スポンサーリンク
スペシャルティコーヒーは進化が著しく早いです。しかし、ワールドバリスタチャンピオンシップでのプレゼンテーションのコア部分は、今も変わらず、過去のものでも非常に参考になります。動画再生回数の増加から推察するに、再度復習されている方はたくさんいるようです。
本記事では、2016年アイルランドの首都ダブリンにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)のセミファイナリスト全12名のランキング結果とプレゼンテーション概要をまとめた記事を紹介します。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 優勝
台湾代表 バーグ・ウー
コーヒー豆
バーグ・ウーバリスタは、パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャ種のコーヒー豆を使用しています。
プレゼンのポイント
エスプレッソを抽出する前に、氷水の入ったステンレスバケットにポルタフィルターをつけて冷却する手法を紹介しています。そうすることで、パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャ種のもつ高い複雑性を保ったまま抽出することが可能にしています。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、長く抽出したエスプレッソ、オレンジジュースとはちみつのリダクション、コールドブリューのアールグレイティー、アロマディフューザー、窒素ガスを使用し、完全な複雑性を持ったコーヒードリンクを作成しています。
バーグ・ウー|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 優勝プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 2位
日本代表 岩瀬 由和
コーヒー豆
レックコーヒー(REC COFFEE)のオーナーの岩瀬 由和バリスタは、ナインティプラス社のパナマ・ゲイシャエステートとエチオピア・マゴコロエステートを使用しています。
プレゼンのポイント
ブレンドではなくコーヒーを緻密な考えの下で織り交ぜることで、一つのオリジンでは存在しないフレーバーをもたらすインターウィービングコーヒーという考え方を考案し、プレゼンテーションを行っています。
また、コーヒー豆の大きさや密度の違いによる不均一なミックス比率を避けるため、グラインドしてから2種類のコーヒーをミックスしています。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、リンゴとゲイシャのコーヒーチェリーを漬け込んだもの、パッションフルーツのシロップを使用し、ナインティプラス社独自の新しい発酵プロセスからヒントを得たドリンクを作成しています。
岩瀬 由和|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 2位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 3位
カナダ代表 ベン・プット
コーヒー豆
ベン・プットバリスタは、ナインティプラス社のエチオピア・ニキセ・エアルームを使用しています。
プレゼンのポイント
生産者とバリスタが取ったリスクを例に、規範から外れてリスクテイカーになることで新たな道を開くことの重要性をプレゼンテーションしています。
具体的には、農園管理者シメオン・アベイが取ったリスクとして、コーヒー豆の発酵工程に関して、良い風味が確保できる均一な発酵ではなく、敢えてコーヒー豆を重なったまま乾燥させることで、不均一な発酵を引き起こし、ユニークなフレーバーを手に入れました。
そして、ベン・プットバリスタが取ったリスクとして、昨年のワールドバリスタチャンピオンシップで披露したバキュームシーラーを再度使用し、エスプレッソの加圧抽出の際に生成される二酸化炭素(CO2)を取り除くことで、二酸化炭素特有のネガティブな酸を取り除く方法を紹介しています。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、グラナディージャジュース、アプリコットコンポート、リンゴ酸を使用し、フルイマージョン・エスプレッソと名付けた高い抽出収率のドリンクを作成しています。
ベン・プット|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 3位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 4位
アメリカ代表 レム・バトラー
コーヒー豆
レム・バトラー バリスタは、パマナ・フィンカ・ヌグオ・ゲイシャ種のコーヒー豆を使用しています。
プレゼンのポイント
美味しいコーヒーには、酸の明るさ、甘さ、フレーバーの明瞭さの3つの要素が感じられ、それらはコーヒーの品種、栽培環境、生産者の品質に対する熱心な取り組みが現れることを言及しています。そしてその3つの要素に焙煎のレベル、農園のレベル、バリスタのレベルが直接どのように影響するのかを説明しています。
シグネチャービバレッジ
マグノリアのシンプルシロップ、ハイビスカス、レモングラス、窒素ガスを使用しています。全ての材料のフレーバーを開花させる誘因として、レモングラスを使用直前にカットしリムを行っています。生産者ガヤルドファミリーから名付けた「カフェガヤルド」という、フルーツの多様な風味を感じるコールドドリンクを作成しています。
レム・バトラー|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 4位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 5位
フランス代表 シャーロット・マラバル
コーヒー豆
シャーロット・マラバル バリスタは、エルサルバドル・サン・ロベルト農園のブルボン種のコーヒー豆を使用しています。
プレゼンのポイント
コーヒーの風味特性は我々の期待、つまり我々の脳が創り出しているものであり、消費者が適切な期待と感情を抱くことができるようにバリスタが提案することで、素晴らしいフレーバー体験をもたらすことができると説明しています。
その例として、長い間剪定もされていない80年以上になるブルボンの古木から採取されたコーヒー豆を選択しています。そして、ネガティブなイメージの栽培条件、古くなった木のビジュアルイメージとは裏腹に素晴らしい風味を持つことを、バリスタの表現を通してポジティブなフレーバー体験ができることをジャッジに実体験させています。
角度で現れる動物が変化する絵や、パズル絵、実際の農園のコーヒーノキの写真という複数のビジュアルイメージを活用したプレゼンテーションです。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、フードペアリング科学の考えのもと、コーヒーチェリーと似た分子組成式を持つ副材料を使用しています。具体的には、バジルとストロベリーのジュース、シナモンを漬け込んだブラウンシュガーシロップを使用しています。そして、コーヒーの中に隠されたチェリーの風味を引き出しています。
シャーロット・マラバル|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 5位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 6位
オランダ代表 レックス・ウェネケル
コーヒー豆
レックス・ウェネケル バリスタは、単一農園でたくさんの品種を栽培しているコロンビア・ラス・マルガリータス農園のスダンルメ種、ゲイシャ種、パカマラ種という3種類のコーヒー豆を使用しています。
プレゼンのポイント
レストランでワインを頼むとき、「フランス産のピノノワール」というように国名に品種を加えて注文するように、スペシャルティコーヒーでも同じ考え方を広めるためにはどうしていくべきかプレゼンテーションしています。
単一農園の3種類の品種のコーヒー豆を活用し、その他の条件(標高・農園・プロセス・焙煎)を同じにすることで、品種による風味の違いが存在することを表現しています。
それぞれのドリンクを提供する前に、同じ品種のフィルターコーヒーを参考としてワイングラスに注いで提供しています。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、梨、エルダーフラワー、マスカットのリダクション、ザクロシロップを副材料として使用し、ブレンダーで混ぜ合わせることで、パカマラ種に期待される定番の風味を表現しています。。
レックス・ウェネケル|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 6位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 7位
アイルランド代表 ナターリア・ピオトロヴスカ
コーヒー豆
ナターリア・ピオトロヴスカ バリスタは、コロンビア・ラ・エスペランサ農園のスダン ルメ種のウォッシュトと、コロンビア・ラス・ヌベス農園のスダン ルメ種のナチュラルの2種類のコーヒー豆を使用しています。
プレゼンのポイント
開催国アイルランドの代表として、スペシャルティコーヒー先進国アイルランドであっても、小さなコミュニテイーではまだまだスペシャルティコーヒーにアクセスできないことに言及しています。
スペシャルティコーヒーを次の新しいレベルに引き上げるためには、世界中の誰もがスペシャルティコーヒーにアクセスできるようにすることだと説明しています。
誰もがスペシャルティコーヒーを楽しめるようになるために、新しい次元のコーヒーであるスダン ルメを紹介することで、スペシャルティコーヒーのさらなる発展を促しています。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、プレゼン中にトルコ産のリンゴをお湯に浸漬して作成したアップルインフュージョン、ポーランドの伝統的な燻製器具を用いて、リンゴの木のスモークで燻したダムソンを加熱減水させたリダクション液、パネラシュガー、アイスキューブを使用しています。
ナターリア・ピオトロヴスカ|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 7位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 8位
オーストラリア代表 ヒュー・ケリー
コーヒー豆
ヒュー・ケリー バリスタは、コロンビア・エル・ミラドール・カスティーヨ(カスティージョ)のナチュラルプロセスとドライオンツリー(樹上乾燥)のナチュラルプロセスの2種類のコーヒー豆を使用しています。
プレゼンのポイント
WBC2015の優勝者であるササ・セスティックバリスタが経営するオナ・コーヒー(ONA Coffee)に所属するヒュー・ケリー バリスタにとって、バリスタ競技会用の希少な豆を選択することもできたけれども、カスティーヨ種という生産性に優れたコーヒーを紹介しています。
より多くの人にスペシャルティコーヒーをアクセス可能なものにしたいという思いから、病気に強く、生産効率性の高い生産者フレンドリーな品種のコーヒー豆を紹介することを通して、適切な焙煎、バリスタの技術を組み合わせることでコーヒーの持つ素晴らしさをより明確にし、特別なフレーバー体験を提供しています。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、2種類のプロセス違いのエスプレッソに加えて、フリーズドライピーチ、ココナッツシュガー、濃縮したブラックカラントのエッセンスを使用して、カスティーヨの持つポテンシャルをさらに開花させるドリンクを作成しています。
ヒュー・ケリー|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 8位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 9位
イギリス代表 ダン・フェローズ
コーヒー豆
ダン・フェローズ バリスタは、インティプラス社のエチオピア・シダモ・ニキセの綿密に計画されたナチュラルプロセスで処理されたエアルームを使用しています。
プレゼンのポイント
記憶に残るコーヒー体験を提供するに、それぞれのコースを通して農園レベルから、焙煎、抽出、プレゼンのすべての段階でフレーバーにフォーカスした決断の重要性について説明しています。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、エスプレッソからインスピレーションを受けた副材料としてフリーズドライのストロベリー、パッションフルーツ、ペルー産のカカオニブを加えて、それぞれエスプレッソのもつ甘み、酸、苦みを補います。
それに加えて、プレスした新鮮なパイナップルジュースでジューシーさを強調し、塩を加えたモラセスシロップで塩味、抹茶ココナッツクリームで旨味を加えることで、五味全てを引き上げ、新しい「ニキセコーヒードリンク」を作成しています。
最後にエスプレッソに感じるトロピカルなアロマを加えて提供しています。
ダン・フェローズ|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 9位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 10位
ドイツ代表 エルナ・トスベルグ
コーヒー豆
エルナ・トスベルグバリスタは、コスタリカのナチュラルプロセス、品種はカツーラとカツアイの混合、ブラックユニコーンと呼ばれるコーヒー豆を使用しています。
プレゼンのポイント
ブラックユニコーンを特別にしているキーポイントとして、ナチュラルプロセスで「サウナ」という発酵工程をドライイングプロセスに採用しています。そのサウナのプロセスは、水を多く使用しないため環境的に良好なのと同時に、高いカップクオリティをもたらします。プレゼンテーションは、この特殊なナチュラルプロセスに重点えお置いて展開しています。
また、エスプレッソに感じるブルーベリーを用意して、蒸し器を使用しサウナプロセスを実演しています。その実演により、サウナプロセスでどのようにコーヒーチェリーが「汗」をかくのかを示し、香りの変化でその効果を表現しています。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、発酵させたミルク、砂糖、塩、ブルーベリージュースを使用しています。サウナプロセスで生成される乳酸に重点を置き、ミルクビバレッジとは異なる新たな次元のシナジーを実現したコーヒードリンクを作成しています。
エルナ・トスベルグ|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 10位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 11位
香港代表ドーン・チャン
コーヒー豆
ドーン・チャンバリスタは、コロンビアのセロ アズール農園ウォッシュトプロセスのゲイシャ種のコーヒー豆を使用しています。
プレゼンのポイント
記憶に残るコーヒー体験をお客様に提供するためには、プロ意識のあるバリスタが必要不可欠な存在であるということをプレゼンテーションを通じて証明しています。そして、本当の意味でのサステイナビリティを確保するためには、消費者の反応をコーヒー生産者にフィードバックし、コーヒー生産者から新たなオリジンの情報を得るというコミュニケーションのループを築くことが重要であると説明しています。
シグネチャービバレッジ
シグネシャービバレッジでは、冷間圧縮したグレープジュース、発酵させたキュウリのジュース、ハイビスカスの紅茶、カモミールティーを使用しています。
エスプレッソコースとミルクコースの後に、評価に関係しない「テイスティングエクササイズ」を取り入れています。このテイスティングエクササイズはジャッジの好みが関係しており、それに応じてシグネシャービバレッジに使用する副材料の分量が変える、つまり風味も変わるドリンクを作成しています。
テイスティングエクササイズの結果を取り入れたドリンクを提供することで、単なるコーヒーの準備・提供するバリスタに終わることなく、バリスタの高等技術なしでは成しえないフロム シード トゥ カップ(from seed to cup)を表現しています。
ドーン・チャン|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 11位プレゼン概要
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 12位
中国代表フー・イン
コーヒー豆
フー・イン バリスタは、パナマのフィンカ・デボラ農園ゲイシャ種ハニープロセスのコーヒー豆を使用しています。
プレゼンのポイント
11年間コーヒーショップのオーナーとして、またバリスタとして働き、コーヒー愛好家としていろいろなコーヒーショップを見てきた観点をシェアしています。
シグネチャービバレッジ
シグニチャービバレッジでは、シグネシャービバレッジで感じる風味をより探しやすくするために、まず最初に同じ副材料を使用したコーヒーの入っていないドリンクを参考までに提供しています。シグニチャービバレッジの副材料として、オレンジジュースのアイスキューブ、自家製のカスカラシロップを使用しています。
フー・イン|ワールドバリスタチャンピオンシップ2016 12位プレゼン概要
関連記事
【オランダ アムステルダム】ワールドバリスタチャンピオンシップ2018プレゼンまとめ
【アイルランド ダブリン】ワールドバリスタチャンピオンシップ2016まとめ
【アメリカ シアトル】ワールドバリスタチャンピオンシップ2015まとめ
【イタリア リミニ】ワールドバリスタチャンピオンシップ2014まとめ
スポンサーリンク
コメントを残す