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2019年4月、アメリカのボストンにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、5位に入賞したドイツ代表Wojtek Bialczak(ヴォイテク・ビアルザック)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
Wojtek Bialczakバリスタは普段ドイツのベルリンに2店舗あるFive Elephant Coffeeでヘッドロースターとして活躍されています。WBCは今回が初めての挑戦でした。
プレゼンでは、「一番美味しいコーヒーは何ですか?」というお客さんからの質問に対し、決まった回答はないとしつつも、「自然の甘みのあるコーヒーで、不満を言う人はいない。」というバリスタとしてのある種の経験的事実を述べています。そして、今まで出会ったことがないほどの甘さを持つコーヒーを紹介しています。
WBC 2019 -5位Wojtek Bialczak-プレゼン概要
使用コーヒー:コロンビア・フィンカ ラスヌベス・ナチュラル・ユーゲニオイデス
- 国:コロンビア
- 地域:カウカ
- 農園:フィンカ ラスヌベス
- 品種:ユーゲニオイデス種
- プロセス:ナチュラル
- 標高:2000 m
このコーヒーを飲んだ時、衝撃を受けた。
他のコーヒーと明らかに違う特徴がある。それは今まで経験したことのないほどの甘みとシルキーな質感。
今日はそんな注目に値するコーヒーを紹介する。
ラスヌベス農園について
ラスヌベスは太平洋が近いため太平洋側から乾いた空気が、アンデス山脈側から湿った空気が流れてきて、ユニークなマイクロクライメットを有している。
それに加えてラスヌベス農園は2000mという極めて高い標高に位置しており、コーヒーノキはゆっくりと成長する。また温度が低いため多くの糖をコーヒーノキが蓄え、ラスヌベスの極めて甘く、かつ複雑なカッププロファイルをもたらす。
また、高い標高はエネルギーのムダを減らしたり病気を心配する時間も少なくなり、コーヒーノキが美しいチェリーを実らせることにより専念できる。
農園のコンセプトは、コーヒーノキがエコシステムの中で自然に育つよう再構築すること。
農園のオーナーと彼のチームはとてもリスキーだが新しい品種を植えることにした。しかも病気への耐性力の高いアラビカ種ではない品種を選んだ。
そしてコーヒーノキを十分な間隔を空けて植えることで、自然に大きく成長して収穫が安定している。
さらにアカシア、レモングラス、グアバの木を植えて、そこからより窒素を生産し、コーヒーノキの栄養となっている。それはとても高いレベルの糖をもたらす。
ラスヌベス農園では朝に収穫される、なぜなら朝はコーヒーチェリーが最も糖分を高く保持しているため。
ユーゲニオイデス種について
ユーゲニオイデス種は、ロブスタとアラビカが親の品種。
ユーゲニオイデス種は、極めて高い甘みがあり、酸と苦みは低い。
カフェイン量は低い。
プロセスについて
ナチュラルプロセスが最もユーゲニオイデス種の甘みを感じる。
ユーゲニオイデス種を摘み取った後、加湿器の設置された特別なグリーンハウスへ移す。
加湿器によって乾燥をゆっくりと進行させて糖分がコーヒー豆に浸透する時間をより長くする効果がある。
これが甘みと透明感をもたらす。
焙煎について
- 100gでロースト。
- 焙煎時間8分30秒
- デベロップメント:120秒
酸をキープし甘みとアロマを最大化するポイント。キャラメルのような甘さをもたらす。
プレゼンの要旨
コーヒーのプロであれば、必ずといって良いほど聞かれる質問がある。
「一番美味しいコーヒーは何ですか?」
「飲んだ方が良いコーヒーは何ですか?」
そしてこれは誰もが納得することだと思うが、その質問に対する決まった正しい回答はない。
ベストなコーヒーはその人が飲みたいコーヒーであり、それは人によって違うからである。
しかし、私の経験上次のことは言える。
「自然の甘みのあるコーヒーで、不満を言う人はいない。」
そこで今日は甘みについて話そうと思う。
これから甘みや糖分についてたくさん話をするので、キャンディショップツアーへ招待したい。そして、コーヒーの持つ異なる甘さを示し体験してもらいたい。
最初にエスプレッソコースで、ドライフルーツのような甘さを体験してもらう。
次に、ミルクコースでは、キャラメルのような甘さを体験してもらう。
最後にシグネシャービバレッジでは、材料を合わせることでキャンディのような新しいレベルの爽やかな甘みのあるコーヒーを提供する。
WBC 2019 -5位Wojtek Bialczak-プレゼンの流れ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
エスプレッソコース
ドライフルーツのような甘さを体験してもらう。
レシピ
- 粉量:20 g
- 抽出量: 53 g
甘みが最大化するレシピ
カッププロファイル
アロマ
- マジパン
- カカオニブ
フレーバー
- マンダリン
- マジパン
- ダークチョコレート
- ドライパパイヤ
- ケーンシュガー
- 甘いパッションフルーツ
- 高い甘み
- ミディアムからローの酸と苦み
タクタイル
- ミディアムボディ
- 長く続くフィニッシュ
- シルキーマウスフィール
インストラクション
- 40秒間待つ。
- 40秒経ったら10回かき混ぜ、50秒のときに。1口目を飲むこと。
→これが、最も甘みをハイライトできる方法。
ミルクビバレッジ
キャラメルのような甘さを体験してもらう。
ミルクコースはコルタードを提供(少量の温かい牛乳で薄めたエスプレッソ)
ミルクは凍結蒸留したもの(ミルクを凍らせて、水分を減らしたもの)を使用。
レシピ
- 粉量:20 g
- 抽出量: 53 g
カッププロファイル
- ヌガー
- 塩キャラメル
- ドライナツメヤシ
- カシューナッツ
シグネチャービバレッジ
コンセプト
キャンディのような甘さのあるコーヒー。
ラスヌベスのユーゲニオイデスの素晴らしさに材料を合わせることで新しいレベルの爽やかな甘みのあるコーヒーを提供する。
エスプレッソ 4ショット
レシピ
- 粉量:20 g
- 抽出量: 53 g
冷やして甘みを引き出す。
材料1:甘酒 4 g
甘酒はとても甘く、ライチのようなトロピカルフルーツ感がある。ライチはラスヌベスのユーゲニオイデスを飲んだ時に最初に感じた風味を想起させる。
甘酒は米を発酵させたもので、日本では一般的な飲み物
米と米麹(米こうじ)を10時間60℃のお湯で発酵させる。
そして米を取り除き、液体部分のみを抽出したもの。
材料2:エルダーベリージュース 20 g
シロップのようで、他に似たフルーツがないような甘さがある。
これはドリンクにジューシーさをもたらし、ラスヌベスのユーゲニオイデスと合わさることでブルーベリーの風味をもたらす。
材料3:マンダリンのジュース 12 g
ドリンクと合わさることで、ブラッドオレンジのフレーバーをもたらす。
材料4:ハイビスカス 1 g
ドリンクと合わさることで、ダークチョコレートのフィニッシュをもたらす。
材料5:ホップティーインフュージョンのミスト
最後に使用。
ホップのアロマがコーヒーの苦みとすべてのフレーバーをまとめ協調させる。
シグネチャービバレッジの工程
- 材料1を抽出する。
- プレゼン序盤にエスプレッソを抽出し、冷やす。
- 材料1から材料4までをすべて合わせ、シェイカーで混ぜる。
- グラスに注ぐ
- 提供直前に材料5をスプレーする。
カッププロファイル
- アロマは、最初はペールエール(ビール)、次第にオレンジに変化する。
- ブルーベリー
- ブラッドオレンジ
- ブンタン
- ライチ
- ダークチョコレートのフィニッシュ
インストラクション
スワリングしてアロマを感じてから飲むこと。
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