2014年イタリアのリミニにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC) にて5位に入賞したイギリス代表マックスウェル・コロナ-ダッシュウッド(Maxwell Colonna-Dashwood)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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マックスウェル・コロナ-ダッシュウッド バリスタは、コロナ&スモールズ(Colonna & Small’s)のオーナーです。イギリス代表として3度もWBCに挑戦しており、WBC2012は6位、WBC2014は5位、翌年のWBC2015は5位という結果です。
コーヒー豆は、エチオピアはイルガチェフェ・アリチャのウォッシュト・エアルームとニカラグアはリモンシリョ農園ナチュラル・ロングベリーを使用しています。
科学誌にも掲載し、本も出版した「水のコーヒーのフレーバーに対する影響」に関するプレゼンテーションです。プレゼンテーションではカルシウム、マグネシウム、バッファの影響とその役割を説明するために、フィルター抽出のコーヒーを使用してエクササイズを行っています。また、WBCでは規定の水を使用する必要がありますので、WBC会場の水に合わせて、抽出、焙煎を調整しています。
シグネシャービバレッジでは、プラムジャムシロップ、ザクロインフュージョン、ベルガモットウォーターを使用しています。そして、エチオピア・イルガチェフェ・アリチャの持つ風味を活かすため、水の効果を応用したシグネチャービバレッジを作成しています。
WBC 2014, 5位 –
マックスウェル・コロナ-ダッシュウッド-プレゼン概要
使用コーヒー1:エチオピア・イルガチェフェ・アリチャ・エアルーム
エチオピア・イルガチェフェ・アリチャ・エアルームの基本情報
- 国:エチオピア
- 地域:イルガチェフェ・ゲデオ・アリチャ
- プロセス:ウォッシュト
- 品種:エアルーム
- 標高:1950m~2100m
- エスプレッソコースとシグネチャービバレッジで使用。(水によるコーヒーの風味を知るエクササイズでも使用。)
使用コーヒー2:ニカラグア・リモンシリョ・ナチュラル・ロングベリー
ニカラグア・リモンシリョ・ナチュラル・ロングベリーの基本情報
- 国:ニカラグア
- 農園:リモンシリョ(Limoncillo)
- プロセス:ナチュラル
- 品種:ロングベリー
- ミルクビバレッジで使用。
- 乾燥工程で頻繁にコーヒーチェリーをひっくり返さないことで、ドライストロベリーのようなフルーツのフレーバーをもたらす。
水が及ぼすコーヒーの風味への影響を研究
- 約1年前からイギリスのバース大学の化学研究所と共に、コーヒーのフレーバーに対する水の影響についての調査を始めた。
- クリストファー・ヘンドン博士の協力を得て計算科学の見地から研究。
- サイエンティフィックジャーナルにもその論文は記載されることとなった。
主要な要素:カルシウム、マグネシウム、バッファの影響とその役割
- 研究者のような服へ着替え、簡単にわかりやすく説明するために、イラストを使用して水の科学の原則を説明。(服を着替えたのは、コミュニケーションと学びを円滑にするため。)
- カルシウムは、重みのあるクリーミーなフレーバーをもたらす。
- マグネシウムは、フルーティーなフレーバーをもたらす。
- バッファは、液体の化合物をまとめる役割を果たす。Phを調整する役割を持つ。
- バッファがないと、酸味のバランスがとれない。コーヒーは弱酸性なのでバッファがないと酸っぱくなる。
- バッファの値が高すぎると、他要素の働きを壊し、コーヒーのフレーバーを壊してしまう。
- イラストのKHは炭酸塩硬度(Carbonate Hardness)のこと。
異なる水によるコーヒーの風味を知るエクササイズ
- フィルター抽出のコーヒーを3種類用意する。
- コーヒー豆はエスプレッソコースで使用するエチオピア・イルガチェフェ・アリチャ。
- 全て同じTDS値。
- 一番左のグラス(最初に飲むグラス)は、ミネラル、バッファがほとんど入っていないもの。
- 物足りなさを感じる風味で、少し酸っぱい。
- カルシウムとマグネシウムが少なく、コーヒーの風味をフルに出し切ることができないため、風味に物足りなさを感じる。
- 酸味はバッファの欠乏によるもので、コーヒーは弱酸性であるため、バッファがないと酸のバランスが崩れる。
- 真ん中のグラス(2番目に飲むグラス)は、カルシウムが多量に含まれていて、バッファの値が高いもの。
- バッファの影響で、3つの中で最も好ましくない風味となっている。
- 一番右のグラス(3番目に飲むグラス)は、カルシウム、マグネシウム、バッファが適切に調整されたもの。
- コーヒーの良い風味を引き出すことができる。
WBC会場の水に合わせて抽出
- WBC会場の水の成分をチェックし、抽出をコントロールする。
- WBC会場の水は、カルシウムとマグネシウムの値は良好、バッファが少し高すぎるものであった。
- 「異なる水によるコーヒーの風味を知るエクササイズ」の2番目のグラスのような結果を避けるため、エスプレッソを少し短い時間で抽出することで、十分な酸を確保する。
WBC会場の水に合わせて焙煎
- 水は焙煎にも影響する。
- ロンドンで焙煎プロファイルの異なるコーヒー豆を複数用意し、会場の水を確認した後、最も適した焙煎プロファイルのものを選択。
- 低温焙煎した豆を選択。
- 複雑さ、甘味、酸味を引き出すことができる。
高いバッファの水の利用
- シグネチャービバレッジでは、副材料の一つプラムジャムを作成する際に高いバッファの水を使用する。
- プラムジャムのシャープさを最小化する役割を果たす。
WBC 2014, 5位 –
マックスウェル・コロナ-ダッシュウッド-プレゼンの流れ
- ミルクビバレッジ
- エスプレッソコース
- シグネシャービバレッジ
ミルクビバレッジ
ミルクビバレッジのレシピ
- ニカラグア・リモンシリョ・ナチュラル・ロングベリーを使用。
- ミルクとの相性が良いため、このコーヒー豆を選択した。
- WBC会場の水はバッファが少し高いため、抽出を調整し、少し短い時間でエスプレッソを抽出。
- ミルクは、サウスウエストイングランドにあるアイヴィハウスファーム(Ivy House Farm)のオーガニックジャージーのミルクを使用。
- 草で育てられた成分無調整牛乳。
ミルクビバレッジのフレーバー
- ドライストロベリー
- ヌガー
- ペカン
- フランプマシュマロ(イギリスのマシュマロ菓子、Flump Marshmallow)
エスプレッソコース
エスプレッソコースのレシピ
- エチオピア・イルガチェフェ・アリチャ・エアルームを使用。
- 会場の水を確認した後、その水と相性の良い焙煎プロファイルのコーヒー豆を選択。
エスプレッソコースのフレーバー/タクタイル
- ベルガモット
- ザクロ
- フレッシュ
- ジューシー
- クリーン
→標高の高さとウォッシュトからくるもの。 - 2口目は特に口の上側に粘土を与える。
シグネシャービバレッジ
シグネチャービバレッジのコンセプト
- エチオピア・イルガチェフェ・アリチャ・エアルームを使用。
- エスプレッソの風味特性からインスパイアされたドリンク。
材料1:プラムジャムシロップ
- プラムジャム:高いバッファの水=70:30で作成。
- 高いバッファーの水を使用することで、プラムジャムのシャープさを最小限に留めることができる。
- 粘度とフレーバーを確保するため、プラムジャムはグラスの底部に載せている。
材料2:ザクロインフュージョン 4g
- 75gのザクロの種を25分高温で加熱したもの。
- ステージ裏で作成。
材料3:ベルガモットウォーター 2プッシュ
- 高いミネラルを含む水50gにベルガモットのエッセンス12滴を入れたもの。
- アトマイザーグラスにスプレーして使用。
シグネチャービバレッジの工程
- 材料1の入ったグラスにエスプレッソを注ぐ。
- 材料2をグラスへ注ぐ。
- 材料3を2cm話して、ジャッジがアトマイザーでグラスに吹きつける。
シグネチャービバレッジのインストラクション
- スプレー後、すぐにアロマを確認すること。
- 一口目のザクロの風味を感じた後、グラスを5秒回すこと。
→下に沈んだプラムジャムシロップと混ぜ合わせ、より粘度とボディを与えること。
シグネチャービバレッジのフレーバー
- ベルガモット
- ザクロ
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