2016年ダブリンにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC) にて優勝した台湾代表バーグ・ウー(Berg Wu)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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バーグ・ウー バリスタは、シンプル・カッファ(The Lobby of Simple Kaffa)のオーナーです。
ワールドバリスタチャンピオンシップには3度目の挑戦となり、WBC2014では7位、WBC2015では22位、そしてWBC2016で優勝しました。
プレゼンテーションでは、パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャ種のコーヒー豆を使用しています。
エスプレッソを抽出する前に、氷水の入ったステンレスバケットにポルタフィルターをつけて冷却する手法を紹介しています。そうすることで、パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャ種のもつ高い複雑性を保ったまま抽出することが可能になります。
シグネシャービバレッジでは、長く抽出したエスプレッソ、オレンジジュースとはちみつのリダクション、コールドブリューのアールグレイティー、アロマディフューザー、窒素ガスを使用し、完全な複雑性を持ったコーヒードリンクを作成しています。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016, 優勝 –
バーグ・ウー–プレゼン概要
使用コーヒー:パナマ・フィンカ・デボラ・ウォッシュト・ゲイシャ
パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャの基本情報
- 国:パナマ
- 地域:ボルカン地区
- 農園:フィンカ・デボラ
- 生産者:ジェイミソン・サベージ
- 標高:1950m
- 品種:ゲイシャ
- プロセス:ウォッシュト
- 焙煎:ライトロースト
パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャの特徴
- 1950mの高い標高で、非常にゆっくりと成長する。
→非常に複雑なフレーバーを持つようになる。 - また、フローラルと柑橘系のアロマを多分に有している。
パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャのプロセス
- 完熟したチェリーのみを収穫。
- 機械でミューシラージを除去。
- グリーンハウスのアフリカンベッドで乾燥される。
- 生産者ジェイミソン・サベージはアフリカンベッドを上下に3層構成となっている。
- 各層は異なる乾燥温度をもたらす。
- 最初にコーヒー豆は1,2日最上段のアフリカンベッドで乾燥され、水分を急速で飛ばす。
- その後2段目の層に移し、7日間乾燥させる。
- 最後に最下層に移し、7日間乾燥させる。
→合計16日間のゆっくりとした乾燥工程が、カップに甘みとボディをもたらす。
焙煎について
150度から160度の間でROR(上昇率)を減速し、メイラード反応が進む期間を増加させた。
→乾燥工程からもたらされた甘みとボディを補完する。
冷却したポルタフィルターでエスプレッソを抽出する。
- パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャの持つ複雑なフローラルと柑橘系のアロマは、加熱することで、すぐに失われてしまう。
- エスプレッソ抽出後のポルタフィルターの温度は約90度になっているため、通常の状態ではこのアロマ成分を蒸発させてしまう。
- そこで、エスプレッソ抽出前に、冷水にポルタフィルターを浸して冷却して、水分を拭き取ってから抽出する。
- この手法により、パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャの持つ高い複雑性を保ったまま抽出することが可能になる。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016, 優勝 –
バーグ・ウー–プレゼンの流れ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネシャービバレッジ
エスプレッソコース
レシピ
- 粉量:19 g
- 抽出量:43 g
フレーバー
- コーヒーの花やジャスミンのような白い花
- オレンジやマンデリンのような柑橘系の高い酸味と甘み
- フローラルとハニーの長く続くフィニッシュ
タクタイル
- ミディアムボディ
- シルキーマウスフィール
- ミディアムからロングフィニッシュ
インストラクション
- フィニッシュのフローラルとハニーを感じるために、一度呼吸する。
ミルクビバレッジ
レシピ
- 粉量:20 g
- 抽出量:41 g
- オーガニックミルクは、長く続く甘みを持つため、エスプレッソコースより細かめに挽き、抽出量を少なめにする。
→柑橘系のフレーバーを引き出す。 - フォームの厚み:3cm
- 150mlのカップ
- 厚みの薄いカップで提供。
→3cmのフォームに仕上げ、薄いカップで提供することで、透明性のあるミルクティーのようなテクスチャーをより感じるようになる。
フレーバー
- マンダリン
- タフィーの繊細な甘み
- アークグレイのミルクティーでフィニッシュ
シグネシャービバレッジ
コンセプト
- 完璧な複雑性をもったコーヒーは、複雑なアロマ、フルーティーさ、とても長く続くアフターテイストを兼ね備えている。
- フィンカ・デボラ・ゲイシャのようなコーヒーで、最もバランスの良い点を実現することは、次のようにできるだけ犠牲にするものを減らそうとすること:
- 短く抽出して、アフターテイストを犠牲にする。
- 長く抽出して、アロマとフルーティな風味を犠牲にする。
- しかし、シグネシャービバレッジで副材料を使用して完璧な複雑性をもったフィンカ・デボラ・ゲイシャを再現する。
- それはつまり、爆発的なアロマ、フルーティーさ、とても長く続くフィニッシュを兼ね備えたドリンク。
エスプレッソ
- 粉量:19 g
- 抽出量:51 g
→とても長く続くフィニッシュを感じる。
材料1:オレンジジュースとはちみつのリダクション 15g
- オレンジジュース:はちみつ=10:1の比率で80度で加熱し、50%に減水させたもの。
- カラメル化した風味なしにジューシーな柑橘系のフレーバーを引き出す。
材料2:アールグレイティー 15g
- 茶葉4gと100gの軟水を使用し、4時間10度未満で抽出したもの。
- 渋みを出すことなく柑橘系のフレーバーを強調する。
- アールグレイティーのフレーバーはフルーティーさを発展させ、フィニッシュでフィンカ・デボラ・ゲイシャの風味と融合する。
材料3:ジャスミンとマンダリンのアロマ
- ジャスミンのエッセンス1滴とマンダリンオレンジエッセンス1滴をアロマディフューザーに滴下。
- 5秒間ドリンクに蒸気を追加する。
シグネチャービバレッジの工程
- エスプレッソを抽出後、すぐにシェイカーへ移し替える。
- 材料1,2を追加する。
- 材料3を5秒間追加する。
- シェイカーに蓋をし、窒素ガスを注入する。
→圧力を加え、全ての材料をコネクトさせるため。 - 約4秒間シェイクする。
→アロマが急速に溶け込ませ、スムースなテクスチャーを生む。 - ほんのり温かい程度の温度になる。
→使用のカップでよりスムースさと複雑性を感じる。
インストラクション
- すぐに飲むこと。
- 最後のフローラルハニーでフィニッシュを感じるため、ひと呼吸すること。
フレーバー
- ジャスミン、マンダリン
- その後、フルラウンドのベルガモット、オレンジ
- ひと呼吸を置いて、フローラルハニーでフィニッシュ
まとめ
ワールドバリスタチャンピオンシップ 2016で優勝した台湾代表バーグ・ウー バリスタは、パナマ・フィンカ・デボラ・ゲイシャ種のウォッシュトのコーヒー豆を使用しました。
複雑なフローラルと柑橘系のアロマを有し、栽培環境とプロセス、焙煎の説明をしました。全てのショットを抽出する前に、ポルタフィルターを冷水に浸して冷たくしてからエスプレッソを抽出しました。
冷却したポルタフィルターで抽出することで、高温化で揮発してしまう複雑なフローラルと柑橘系のアロマを液体に留めることができます。
デボラ農園のゲイシャ種のようにフローラルのアロマと風味を持つコーヒーに有効な手法と説明しています。
プレゼンテーションの流れは、エスプレッソコース、ミルクビバレッジ、シグネチャービバレッジの順で行い、エスプレッソコースでは、コーヒーの花やジャスミンのような白い花とlオレンジやマンデリンのような柑橘系の高い酸味と甘みを引き出しました。
ミルクビバレッジでは、0.3cmという薄いフォームに仕上げ、壁の厚みの薄いカップで提供することで、透明感のあるミルクティーのようなテクスチャーをより感じるようにしています。
シグネシャービバレッジでは、長く抽出したエスプレッソでとても長く続くアフターテイストを確保し、副材料を使用して短い抽出をした場合に出てくるフルーティーなフレーバーを補完し、アロマディフューザーと窒素ガスを注入したシェイカー使用して複雑なアロマとスムースなボディを作り上げ、液体として一体感のある完璧な複雑性を持ったコーヒードリンクを作成しています。
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