2018年6月、オランダはアムステルダムにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、優勝したポーランド代表アグニェシュカ・ロジュスカ(Agnieszka Rojewska)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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アグニェシュカ・ロジュスカ バリスタは、コーヒーチェーンでバリスタとして働いた後、ポーランド内でFULL PRO COFFEEというコーヒーショップを立ち上げて運営していました。現在はそのカフェはたたんだようで、主にバリスタトレーナーとしてフリーランスで活躍しています。
WBCは3度目の挑戦です。前回の成績はWBC 2015では34位、WBC 2016でも34位でした。
今回のプレゼンでは、以下の3段階の過去にタイムスリップします。
- ミルクビバレッジでは、スペシャルティコーヒーのカフェに初めて訪れた時まで、
- シグネチャービバレッジでは、そのカフェに通うようになった時まで、
- そしてエスプレッソコースでは、常連客になった時まで、
ジャッジの時間を戻します。
そして、ジャッジと共に初心に返ったアグニェシュカ・ロジュスカ バリスタは、各ドリンクの提供を通してバリスタとしての役割と目的を説明し、実践していきます。
WBC 2018 – アグニェシュカ・ロジュスカ-優勝プレゼン動画
※ワールドバリスタチャンピオンシップ2018の詳しい動画視聴方法はコチラをご確認ください。
WBC 2018 -アグニェシュカ・ロジュスカ-優勝プレゼン概要
使用コーヒー:エチオピア・エアルーム・ウォッシュト・カーボニック・マセレーション
- 国:エチオピア
- 地域:グジ・メシナビレッジ (Mesina)
- ウォッシングステーション:ZB washing station
- プロジェクロオリジン:CMセレクション
- 品種:エアルーム
- 標高:2300 m
- プロセス:ウォッシュト・カーボニック・マセレーション
オリジンについて
- 使用のコーヒー豆はエチオピアのメシナビレッジのもの。
- エアルームという白い花の品種。
- メシナビレッジは、コーヒー栽培地として新しい。
- 新鮮な土壌と10年という若いコーヒーノキが植えられている。
- より濃厚なイエローフルーツの風味と並外れた甘みが生まれる。
- 2300mという高い標高も素晴らしい甘みをもたらす。
ウォッシュト・カーボニック・マセレーションについて
- パルピング後にタンクへ入れてco2を入れて密閉する。
- 全ての酸素をタンク内から排除する。
- 乳酸菌の生成を促すことになり、クリーミーなマウスフィールをもたらす。
焙煎について
- オナコーヒーのサム・コラ氏が焙煎。
- 投入温度を低めに設定。
- 柔らかい、ファッジのような甘みを発達させる。
WBC 2018 -アグニェシュカ・ロジュスカ-優勝プレゼンの流れ
- イントロダクション
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
- エスプレッソコース
イントロダクション
- スペシャルティコーヒー業界は急速に進化している。
- 昨日の新しい発見が、今日のスタンダードとなる。
- それはとても良いことで、ワクワクすることである。
- なぜなら素晴らしいコーヒー1杯を楽しむことにつながるから。
- しかしその反面、次のように考えさせられることがある。
- 「我々はどこへ向かっているのか?」
- 「将来のスペシャルティコーヒーはどうなるのか?」
- 私はその答えを我々の過去の中に見つけた。
- 最初の頃は、みんなカフェでコーヒー1杯飲むことを楽しんでいる。
- それはバリスタにとって、カスタマーサービススキルの向上とホスピタリティ精神を育成することにつながる。
- 今日のプレゼンでは、始めてスペシャルティコーヒーのカフェに訪れた過去にタイムスリップしてもらう。
ミルクビバレッジ
スペシャルティコーヒーのカフェに初めて訪れる
- スペシャルティコーヒーのカフェ初日はミルクビバレッジをおすすめする。
- なぜならシンプルに美味しいから。
- コーヒー一杯を飲むことを純粋に楽しんでもらうため、エチオピアのコーヒーということだけ伝え、農園、プロセスなどの情報はここでは伏せる。
- エチオピアを選んだ理由は、表現しやすいため。イエローとレッドフルーツのフレーバーを明確に感じやすく、簡単にそのフレーバーに気付くことができる。
- そして、個人的にも初めてコーヒーに恋をしたのがエチオピアのコーヒー豆だから。
- ここでの目的は、スペシャルティコーヒーに関心を寄せてもらうこと。
- そしてもっと知りたいと興味を持ってもらうこと。
レシピ
- 粉量:22 g
- 抽出量:36 g
- 総量: 3.5オンス(=約103.5 ml)
- ミルク:ポーランドの全脂肪牛乳を使用。
- 高脂肪のミルクはミルクビバレッジのカップにもクリーミーさをもたらす。
- クリーミーな質感と低温のミルクが合わさることで、柔らかく溶けたミルクチョコレートアイスクリームを想起させる。
- カップ中央にシンプルに小さいハートのラテアートを描くことで、ミルクが行き渡りよりアロマを際立たせ、より濃厚なストロベリージャムを感じることができる。
フレーバー
- ミルクチョコレート
- 温かいストロベリージャム
インストラクション
- コーヒー1杯を楽しんで飲むこと
シグネシャービバレッジ
レギュラーカスタマーになったら
- カフェに通うようになったら、スペシャルティコーヒーの知識を得たい、いろいろ経験してみたいと思うようになる。
- 常連客になってスペシャルティコーヒーにもっと近づいてもらえるようにコーヒー豆の情報を提供する。
- ただ単に講義のように教えるのではなく、もっとクリエイティブに伝えるため、シグネシャービバレッジを提供しながら、オリジン、ウォッシュト・カーボニックマセレーション、焙煎といったコーヒーができるまでの各段階を説明をする。
エスプレッソ 6ショット
- 粉量:20 g
- 抽出量:35 g
→イエローフルーツのトロピカルな風味が前面に出るレシピ
材料1:パッションフルーツ インフュージョン 20g
- オリジン・テロワールからもたらされたフレーバープロファイルを表現。
- パッションフルーツ100g、ココナッツシュガー30g、水50mlを加えて、60℃で3時間ゆっくりと加熱したもの。
→ナチュラルなトロピカルフルーツの風味をもたらす。
材料2:ウォッショト ミルク 20 g
- プロセス(ウォッショト・カーボニック・マセレーション)からもたらされたテクスチャ(クリーミーなマウスフィール)を表現。
- ウォッショト・カーボニック・マセレーションで生成される乳酸菌と同じ乳酸菌を作成して、乳酸菌を増強する。
- 温かいミルク100gにライムジュースの形でクエン酸7gを加える。
- タンパク質とそれ以外の水分に分かれる。
- 3時間放置してから、3回こすと、ウォッショト・ミルクが20g生成される。
→シグネシャービバレッジにクリーミーなマウスフィールをもたらす。
材料3:ルイボス インフュージョン 10 g
- 焙煎からもたらされた甘みを表現。
- ルイボス 4gを20℃の水 100 gに24時間浸漬する。
- 低温での浸漬により、クオリティの高いキャラメルの風味をもたらす。
シグネチャービバレッジの工程
- エスプレッソと材料1,2,3を合わせる。
- ブレンダーに入れて混ぜる。
→テクスチャーを強調する。
フレーバー
- 1口目:パッションフルーツ、アプリコット(マシナビレッジのテロワールからくるもの)
- 2口目:クリーミーな質感(ウォッシュト ミルクとカーボニック・マセレーションからくるもの)、キャラメル(メイラード反応からもたらされたもの)
- 3口目:分離が始まると、よりパッションフルーツと風味を感じるようになる。そして、ミルクビバレッジで感じたストロベリーの風味が戻ってくる。
インストラクション
- 一緒に飲みながらテイストプロファイルを説明。
エスプレッソコース
常連客になったら
- 顔を見ただけで良いことがあった日かわかるようになる。
- バリスタ自身の大好きなコーヒーを紹介する。
- それがエスプレッソ。
- ただ飲むのではなく、最大限の価値を感じられるようガイドする。
- エスプレッソの話をするとき、テイストバランス、フレーバーディスクリプター、タクタイルの話をする。
レシピ
- 粉量: 20 g
- 抽出量: 45 g
フレーバーディスクリプタ
- 中程度の甘み、酸、苦み
- オレンジ、プラム、かすかにピーチ、
- 飲み始めのタクタイルはラウンド、ミディアムウェイト。
- 後からベルベット、シルクのような質感に変化する。
- オレンジの花のようなアフターテイスト
インストラクション
- 説明するので指示があるまで待つこと
- スプーンで10回混ぜてから飲むこと。
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