2017年のワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC) にて8位に入賞した中国代表ジェレミー・チャン(JEREMY ZHANG)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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ジェレミー・チャン バリスタは、M2Mコーヒー(M2M Coffee)を経営しています。
WBC2015では24位、WBC2017では8位と成績を急上昇させました。
ナインティプラス社のチームメンバーでもあるジェレミー・チャン バリスタは、ナインティプラス社のジュリエット、サンシャイン、リトルデビルという3種類のコーヒー豆を使用しています。コーヒー豆を擬人化し、コーヒー同士のつながりを家族に例えています。
また、「ダブルグラインディング」を披露しています。日本代表の鈴木 樹バリスタの「ダブルグラインド」とは異なり、液体窒素は不使用で1回目にEk43グラインダー、2回目にK30 Vario Airを使用しています。
シングルオリジンのコーヒー豆は、ブレンドせずオリジン単体で飲まれることが多いなか、テイストプロファイルをデザインできる「ブレンド」の魅力に再度フォーカスしたプレゼンテーションを行っています。
それぞれのコースでジャッジへ明確に指示を出し、シグネシャービバレッジでは、言語のみでフレーバーを描写するのではなく、ジェッジと共にドリンクを飲み一体となって、どのようなフレーバーを感じるかを説明しています。
WBC 2017, 8位 – ジェレミー・チャン-プレゼン概要
3種類のコーヒー豆をブレンドして使用。
使用コーヒー1:ナインティプラス・パナマ・ゲイシャエステート・ジュリエット
ジュリエットの基本情報
- 国:パナマ
- 地域:ボルカン地区
- 農園主:ナインティプラス社
- 農園:ゲイシャエステート
- コーヒー名:ジュリエット
- 品種:ゲイシャ
- プロセス:ハニープロセス
ジュリエットの特徴
- 典型的なゲイシャフレーバー。
- ジュリエットという名前のように、デリケートでエレガントな風味を持つ。
- ただボディが欠けている。
- 自然のゲイシャを変化させることはしたくないが、自然から生まれるカップテイストを他の2種類のコーヒーの特徴と組み合わせることでカバーし、相乗効果をもたらす。
使用コーヒー2:ナインティプラス・シダモ・マゴコロエステート・サンシャイン
サンシャインの基本情報
- 国:エチオピア
- 地域:シダモ地区
- 農園主:ナインティプラス社
- 農園:マゴコロ・エステート
- コーヒー名:サンシャイン
- 品種:エアルーム
- プロセス:ナチュラルプロセス
- 標高:1900m
サンシャインの特徴
- 素晴らしい甘み・明るいシトラス、リッチなボディがある。
- 頼れる兄のよう。
- ブレンドの骨格となる。
使用コーヒー3:ナインティプラス・シダモ・マゴコロエステート・リトルデビル
リトルデビルの基本情報
- 国:エチオピア
- 地域:シダモ地区
- 農園主:ナインティプラス社
- 農園:マゴコロ・エステート
- コーヒー名:リトルデビル
- プロセス:ナチュラル
- 品種:エアルーム
リトルデビルの特徴
- サンシャインの兄弟分。
- 品種、栽培地域が同じだが、少し変わり者。
- 発酵工程により、とても濃厚なフレーバーを持つ。
- 単体では、フレーバーバランスをとることがほぼ不可能だが、他の2種類のコーヒーと合わさることで、とても複雑な風味をもたらす。
シングルオリジンコーヒーのブレンドについて
- ブレンドすることは、自然のフレーバーを変えることではなく、カップのフレーバー、ボディを変えること。
- ブレンドすることで、テイストプロファイルをデザインできる。
- シングルオリジンの持つフレーバーへさらなるフレーバーの層を積み上げることができる。
焙煎について
- ジュリエットとリトルデビルは、風味特性を生かすため、デベロップメントタイムは短く1分15秒。
- サンシャインは、家族をサポートする必要があるため(甘みを引き上げる必要があるため)少し長く、1分45秒。
ダブルグラインドについて
- 最初にEk43グラインダーで粗めの粉と細かい粉を生成し、その粉をK30 Vario Airで挽く。
- ブレンドの比率を均一にできる。
- より多くの細かい粒子を生成することで、より多くの抽出量が確保でき、甘み、クラリティをもたらす。
- コーヒー粉と水の触れる表面積が増加することでボディが向上する。
- 焙煎度合いを上げる必要がないので、フレーバーとクラリティも同時に確保できる。
WBC 2017, 8位 – ジェレミー・チャン-プレゼンの流れ
- シグネチャービバレッジ用のエスプレッソを抽出
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネシャービバレッジ
エスプレッソコース
ブレンドの割合:ジュリエットのフレーバーを全面に感じるブレンド。
- ジュリエット 70% → クラリティをもたらす。
- サンシャイン 20% → ボディと甘さをもたらす。
- リトルデビル 10% → 複雑になる。
レシピ
- 粉量:15 g
- 抽出量:35 g
→ダブルグラインドで、このレシピでもボディと甘みを感じることができる。
フレーバー/タクタイル
- 一口目:ネクタリン
- 二口目:オレンジ、ベルガモット
- 三口目:カラメル化した核果
- ミディアムライトボディ
- スムース
- 次のコースまで続く長い甘み
インストラクション
- かき混ぜないこと。
カフェで楽しむように飲んでもらいたいため。
ミルクビバレッジ
- ミルクが甘いので、甘みではなく、ナチュラルの風味特性を重視したブレンド。
- 甘みを持つサンシャインを控えめに。
ミルクについて
- ミルクの風味は脂肪分の影響によるものと考えられていた。
- しかし、パスチャライゼーションプロセス(低温殺菌)のときに引き起こるカラメル化の影響も重要な要因の一つであることがわかっている。
- 通常は、パスチャライゼーションプロセスは90度で3分。
- 今回使用のミルクはパスチャライゼーションプロセスは80度で2分。カラメル化を最小限にとどめ、ミルクの風味を楽しめるようにした。
焙煎
焙煎も同様のことが言える。(ジュリエットとリトルデビルはデベロップメントタイムは短め、サンシャインは長めにとる。)
ブレンドの割合
- サンシャイン 30% → ボディをもたらす。
- リトルデビル 30% → 増加することでより複雑になる。
- ジュリエット 40% → クラリティをもたらすために必要。
レシピ
- 粉量:16 g
- 抽出量:28 g
→この分量は酸を引き上げ、甘いミルクとバランスを取ることができる。
130mlカップサイズでテイストバランスのため。
フレーバー
- 一口目:ミルクチョコレート、トーストされたアーモンド
- 二口目:ホワイトチョコレート、バナナカスタード、バタリーなカラメル
インストラクション
- 一口目は混ぜない。
- 二口目は、そこから3回かき混ぜてから飲むこと。
シグネシャービバレッジ
コンセプト
新しいフレーバーをジャッジとともに発掘する。
エスプレッソ
ブレンド比率はエスプレッソコースと同じもの。
- ジュリエット 70%
- サンシャイン 20%
- リトルデビル 10%
- エスプレッソコースの前に抽出し、クールダウンさせておく。
→酸とボディを引き上げる。
液体部分:材料1~3
材料1:オレンジエッセンス 20g
- オレンジの花の蜜15g、オレンジピール5g、1時間発酵させたもの。
- (※予選ではオレンジの花の蜜5g、オレンジピール15gと言っていた。)
- フルーツの甘さを取り引き出すため。
- サンシャインの甘みを補強。
材料2:希釈したバナナマフィン 20 g
- バナナマフィン:水=1:1で希釈したもの。
- バナナフレーバーを増強するため。
- サンシャインの甘みを補強。
材料3:アップルサイダービネガー 5g
- フレーバーの層を厚くするため。
- リトルデビルの風味を補強。
アロマ部分:材料4
材料4:フォーム 5g/グラス
- オレンジエッセンス 350g (レシピは上に同じ。)
- 液体ゼラチン 6g
- ソーダガンに入れ、窒素をチャージしてフォームを作る。
- ゲイシャのアロマを引き上げる。
シグネチャービバレッジの工程
- 材料1,2,3をエスプレッソに加える。
- 材料4をドリンクの上部に加える。
インストラクション
- ジャッジと共にドリンクを飲みながら、フレーバーとその移り変わりを説明。
- アロマを感じ取る。
- アロマ:緑茶、ジャスミン(ゲイシャのフレグランス)
- グラスを軽く揺って、一口目を飲む。
- エスプレッソからのネクタリン、新しいフレーバーであるカラメル化したタフィー、オレンジの花、レモングラス
- 大きくスワリングして、二口目。
- 新しいフレーバーであるチェリー、エスプレッソからくるベルガモット、チョコレート
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