2018年6月、オランダはアムステルダムにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、10位になったマレーシア代表のキース・クイ(Keith Koay)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
スポンサーリンク
キース・クイ バリスタは、マレーシアの首都クアラルンプールに隣接しているプタリン・ジャヤでOne Half Coffee(←facebookページ)というカフェを経営しています。
WBCは2度目の挑戦で、前回のWBC 2016は16位でした。
今回のプレゼンでは、生産者、ロースター、バリスタがスペシャルティコーヒー業界の持続可能性に貢献するために担っている個々の役割について言及し、バリスタとしての役割をステージ上で表現しています。
シグネチャードリンクの材料(2)とそのレシピ、またエスプレッソ抽出の新しいメソッドについて丁寧にご教示くださいました。
追記しています。
WBC 2018 – キース・クイ-10位プレゼン動画
※ワールドバリスタチャンピオンシップ2018の詳しい動画視聴方法はコチラをご確認ください。
WBC 2018 -キース・クイ-10位プレゼン概要
使用コーヒー:パナマ・フィンカ・ヌグオ・コルブレ・ゲイシャ
- 国:パナマ
- 地域:チリキ県フルトゥンゴ
- 農園:フィンカ・ヌグオ・コルブレ(Finca Nuguo, Colubre)
- 品種:グリーンティップ・ゲイシャ
- 海抜:1930m
- 生産者:ホセ・マニュエル・ガヤルド(José Manuel Gallardo)
- プロセス:ナチュラル・アナエロビック・ファーメンテーション
- ロースター:アーティザン・ロースト(Artisan Roast)
イントロダクション
- 生産者、ロースター、バリスタ、ジャッジ、それぞれがスペシャルティコーヒー業界のサステナビリティに関して重要な役割を担っている。
- ハードワークとすばらしいコーヒーを作ることを一貫して追求している姿勢が反映されたかのようなコーヒーを紹介。
生産者の役割
- 生産者は最も重要な役割を担う。
- コーヒーを育て、フレーバーを向上させている。
ヌグオ農園について
- コルブレという地区は、フィンカ・ヌグオの中でも最も標高の高い1930mところに位置している区画。
- コーヒーチェリーをゆっくりと成熟させることができ、より複雑な酸と素晴らしい風味をもたらす。
- 天候不良により、生産者ホセは今年300kgしか収穫することができなかった。
- コルブレは、そのたった3%の貴重なコーヒー。
アナエロビック・ファーメンテーションについて
- コーヒーチェリーを摘み取り後、日光の下で4時間乾燥させる。
- 真空バッグに移され、無酸素環境下で12時間発酵させる。
- 真空バッグを開き、1度ガスを開放し、再度密封して36時間発酵させる。
- その後コーヒー豆を32℃に温度管理された乾燥室で45日かけて乾燥させる。
- コーヒー豆の水分値が11.5%になるまでゆっくりとした乾燥を行う。
- そうすることで、ゆっくりと成熟し、スムースで繊細なフレーバーをもたらす。
- アナエロビック・ファーメンテーションプロセスにより、リンゴ酸が増加しグレープのようなフレーバーをもたらす。
ロースターの役割
- ロースターは、素晴らしいタクタイルと全てのデリケートなフレーバーをハイライトできるよう焙煎プロファイルを作成する。
焙煎について
- 1ハゼ後2,3度/分のスピードで温度を上げていく。
- スムースでシルキーな質感をコーヒーにもたらす。
バリスタの役割
- バリスタとしての役割は、生産者とロースターの熱心な取り組みや進歩した内容を1杯1杯のコーヒーに反映させ、コーヒー体験を素晴らしいものにすること。
- バリスタにとって、最大の難所はテイストクオリティを最大化すること。
- 「どうすればコーヒーのベストを見出すことができるのか?」を考えることが重要。
素晴らしいコーヒー体験を提供するための取り組み
- 焙煎で発生したCO2ガスは抽出とテイストに影響する。
- ある時はパッションフルーツ、次の日はグレープフルーツなど、フレーバーが変化してしまう。
- 発生したCO2ガスの影響で完全にフレーバーをコントロールすることができない。
- 特にライトローストのコーヒーについてはガス抜きが大事なポイントとなる。
- そこで、新しい抽出メソッドを考案。グラインドして、陰圧をかけてから抽出する。
- そうすることで、抽出を妨げるCO2ガスを取り除くことができ、抽出を完全にコントロールできるようになり、フレーバーを最大化することができる。
新しい抽出メソッドについて
- 焙煎後6日間コーヒー豆を真空パックに入れて寝かせる。
- 使用する1時間前に封を開ける。
- コーヒー豆を挽く。
- 挽いたコーヒー粉をバキュームシーラーに入れて-0.55 barになるまで陰圧をかける。
- -0.55 barは、コーヒーに含まれる全てのCO2を取り除くものではないが、エイジング6日目の使用コーヒーには最適の圧。
- 焙煎で発生したCO2ガスを除去することができる。
- その後、可能な限り素早くコーヒーの抽出に入る。
WBC 2018 -キース・クイ-10位プレゼンの流れ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
エスプレッソコース
レシピ
- 粉量: 20.5 g
- 抽出量: 50 g
→テイストとタクタイルのバランスがとれる。
ディスクリプタ
- 酸:中から高
- 甘み:中
- 苦み:低から中
- シャルドネ、赤リンゴ、完熟したプラム、マンゴー
- ミディアムボディ、スムース、シルキー、クリーンでフィニッシュ
ミルクビバレッジ
レシピ
- ミルク: 65 ml
→バランスがよくなり、チョコレートとラベンダーハニーの風味をもたらす。
ディスクリプタ
- ベイカーズ チョコレート、マカダミア、ラベンダーハニー
シグネシャービバレッジ
コンセプト
- イノベーション。
- 生産者ホセは、革新的なプロセスを取り入れてフレーバーを向上させた。
- ロースターは、タクタイルを向上させた。
- バリスタは、最終的なコーヒーの体験(フィニッシュ)をより印象的なものにする。
- 生産者、ロースター、バリスタのそれぞれの役割に関係する3つの材料を使用して、エスプレッソのフレーバー、テクスチャー、フィニッシュを向上させるドリンクを作成。
材料1:エスプレッソ 4ショット
- 粉量: 20.5 g
- 抽出量: 50 g
- 生産者を表現。フレーバーを向上させる。
- 遠心分離機(centrifuge)にかけて3分間3,000 rpmで回転させたもの。
- 沈殿物を除去できる。
- よりクリーンなフレーバーになり、苦みを取り除き、より高い酸と透明感をもたらす。
- シフトで余分な脂質とオイルを濾しとることで、シグネシャービバレッジ全体のフレーバーを向上させる。
材料2:ホームメイドのノンアルコールのジン 50 ml
- ロースターを表現。テクスチャーを向上させる。
- エスプレッソはジンと同じようなスムース、シルキーな質感をもっているため。
- 次の材料を水300 gに入れて冷蔵庫で48時間浸漬して、ノンアルコールのジンを作成。
- ジュニパーベリー 20 g
?確認中ケイヒ(桂皮) 4 g- トーストしたコリアンダーシード 4 g
- グリーンカルダモン(ホール) 4 g
- ホームメイドすることでエスプレッソとの相性をコントロールすることができ、テクスチャーを最大化できる。
材料3:ビタートニック 30 ml
- 次のものを混ぜて72時間冷蔵庫で浸漬して、ビタートニックを作成 。
- グレープフルーツの皮 12 g
- ライムの皮 12 g
- オールスパイスシード 1 g
- クエン酸 5 g
- 水 250 g
- ブラウンシュガー 50 g
- CO2充填機でCO2を加えて、かすかに発砲性を出す。
- ビタートニックの苦み、炭酸、そしてエスプレッソが合わさることで新しいフレーバーがつくられる。
シグネチャービバレッジの工程
- 抽出したエスプレッソを遠心分離機にかける。
- 遠心分離機からエスプレッソを取り出してシフトでこし、材料2を加える。
- CO2充填機でCO2を加えた材料3を混ぜ合わせる。
- 希釈させないようアイスキューブの入ったグラスに注ぐ。
ディスクリプタ
- コーラ、パッションフルーツ、白ワインのようなフィニッシュ
関連記事
フィンカ・ヌグオのコーヒーを使用したプレゼン
抽出プロセスに「真空・陰圧」を取り入れたプレゼン
ワールドバリスタチャンピオンシップ2018まとめ
マレーシア代表のプレゼン
スポンサーリンク
コメントを残す