ジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC) 2017で優勝したフリーランスバリスタの石谷 貴之バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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スペシャルティコーヒーを提供するカフェが実際に抱える実務的な問題点を取り上げ、大会だからこそできる単なるパフォーマンスに終わることなく、実務的に応用可能な解決策を提示しています。
品質のよいコーヒーは焙煎を浅くすると風味特性が明確になりますが、それをエスプレッソとして抽出すると酸が強くなり、バランスを欠き、酸っぱく感じてしまうという問題を取り上げています。
そのため、実際のお店では品質のよいコーヒーでも焙煎を少し深くして提供することが多いという実務的な問題点を指摘しています。
そして、どのようにすれば風味特性を最も感じるポイントで焙煎された、品質のよいコーヒーをエスプレッソとして抽出できるのかについて、実際のカフェでも応用可能なオペレーションをプレゼンテーションしています。
ジャパンバリスタチャンピオンシップ 2017, 優勝 –
石谷 貴之–プレゼン動画
残念ながら動画が削除されておりました。
また確認できたらご紹介します。
ジャパンバリスタチャンピオンシップ 2017, 優勝 –
石谷 貴之–プレゼン概要
使用コーヒー:エチオピア・ゲシャ・ビレッジ・オマブロック
エチオピア・ゲシャ・ビレッジ・オマブロックの基本情報
- 国:エチオピア
- 農園:ゲシャ・ビレッジ・オマブロック
- プロセス:ナチュラル
- 品種:ゲシャ1931
- 標高:2000m
- 使用ロット:2016年11月27,29日、12月1日収穫、翌日生産処理に入った。
- 乾燥:アフリカンベッドで22日間、12月の降雨量が最も少なく、乾燥時期として最適
- 焙煎:デベロップメントタイムを20%に設定し甘さを発達、コーヒーに厚みを出す。
- エイジング:13日
- 収穫時期から管理までバリスタに情報が伝えられるほどトレースが取れている点がゲシャ・ビレッジの素晴らしい点
- 香港のロースター カッピングルームを介してこのコーヒーと出会った。
ゲシャ・ビレッジについて
- ゲシャ・ビレッジは、ゲイシャ種の生まれ故郷であり、未開拓な森林に囲まれ、8つのブロックに分かれている。
- その一つのオマブロックは特に原生林に囲まれており、コーヒーノキはしっかりと土壌に根付いている。
- 素晴らしい風味特性を持つためにはコーヒーがその土地に根付いていることが重要である。
オマブロックについて
- オマブロックはゲシャ・ビレッジの中でも標高の高いエリアで、大きな寒暖差と霧の影響でチェリーがゆっくりと成熟する。
- 強い土壌と高い標高からボリュームのある酸が生まれる。
- ナチュラルプロセスでレッドグレープやストロベリーの風味をもたらしている。
問題点
風味特性を最も感じるポイントで浅く焙煎された、品質のよいコーヒーをエスプレッソとして抽出するとバランスを欠き、酸っぱくなってしまう。
解決策
エスプレッソの強い酸を「包み込む」。
具体的な方法
- トレイに氷水を準備する。
- スパウトを約10秒氷水につける。
- その後、エスプレッソを抽出する。
※「スパウト」はポルタフィルターの下面にあるエスプレッソの注ぎ口です。
調査方法
どの段階で強い酸が出ているかを調べるために、エスプレッソを3分割する。
- 1フェーズ:最初から10秒までの液体
- 2フェーズ:10秒~20秒
- 3フェーズ:20秒以降
- その結果、1フェーズから刺々しい酸を感じた。
- スパウトを冷やすと1フェーズ目の温度が下がり、その温度低下に伴いコーヒーの油分にとろみが出て、酸の刺々しさを抑制させることができる。
- フライパンの油と同様、熱すると油の粘度が下がりサラサラになり、冷たくなると粘度が上がり、とろみが出る。
ジャパンバリスタチャンピオンシップ 2017, 優勝 –
石谷 貴之-プレゼンの流れ
- シグネチャービバレッジ用のエスプレッソを抽出し、冷やす。
- エスプレッソ
- ミルクビバレッジ
- シグニチャービバレッジ
エスプレッソ
- 粉量:21g
- 抽出量:42g
- フレーバー:レッドグレープ、アプリコット
- アフター:ストロベリージャム
- タクタイル:ミディアム、スムース、マイルド
- スイートフィニッシュ
- スパウトを冷却してからの抽出により、ストロベリージャムのようになり、ボディもミディアムに上がる。
ミルクビバレッジ
- ミルク量:80g
- ミルクと合わさることで、エスプレッソで感じたフレーバーが次のように変化する。
- マンゴー(エスプレッソコースのアプリコットから変化)
- ピーチ(エスプレッソコースのレッドグレープから変化)
- ヘーゼルナッツ(ヘーゼルナッツはエイジング13日にすることで出てくる風味。)
シグネチャービバレッジ
コンセプト
エスプレッソを分けずに材料を混ぜるとそれぞれの特徴を引き出せず、ドリンクのスケールが小さくなり物足りなさを感じるため、エスプレッソを3分割し、1~3フェーズ目の3種類のコーヒーにそれぞれに応じたブドウの風味を加える。
材料1:1フェーズ目とバルサミコ酢
- 1フェーズ目のエスプレッソを20gとグレープを濃縮して作るバルサミコ酢を3g使用。
- 1フェーズは濃縮された酸が特徴であり、バルサミコ酢で軸となる酸のボリュームを引き上げる。
材料2:2フェーズ目とスパイス入りのブドウシロップ
- 2フェーズ目のエスプレッソを34gとスパイス入りのブドウシロップを15g使用。
- 2フェーズは甘さが特徴であり、スパイス入りのブドウシロップで甘さと複雑さを加える。
- ブドウシロップは、ピオーネ200gにキビ砂糖100g加えて4日間寝かせたもの。
- スパイスは、シナモン、クローブ、カルダモンを0.5gずつ加え、36時間漬け込んだもの。
材料3:3フェーズ目とピオーネのブドウ果汁
- 3フェーズ目のエスプレッソを30gとピオーネのブドウ果汁を15g使用。
- 水分が多く、エスプレッソの濃度を調整する役割をもっている。
材料4:ローズとレモンマートルで作った氷 15g
- 軟水200gにローズとレモンマートルを2gずつ加えて3時間水出しで抽出。
- フローラルな風味を引き上げるために使用。
材料5:フリーズドライにしたブドウ
シグネチャービバレッジの工程
- 材料1,2,3,4をブレンダーで5秒間混ぜる。
- やわらかな口当たりが作られ、より風味を感じやすくなる。
- 最後に材料5を擦りおろし、香りを引き出す。
フレーバー
- レッドグレープ
- レモンティー
アフターテイスト
- チャイ
- キャラメル
ワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC) 2018
「何も置かないでも伝わるプレゼンテーション」を目標とし、究極的には「コーヒーと言葉だけ」でプレゼンテーションをしたいと優勝インタビューでお話しされていました。そのシンプルかつ本質的な思考が、プレゼンテーションに色濃く反映されていました。
石谷 貴之バリスタは、来年のオランダ アムステルダムにて開催予定のワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC) 2018の日本代表として競技に参加します。
JBC12回目の挑戦にして、ついに優勝しました。
JBCは毎年1回しか開催されませんので、約12年間同じ挑戦をし続けたことになります。
あきらめずにやり続ければいつか前に進めると身をもって証明してくれた石谷 貴之バリスタを、ぜひ応援しましょう。
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