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アメリカのボストンにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ2019(World Barista Championship 2019)のファイナリスト・セミファイナリストのプレゼンテーション内容をまとめました。また、最後にWBC2019の傾向をまとめました。目次から飛んでチェックしてみてください。
WBC2019は嬉しいことにアジアで2人目のWorld Barista Championが誕生しました!
今回のWBCも極上のエンターテインメントでした。開催者やスポンサーの皆さんには感謝の言葉しかありません。
アジア圏でのWBC優勝者は2014年のWBCで井崎英典氏以来の快挙であり、お隣韓国の大活躍は大変うれしいものですね。
話は少し変わりますが、同日行われたWorld Brewers Cup 2019で日本代表の中井 千香子バリスタ(UCCグループ)が4位という素晴らしい成績を収めています!
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 優勝韓国代表Jooyeon Jeon
コーヒー豆
Jooyeon Jeonバリスタは、コロンビアのラ パルマ イ エル トゥカン農園のアナエロビック・ファーメンテーションプロセスされたシドラ種を使用しています。
プレゼンの要旨
コーヒーに含まれる糖質がいかにテイストバランスにとって重要かを説明しています。とても化学的な内容にも関わらず、それを感じさせないプレゼンテーションです。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、でんぷん、ブラックベリー、麦芽を使用しています。そして焙煎時に失われる糖質と、コーヒーには存在するものの普段抽出されることのない糖質を使用コーヒーから抽出し、再添加することで使用コーヒーの新たな一面を再現したドリンクを作成しています。
>>>優勝韓国代表Jooyeon Jeon|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 2位ギリシャ代表Michalis Dimitrakopoulos
コーヒー豆
Michalis Dimitrakopoulosバリスタは、パナマのフィンカデボラのホールチェリー・カーボニック・マセレーションプロセスしたゲイシャ種の実験的なロット「”Echo”(エコ)」を使用しています。
プレゼンの要旨
実験的なロットEchoはMichalis Dimitrakopoulosバリスタとフィンカデボラの生産者ジェイミソン サベージ氏のコラボレーションの結果生まれた実験ロットを紹介しています。
シグネチャービバレッジ
バター、ドライストロベリー、白砂糖、ドライアイス、カスカラ、ベルガモットを使用して、ユニークな方法でサイフォンを使用し、アナエロビック環境を作り出しています。そしてホールチェリー・カーボニック・マセレーションからインスピレーションを受けたドリンクを作成しています。
>>>2位ギリシャ代表MICHALIS DIMITRAKOPOULOS|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 3位カナダ代表Cole Torode
コーヒー豆
Cole Torodeバリスタは、コロンビアのラ パルマ イ エル トゥカン農園のナチュラル アナエロビック ファーメンテーションプロセスされたシドラ種を使用しています。ロットだけそれぞれのドリンクで異なり、ミルクコースは#255、エスプレッソは#129、シグネチャービバレッジでは両方を使用しています。
プレゼンの要旨
農園もプロセスも品種も同じコーヒー豆を使用して、3年間の進化の軌跡を説明しています。その3年間は1年前の2018年、今年の2019年、そして未来の2020年です。過去の2018年では「ヴィンテージコーヒー」の概念を提唱しています。そして2019年ではどのように進化したのかを表現し、シグネチャービバレッジで未来の2020年のフレーバーを再現しています。
シグネチャービバレッジ
白ブドウ、プーアル茶を使用して、未来の2020年の使用コーヒーのフレーバーを再現しています。
>>>3位カナダ代表Cole Torode|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 4位インドネシア代表Mikael Jasin
コーヒー豆
Mikael Jasinバリスタは、3種類のコーヒー豆を使用しています。
- パナマのフィンカデボラのカーボニックマセレーションプロセスしたグリーンティップゲイシャ種のコーヒー豆
- エチオピアのグジのホールチェリー カーボニックマセレーションプロセスされたエアルーム種のコーヒー豆
- インドネシアのワハナのカーボニックマセレーションされたロングベリー種のコーヒー豆
の3種類です。
プレゼンの要旨
コーヒーが特定の風味を持つように発酵させる方法を「Purpose-driven fermentation」とネーミングして、カーボニックマセレーションに特化したプレゼンテーションを行っています。そして、自国のインドネシアにフィンカデボラの生産者ジェイミソン サベージ氏を呼び、カーボニックマセレーションを適用した初のインドネシアコーヒーを紹介しています。
シグネチャービバレッジ
ウォーターケフィア、バラのつぼみ、サワー種、ストロベリー、ブラックプラムを使用しています。そしてカーボニックマセレーションを活かしたドリンクを作成しています。
>>>4位インドネシア代表Mikael Jasin|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 5位ドイツ代表Wojtek Bialczak
コーヒー豆
Wojtek Bialczakバリスタは、コロンビアのフィンカ ラスヌベスのナチュラルプロセスされたユーゲニオイデス種を使用しています。
プレゼンの要旨
バリスタなら必ず聞かれる質問「一番美味しいコーヒーは何ですか?」に対し、決まった回答はないという前提の下で、とはいえ「自然の甘みのあるコーヒーで、不満を言う人はいない。」というバリスタとしての経験的事実を述べています。そして、今まで出会ったことがないほどの甘さを持つコーヒーを紹介しています。
シグネチャービバレッジ
甘酒、エルダーベリー、マンダリン、ハイビスカス、ホップティーを使用して、キャンディのような甘さのあるコーヒーを作成しています。
>>>5位ドイツ代表Wojtek Bialczak|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 6位スイス代表Mathieu Theis
コーヒー豆
Mathieu Theisバリスタは、3種類のコーヒー豆を使用しています。
- ブラジルのダテーラ農園のセミカーボニックマセレーションされたラウリーナ種
- ウガンダ東部シピフォールズ地域のナチュラルプロセスされた品種SL-14 と品種 Nyanzaland
- コスタリカ・ウェストバレーのナチュラル・アナエロビック・ファーメンテーションされた品種H1
の3種類です。
プレゼンの要旨
3種類の全く異なるコーヒー豆を紹介しています。それらのコーヒー豆は”タンクファーメンテーション”というプロセスが風味を向上させているという共通点を持っています。そして”タンクファーメンテーション”はコーヒー栽培としてベストとはいえない環境でも適用可能というメリットがあるとして、今後生産者だけでなくバリスタや消費者にとっても可能性の広がりをあることを伝えています。
シグネチャービバレッジ
1つのプロセス”タンクファーメンテーション”が3種類の異なるコーヒーのフレーバーを向上させたため、副材料はエスプレッソに感じるフレーバーであるリンゴに絞って3種類の調理方法(プロセス)でシグネシャードリンクを作成しています。
具体的にはリンゴ(オパールアップル)を煮込んだもの、リンゴ(グラニースミス)を酢にしたもの、リンゴ(ガラ)をコンブチャと緑茶の発酵させたものを使用しています。そして、エスプレッソに強く感じるシナモンフレーバーを活かしたドリンクを作成しています。
>>>6位スイス代表Mathieu Theis|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 7位スウェーデン代表Matt Winton
コーヒー豆
Matt Wintonバリスタは、2種類のコーヒー豆を使用しています。
- ウガンダのムズングプロジェクト・ナチュラルプロセスの品種SL-14 & Nyanzaland
- コロンビアのダブルアナエロビックファーメンテーション・ピンクブルボン
プレゼンの要旨
ウガンダのムズングプロジェクトのコーヒーをきっかけにコーヒーの発酵プロセスに興味を持ったMatt Wintonバリスタは、コロンビアの農園を訪れ、生産者とともに発酵プロセスの実験を試みました。そこで生まれた”ダブルアナエロビックファーメンテーション”をデモンストレーションを交えて紹介しています。
そしてシグニチャービバレッジを通して、将来自分自身がどのようなことをしたいのかを表現しています。
シグネチャービバレッジ
農園を訪れた際にコーヒーチェリーの果皮・果肉部分を破棄する場面を見てヒントを得たドリンクを作成しています。
コロンビアのダブルアナエロビックファーメンテーションで破棄される予定だった果皮・果肉部分は農園から、ミルクドリンク作成の練習をしたときにでる(本来破棄される)ミルクをカフェから持ち寄り、果皮・果肉部分はゼラチンと混ぜてコーヒーチェリーゼリーを作成し、ミルクはバターに加工して使用しています。農園からもカフェからも廃棄物が減少するような”ゼロウェイスト(廃棄物ゼロ)”を目指したドリンクを作成しています。
>>>7位スウェーデン代表MATT WINTON|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 8位メキシコ代表Carlos de la Torre
コーヒー豆
Carlos de la Torreバリスタは、自国メキシコのコーヒー豆を使用しており、ベラクルス州ヒコの位置するマイクロミル ラホヤ(La Joya)でナチュラル アナエロビックファーメンテーション処理されたレッドブルボンのマイクロロットを紹介しています。
プレゼンの要旨
コーヒーとその水分含量と水分活性(Aw)の関係についてプレゼンテーションしています。水分活性はコーヒーのフレーバーと密接な関係があり、焙煎にも大きな影響を及ぼすことを言及しています。
収穫してから保存したコーヒー豆では出しえない多くのフレーバーが収穫したてのコーヒー豆にあることを水分活性を根拠に説明し、オリジン内で焙煎した爆発的なフレーバーを持つコーヒーを提供しています。
シグネチャービバレッジ
Carlos De La Torreバリスタ自身のオリジナルドリンク “ラ チヴィタ(La Chivita)”をボストン流にアレンジしたLa Chivita inボストンを作成しています。
元々はメキシコのベラクルス州ヒコのオレンジジュースをメインの副材料として使用するコーヒードリンクだそうですが、アメリカの輸入規制の関係でボストンで手に入るオレンジを使用しています。
副材料として、オレンジジュース、発酵させたオレンジピール、カスカラインフュージョンのアイスキューブをを使用しています。
>>>8位メキシコ代表Carlos de la Torre|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 9位ロシア代表KONSTANTIN KHRAMOV
コーヒー豆
Konstantin Khramovバリスタは、2種類のコーヒー豆を使用しています。
- パナマの農園フィンカデボラのカーボニックマセレーション・グリーンティップゲイシャ種
- コスタリカ・ナチュラルコールドマセレーションのカツーラ種
プレゼンの要旨
コーヒーが、年齢、職業、国境を越えて楽しまれているという事実から、コーヒーが多くの人を巻き込み、会話や社交に存在している社会的に重要な生産物であることを説明しています。
そして、スペシャルティコーヒーの歴史に織り交ぜながら、現在求められている実験的なプロセスの先端をいくコーヒーを紹介しています。
シグネチャービバレッジ
ミルク、ライムジュース、ブラウンシュガー、バニラビーンズ、ブラッドオレンジのゼスト、オレンジ、シナモンを使用して、思わず会話が弾むようなドリンクを作成しています。
>>>9位ロシア代表KONSTANTIN KHRAMOV|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 10位イタリア代表Giacomo Vannelli
コーヒー豆
Giacomo Vannelliバリスタは、パナマのデボラ農園の
- ウォッシュト・カーボニックマセレーション”ビビッド”
- ナチュラル・カーボニックマセレーション
の2種類でプロセスされたグリーンティップゲイシャ種のコーヒー豆を使用しています。
プロセス以外は同じコーヒー豆です。
プレゼンの要旨
より複雑でかつ透明感のあるエスプレッソを抽出するために簡単にできるグラインド手法や、今後まもなく市場にでるというBravo brewer(ブラボブリューワー)という新しい抽出メソッドを紹介するなど、新しいテクノロジーを取り入れた最新のプレゼンです。
また、バリスタへの熱いメッセージも込められていて、とても印象的でかっこよいプレゼンです。
シグネチャービバレッジ
ウォッシュトカーボニックマセレーション”ビビッド”のコーヒー、チェリージャムのみを用いて、Bravo brewer(ブラボブリューワー)でカーボニックマセレーションで起きていることを再現して、フレーバーをハイライトしたドリンクを作成しています。
>>>10位イタリア代表Giacomo Vannelli|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 11位オーストラリア代表Mathew Lewin
コーヒー豆
Mathew Lewinバリスタは、ホンジュラスのサンサバルバラの2種類のコーヒー豆を使用しています。
- ホンジュラス・ベティ農園のナチュラルプロセス処理されたパライネマ種
- ホンジュラス・ラ フエルタ農園のナチュラルプロセス処理されたパライネマ種
パライネマ種という珍しい品種を2つの農園から紹介し、それぞれなぜ風味が違うのかを説明しています。
プレゼンの要旨
スペシャルティコーヒー業界の発展に伴いとても高価なコーヒー豆も生まれるようになりました。スペシャルティコーヒー業界の人々はその素晴らしい点を理解していると同時にこの活動を愛している一方、一般の多くのコーヒー愛飲者はその状況についてきておらず、コーヒーの嗜好において乖離していることを言及しています。
そこでスペシャルティコーヒー業界の人々は少しスローダウンするのも一つの手ではないかと提案しています。代替案としてはシンプルに顧客に「何が好きなのか」を質問し、そこから今までで一番のコーヒーを提供することとしています。
一般の多くのコーヒー愛飲者の最良のスタート地点となるミルクコースから始め、スペシャルティコーヒーの橋渡し役としてシグネチャービバレッジを提供し、最後にスペシャルティコーヒーの世界としてエスプレッソを提供しています。
シグネチャービバレッジ
チェスナット(栗)、ココナッツ、コールドブリュー抽出したラ フエルタ農園のコーヒーを使用して、1口目と2口目で全く違うフレーバー体験ができるドリンクを作成しています。
1口目は一般の多くのコーヒー愛飲者に親しまれるドリンクで、2口目はスペシャルティコーヒーの入り口となるドリンクに変化させています。
また3週間という長期間、60℃という低温で加熱調理して褐色物質を生み出して黒くする「ブラックニング(Blackening)」という調理方法や、材料を回転させながら加熱できる加熱炉を使用するといった珍しい調理方法も紹介しています。
>>>11位オーストラリア代表Mathew Lewin|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 12位ニュージーランド代表Dove Chen
コーヒー豆
Dove Chenバリスタは、パナマチリキ県フルトゥンゴにある農園フィンカ ヌグオのアナエロビック ハニープロセス処理されたゲイシャ種を使用しています。
プレゼンの要旨
コーヒー好きであれば誰しもが経験していることだと思いますが、コーヒーを飲んで幸せを感じたひと時があると思います。その「幸せなひと時を感じるコーヒー」について2つの要素が必要であるとDove Chenバリスタ自身の定義を紹介しています。そしてそれを再現したドリンクを提供しています。
シグネチャービバレッジ
ジャスミンとライムのミスト、白砂糖、フィンカ ヌグオのカスカラ、アップルジュース、卵白を使用して、Dove Chenバリスタがフィンカ ヌグオを訪れた時に感じた幸せのひと時を思わせるドリンクを作成しています。
>>>12位ニュージーランド代表Dove Chen|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 13位コスタリカ代表María Elena Rivera
コーヒー豆
María Elena Riveraバリスタは、コスタリカのラ モンタニャ農園レッドハニープロセスのビジャサルチ種を使用しています。
プレゼンの要旨
並外れたコーヒーを誰もがアクセスできるようにすることをテーマにしています。
並外れたコーヒーには必ずしも珍しい実験や最新のテクノロジーが必要なのではないと説明しています。そして、基本となるオリジンの品質、プロセス、焙煎、抽出、それらを全てとても上手にすることが並外れたコーヒーにつながるとして、自国コスタリカで発見されたビジャサルチ種のコーヒー豆を使って実証しています。
シグネチャービバレッジ
コーヒーチャフ、パッションフルーツ、パネラ、ミューシレージ付きパーチメント、ミルクを使用して、エスプレッソの風味特性が活きるユニークな風味のドリンクを作成しています。
>>>13位コスタリカ代表María Elena Rivera|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 14位ブラジル代表Martha Grill
コーヒー豆
Martha Grillバリスタは、自国ブラジルのドナ ネネン農園のナチュラル・カーボニックマセレーションで処理されたイエローブルボン種のコーヒー豆を使用しています。
プレゼンの要旨
Martha Grillバリスタは、80名以上もの新人バリスタを教育してきたバリスタトレーナーという経験を活かして、新人バリスタが必ず経験する3大恐怖を軸に、バリスタの人生のお話をシェアしています。
また、ブラジルのカーボニックマセレーションコーヒーを紹介するとともに、今年大ヒットしているフリーズディスティレーションしたミルクのメリットも説明しています。
シグネチャービバレッジ
アーモンド、ドライチェリー、凍結蒸留したミルク、マスコバド糖を使用して窒素でテクスチャーを向上させることで、エスプレッソコースとミルクコースで感じたフレーバーに加えて新たなフレーバーを感じることができるドリンクを作成しています。
>>>14位ブラジル代表Martha Grill|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 15位フィリピン代表Michael Harris
コーヒー豆
Michael Harrisバリスタは、2種類のコーヒー豆を使用しています。
- エチオピアのゲシャ・ビレッジオマブロックのナチュラルプロセスされた品種ゲシャ1931のLot No.:79
- エチオピアのグジ・メシナビレッジのウォッシュト・カーボニックマセレーションされたエアルーム種
プレゼンの要旨
完全にサステイナブルなコーヒーエコノミーを創り出すため、イノベーター理論に基づいてスペシャルティコーヒーのターゲット層を分けて各ドリンクを提案しています。
また、ある事情で収入減の柱を失ってしまったフィリピンのベンゲット州イトゴン町をコーヒー農園のコミュニティとして再起させ、サステイナブルなコーヒーエコノミーの一例としてイトゴン町原産のコーヒーを紹介しています。
Michael Harrisバリスタは社会起業家でもあり、その側面が色濃くでているプレゼンです。
シグネチャービバレッジ
フィリピン原産の花であるサンパギータのアロマを浸漬した発酵ココナッツの乳酸、ベンゲット州ラ・トリニダード町産のストロベリー、同じくラ・トリニダード町産のハチミツ、イトゴン町のコーヒー、窒素ガスを使用して、イノベーター理論のアーリーマジョリティー向けのドリンクを作成しています。
>>>15位フィリピン代表Michael Harris|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 16位オーストリア代表Junior Vargas Otero
コーヒー豆
Junior Vargas Oteroバリスタは、コロンビアのラ ネグリタ農園が生産したウォッシュトプロセスで発酵は”タータリック ファーメンテーション”という新しい発酵プロセスを行っているグリーンティップゲイシャ種のコーヒー豆を使用しています。
プレゼンの要旨
「コーヒーは人によって作られ、人のために作られている」という事実を忘れがちになってしまっているという点に着目して、人と人とのつながり、コーヒーと人とのつながり、アロマと視覚的情報のつながりなど、”つながり(コネクション)”の大切さを再認識させるプレゼン内容で、生産者のコーヒーへの愛が届いてくるようなプレゼンです。
シグネチャービバレッジ
コーヒーの花、カスカラというコーヒーノキ由来の成分のみを使用して、コーヒー生産者のサステイナブルなビジネスを促進するために思いついたシグネチャービバレッジを作成しています。またドライアイスを加えることで、アロマをスモークにして充満させる華やかなテクニックを使用しています。
>>>16位オーストリア代表Junior Vargas Otero|ワールドバリスタチャンピオンシップ2019
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2019 日本代表山本知子
コーヒー豆
山本知子バリスタは、コスタリカタラスのドン アントニオ農園のブラックハニープロセスしたゲイシャ種を使用しています。
プレゼンの要旨
いかにして美味しいエスプレッソを作り出すかにフォーカスして、2つのメソッドを紹介しています。
- 1つ目:焙煎の異なる豆をブレンドして使用。
- 2つ目:EKグラインダーに静電気除去装置を装着。
そして焙煎、抽出、レシピについて丁寧に説明し、多角的な視点から使用コーヒーの魅力を伝え、実践的にバリスタとしての役割を説明しています。
シグネチャービバレッジ
ミルク、ウォーターケフィア、はちみつのみを使用しています。
- 天然成分を使用すること
- フルーツを使用しないこと
この2つの条件を課して、フルーツというすでに美味しい素材に頼らないシグニチャービバレッジを作成しています。そしてバリスタとしての役割である使用コーヒーが、価値に見合う高い品質であることを証明しています。
>>>ワールドバリスタチャンピオンシップ2019日本代表山本知子
WBC2019の傾向
WBC2019では、3つ大きな傾向がありました。
- ミルクのフリーズディスティレーション
- コーヒー生産国代表者の健闘
- アナエロビックファーメンテーション技術の拡散
ミルクのフリーズディスティレーション(凍結蒸留)
ミルクのフリーズディスティレーションは、WBC2017で4位になったベン・プットバリスタが初めてWBCで紹介したミルク蒸留技術です。
WBC2017ではベンプットバリスタ一人だけでしたが、
WBC2018ではカナダ代表Cole Torodeバリスタとスイス代表Mathieu Theisバリスタが使用していました。
そして、WBC2019ではファイナリストの6人中5人が使用していました。
WBC2017でベンプットバリスタが紹介した時に”freeze distillation”=凍結蒸留という言葉を使用していたため、凍結蒸留と訳して紹介しています。
技術的にはいったんミルクを凍らせてゆっくり解凍することで、水とそれ以外の成分の融点の違いから、それ以外の成分が先に溶けだし、濃厚なミルクを得ることができるというものです。
一般的には凍結濃縮法という言葉が存在しており、おいしい冷凍研究所では凍結濃縮法を以下のように説明しています。
凍結濃縮(とうけつのうしゅく)とは、食品が冷凍される過程で、食品の水分と物質が分離し、物質のほうの濃度が高まる現象のこと
まさに、ベンプットバリスタのフリーズディスティレーション技術であり、英語でもfreeze concentration(凍結濃縮、フリーズコンセントレーション)という言葉が存在します。
海外ではフリーズコンセントレーションを使用した果物のジュースなどが販売されています。
今後注目の技術です。
ミルクのフリーズディスティレーション関連プレゼン
(クリックすると上の該当プレゼン概要に移動します。)
- 優勝韓国代表Jooyeon Jeonバリスタ
- 3位カナダ代表Cole Torodeバリスタ
- 4位インドネシア代表Mikael Jasinバリスタ
- 5位ドイツ代表Wojtek Bialczakバリスタ
- 6位スイス代表Mathieu Theisバリスタ
- 12位ニュージーランド代表Dove Chenバリスタ
- 14位ブラジル代表Martha Grillバリスタ
- 日本代表山本知子バリスタ
また、フィリピン代表Michael Harrisバリスタは、別の方法でミルクの水分を揮発させて濃縮したミルクを得ています。
コーヒー生産国代表者の健闘
WBC2019では、
- インドネシア
- メキシコ
- コスタリカ
- ブラジル
- フィリピン
といったコーヒー生産国として有名な代表者が上位に入賞する年となり、前年までと明らかな違いがありました。コーヒー生産国のバリスタ技術の向上と、生産国ならではの強みを活かしたプレゼンがとても印象的ですが、それと同じくらい発酵プロセス技術の拡散が顕著でした。
アナエロビックファーメンテーション技術の拡散
アナエロビックファーメンテーションプロセスとカーボニックマセレーションプロセスの発酵プロセス技術が、他の生産国に技術シェアされたり独自開発されたりして、ラ パルマ イ エル トゥカンやフィンカ デボラといった超有名農園以外の農園でも多数取り入れられています。
WBC2019では、
- アナエロビックファーメンテーション6名
- カーボニックマセレーション6名
カーボニックマセレーションもアナエロビックファーメンテーション(嫌気性発酵)の一つのため、セミファイナリスト16名だけ見ても16人中12名、75%のバリスタがアナエロビックファーメンテーションのコーヒー豆を使用した結果となります。
コーヒーのフォースウェーブ?アナエロビックファーメンテーション
“コーヒーのフォースウェーブ”がいまだに何かと話題になっており、決めてに欠けた”コーヒーのフォースウェーブ”が巷でたくさんささやかれています。
バリスタ大会では革命的なことが生まれては消えていくものですが、
- アナエロビックファーメンテーションプロセス
- カーボニックマセレーションプロセス
といった発酵プロセスの進化に関しては一般消費者の舌でも明らかに違いがわかる変化をもたらす上、WBC2019で技術拡散が明らかになったため、間違いなくスペシャルティコーヒーを変えた革命の一つといえ、今後も残っていく技術となります。
この発酵プロセスの進化は、
- トップバリスタが勝負時に選ぶほど優れたコーヒーを生み出し、
- 消費者がわかるレベルでフレーバーに大きな影響力をもっていて、
- 標高の低い農園でも”美味しいコーヒー”を生み出すことができる
画期的な革命です。
“コーヒーのフォースウェーブ”は、個人的にはなんでもよいのですが、首をかしげる”コーヒーのフォースウェーブ”になるくらいなら、生産者の努力が顕著に反映されるアナエロビックファーメンテーションという発酵プロセスの進化に一票投じたいところです。
なお、セミファイナルの動画は以下で確認できます。
World Barista Championship 2019 セミファイナル動画
次の記事で確認できます。
2020年のワールドバリスタチャンピオンシップ
2020年のワールドバリスタチャンピオンシップとワールドブリュワーズカップは、オーストラリアのメルボルンで5/4~5/7→(延期となり、2020年の11/3~11/6に変更)で開催される予定です。
2020年の日本代表は、石谷貴之バリスタです。
WBCは2度目の挑戦になり、ワールドバリスタチャンピオンシップ2018-11位石谷貴之バリスタにて前回のプレゼンが確認できます。
過去のWorld Barista Championshipプレゼンまとめ
過去のプレゼンのまとめはこちらです。
【オランダ アムステルダム】ワールドバリスタチャンピオンシップ2018プレゼンまとめ
【韓国ソウル】ワールドバリスタチャンピオンシップ2017まとめ
【アイルランド ダブリン】ワールドバリスタチャンピオンシップ2016まとめ
【アメリカ シアトル】ワールドバリスタチャンピオンシップ2015まとめ
【イタリア リミニ】ワールドバリスタチャンピオンシップ2014まとめ
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