創造するという次のレベルがある。
- これは、二つのシングルオリジンをミックスすることで可能となる。
- 二つのコーヒーを一緒にすることで、より高いレベルのシナジーを生み出し、存在しなかったフレーバーを作り出すことができる。
- これは欠点を隠すためにするのではないので、「ブレンド」とは呼ばない。
- 緻密な考えの下、パナマ・ゲシャエステートとエチオピア・マゴコロエステートの2つのコーヒーを織り交ぜて素晴らしいバランスを作り出すことであるため、「インターウィービングコーヒー(Interweaving Coffee)」と呼んでいる。
インターウィービングコーヒーに至った3つの理由
- 1つ目の理由は、エチオピア・マゴコロエステートのコーヒーと出会ったこと。
1年前パナマを訪れたとき、パナマ・ゲシャエステートの素晴らしい甘みとフレーバーを知った。
しかし、タクタイルが弱く、新しい抽出手法やプロセスを試したが、バランスの良いタクタイルを引き出すことができなかった。
パナマ・ゲシャエステートには、柱となるタクタイルが必要だった。
その後、エチオピア・マゴコロエステートのコーヒーと出会い、ふたつを織り交ぜることで、ベストバランスを導くことができた。 - 2つ目の理由は、コーヒー生産者の哲学に影響されたため。
通常エアルームと呼ばれるエチオピアの品種は、それは複数の小さな農園から複数の品種が混ざったもののことで、どこ品種、どのオリジンかと決定することが極めて難しい。
しかし、ナインティプラスのエチオピア・マゴコロエステートは、原生林と共存している単一農園である。
パナマ・ゲシャエステートにも訪れたが、どちらも同じ哲学の下、自然とともに共生し、収穫、プロセスが行われているという共通点があった。 - 3つ目の理由は、コーヒーの歴史。
エチオピアは、全てのコーヒーのオリジンである。
人々を賑わすパナマのコーヒーも元のオリジンはエチオピアである。
グラインドしてからコーヒー粉をミックス
- EK43とK30グラインダーを使用し、オリジンごとに別々にグラインドする。
- 豆のスクリーンサイズと密度は、オリジン、品種、焙煎によって異なるため、二つのオリジンのコーヒー豆を一緒にしてから挽くと、どちらかのコーヒー豆が多くなり、完全に調整されないため。
農園にてピッカーを教育
- 完熟したコーヒーを摘み取るために、一番効果を発揮する教育方法は、ピッカーにコーヒーを一杯作ってもらうこと。
- 農園を訪れたとき、毎朝収穫の前にピッカーとコーヒーを淹れた。
- そのときに、完熟したコーヒーチェリーを摘み取ることがどれだけコーヒーの品質に影響するか話し合って過ごした。
- カップにした時のコーヒーの品質は、バリスタとピッカーを教育し、そしてそれは、消費者の視点で考えるということ。
- それが最も大事なこと。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016, 2位 –
岩瀬 由和-プレゼンの流れ
- シグニチャービバレッジ用のエスプレッソを抽出
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネシャービバレッジ
エスプレッソコース
レシピ
- 粉量:20g
- エチオピア・マゴコロエステート:12g (60%)
→ボディと酸を高める。 - パナマ・ゲシャエステート:8g(40%)
→豊富な甘みとゲイシャのフレーバーをもたらす。
- エチオピア・マゴコロエステート:12g (60%)
- 抽出量:42g
- 抽出時間:20秒
フレーバー/タクタイル
- マンゴー
- マンダリンオレンジ
- パッションフルーツ
- 甘み:ハイ
- 酸:ミディアム
- 苦み:ローからミディアム
- ウェイト:ミディアム
- シロッピーマウスフィール
- クリーンフィニッシュ
ミルクビバレッジ
レシピ
- 粉量:21 g
- エチオピア・マゴコロエステート:7g (35%)
→ボディと酸を高める。 - パナマ・ゲシャエステート:14g(65%)
→豊富な甘みとゲイシャのフレーバーをもたらす。
- エチオピア・マゴコロエステート:7g (35%)
- 抽出量:40g
- 抽出時間:20秒
- ミルク量:100g/カップ
ミルク飲料では甘みが重要
- 酸を伴ったフルーティーな甘さは、品種やプロセスからくるもの。
- アフターテイストの糖の甘さは、完熟したコーヒーチェリーからくるもの。
フレーバー
- バニラ
- バナナ
- メロン
シグネシャービバレッジ
コンセプト
パナマ・ゲシャエステートのコールドファーメンテーションとエチオピア・マゴコロエステートのメルティッドファーメンテーションのふたつの発酵プロセスからヒントを得たもの。
エスプレッソ
- プレゼンテーション最初に抽出し、クールダウンさせる。
材料1:リンゴとゲイシャのコーヒーチェリーを漬け込んだもの 30g
- パナマ・ゲシャエステートのコールドファーメンテーションは、摘み取ったチェリーを長い時間をかけて、低い温度で発酵させる。
- この発酵プロセスにより、ゲイシャの明確なフローラルの風味がもたらされる。
- コーヒーチェリーは同じパナマの農園のものを使用。
→フルーティな風味を引き上げる。
材料2:パッションフルーツのシロップ 10g
- パッションフルーツに砂糖を加えて加熱して減水させたシロップ
- エチオピア・マゴコロエステートのコーヒーと相性が良い。
- エチオピア・マゴコロエステートのメルティッドファーメンテーションは、摘み取ったチェリーを短い期間高い温度で発酵させる。
- エチオピア・マゴコロエステートの高い酸とボディを引き上げ、より強く、深くなる。
シグネチャービバレッジの工程
エスプレッソを抽出し、クールダウンさせる。
材料1,2を加える。
グラスにアイスボールを入れ、注ぐ。
→アイスでクールダウンさせることで、晴れやかなフレーバーをもたらす。
フレーバー
- マンダリン
- 桃
- カカオでフィニッシュ
まとめ
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2016にて2位に入賞した日本代表岩瀬 由和バリスタは、ナインティプラス社のパナマ・ゲシャエステートとエチオピア・マゴコロエステートを使用しました。
2つのコーヒー豆をミックスして使用しましたが、欠点を隠すための「ブレンド」と区別される、「インターウェービングコーヒー」という考えを考案しました。
「インターウェービングコーヒー」は、2種類のコーヒーを緻密な考えの下で織り交ぜて使用することで、ひとつのオリジンのコーヒーでは存在しえない新たなフレーバーをもたらすものです。
また、コーヒー豆の大きさや密度の違いによる不均一なミックス比率を避けるため、グラインドしてから2種類のコーヒーをミックスしています。
シグネチャービバレッジでは、リンゴ、コーヒーチェリー、パッションフルーツ、砂糖を使用し、ナインティプラス社独自の新しい発酵プロセスからアイデアを得たドリンクを作成しています。
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