2018年6月、オランダはアムステルダムにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、8位になったスウェーデン代表のマット・ウィントン(Matt Winton)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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スウェーデンのセミファイナリストは、WBC 2012で11位になったPer Nordellバリスタ以来6年ぶりです。
マット・ウィントン バリスタは、スウェーデンはストックホルムにあるDrop Coffee Roastersに勤めています。コーヒーの大会常連のロースター&カフェです。元上司はWBC 2018で3位になったスイス代表のマチュー・タイス バリスタで、今回の大会でもサポートを受けていたようです。
コーヒー関係の仕事を本格的に始めたのが2年前で、WBCの挑戦は今回が初めてです。
触覚、視覚、聴覚がいかにテイストに影響するかについて、大学の研究結果を応用してデモンストレーションを交えたプレゼンを行っています。
WBC 2018 – マット・ウィントン-8位プレゼン動画
※ワールドバリスタチャンピオンシップ2018の詳しい動画視聴方法はコチラをご確認ください。
WBC 2018 -マット・ウィントン-8位プレゼン概要
使用コーヒー:コロンビア・フィンカ・ラ・チョレラ・ウォッシュト・カツーラ
- 国:コロンビア
- 生産者:ペトロ・クラロ(Petro Claro)
- 地域:ウイラ県(Huila)
- 農園:フィンカ・ラ・チョレラ(Finca La Chorrera)
- 品種:カツーラ
- プロセス:ウォッシュト
- 標高:1700m
ラ・チョレラ農園について
- 日を分けてピッキングすることで、成熟した実のみを摘み取る。
- それぞれのロットは別々に処理され保管される。
- 明確なトレーサビリティが確保されていて、品質を向上させるのに役立っている。
- 生産者ペトロはカップから遡ってトレースすることで、真に並外れたコーヒーロットを作成している。
- そのロットの一つが大会使用のコーヒー。
焙煎について
- コーヒーの生き生きとした印象度とマウスフィールに焦点を当てて焙煎。
- 高いカロリーの焙煎プロファイル
- エアフローを増加し、高いチャージ温度で短めの焙煎時間8分半で仕上げる。
感覚の転移について
- 2015年にオックスフォード大学チャールズ・スペンス(Charles Spence)教授が触覚、マウスフィール、飲むことの間で感覚の転移が起こると結論づけている。
(確証はないですが、関連していると思われる論文:Multisensory Flavor Perception) - つまり、何かに触れたり飲んだりすると、テイストに影響があるということ。
カップの色とテイストのリンクについて
- ブラジルのサンパウロ大学(University of Sao Paulo)のファビアナ・カルバロ(Fabiana Carvalho)博士は、スペシャルティコーヒーを異なる色のカップで評価した。
- そして、カップの色とテイストがリンクしていることを証明した。
(カップの色の論文は見つけられませんでしたが、スペシャルティコーヒーと色の関連性を示唆している記事はこちら:The Coffee Sensorium By Fabiana Carvalho: A Revolution Of Flavor Perception)
音楽とテイストの関連性について
- 2010年にオックスフォード大学にて、音楽とテイストの関連性についての研究が行われた。
WBC 2018 -マット・ウィントン-8位プレゼンの流れ
- ミルクビバレッジ
- エスプレッソコース
- シグネチャービバレッジ
ミルクビバレッジ
チャールズ・スペンス教授の感覚の転移理論を応用する。
レシピ
- 粉量: 19 g
- 抽出量: 36 g
- 抽出時間:26 秒
→シルキーな質感とチョコレートオレンジの風味になる。 - ミルク: 60 g
- 脂肪分:4.0%
- オランダのミルクを使用。
→ミルクとエスプレッソを合わせることで次の風味に変化する。
ディスクリプタ
- クリーミーアーモンドミルク
- バニラ
- ベルベット
インストラクション
- 用意している小さな茶色の生地を手で持ちながらドリンクを評価すること。
→チャールズ・スペンス教授の感覚の転移理論により、フレーバーとテクスチャーをより明確に感じやすくなる。
エスプレッソコース
ファビアナ・カルバロ博士のカップの色とテイストのリンクの研究を応用する。
レシピ
- 粉量: 19 g
- 抽出量: 38 g
- 抽出温度:26 秒
ディスクリプタ
- ブラッドオレンジ、シトラス、グレープフルーツの皮、カカオニブ、キニーネでフィニッシュ
- 酸:高
- 甘み:中~高
- 苦み:低
- ローミディアムボディ
- ジューシーなマウスフィール
- 長く続くフィニッシュ
- 舌の裏側からはグレープフルーツの皮を思わせる風味がくる。
- 息を吸って吐くと、トニックウォーターを感じる。
インストラクション
- エスプレッソを飲む前にテーブルセットにあるオレンジ部分を人差し指で触ること。
→スパークリングな酸とブラッドオレンジ、ジューシーマウスフィールを感じやすくなる。 - 次に赤色の部分を触ること。
→赤色は甘みとボディのスムースさに関係している。完熟したブラッドオレンジ、スムースを感じやすくなる。 - 舌の裏側の風味を確認すること。
- 息を吸って吐くいた後の風味を確認すること。
シグネシャービバレッジ
コンセプト
2010年にオックスフォード大学の研究にあった音楽とテイストの関連性を応用し、触覚、視覚に加えて聴覚を加えてドリンクのテイストの変化が体験できるドリンクを作成。
コーヒーの2つの側面:イキイキとした印象度とマウスフィールをハイライトする。
エスプレッソ
- 粉量: 19 g
- 抽出量: 38 g
- 抽出温度:26 秒
- 抽出後、8℃で冷やす。
材料1:新鮮なグレープフルーツオイル 0・5 ml
- ホットウォーターバスで4時間60度でスゥヴィー。
- グレープフルーツの皮:グリセリン=2:1の割合
- イキイキとした印象度の高いグレープフルーツの風味とコーティングされたようなマウスフィールをもたらす。
材料2: 甘い新鮮なミルク1カップにつきバニラの鞘を1つ入れて48時間乳酸発酵させたもの 12.5 g
- クリーミーなマウスフィールをもたらし、オレンジの風味とバランスがとれる。
材料3: サウンドトラック
- 低いピッチと高いピッチの音楽を用意。
- 低いピッチの音楽はマウスフィールを強調する。
- 高いピッチの音楽は、生き生きとした印象度を上げる。
シグネチャービバレッジの工程
- エスプレッソに材料1,2を混ぜる。
- ステンレスノアイスロックを入れる。
- 窒素充填機で窒素を注入する。
- ヘッドホンをセットしたテーブルにて提供。
- 4名のジャッジを2名ずつに分ける。
テーブルセットA
- 2名を案内。
- 木製プレート、重厚なロックグラス。そして低いピッチの音楽。
→マウスフィールを強調する。
テーブルセットAのディスクリプタ
- クリーミーで重厚なマウスフィール
- ダークチョコレート
- バニラムース
- 80%ダークチョコレートオレンジキャンディバーでフィニッシュ
テーブルセットB
- 他の2名を案内。
- 明るい色、スパークリングな表面、繊細なワイングラス。そして高いピッチの音楽。
→生き生きとした印象度を強調する。
テーブルセットBのディスクリプタ
- オレンジの花のアロマ
- 生き生きとしたジューシーなマウスフィール
- ライトボディ
- ファンタのようなオレンジソーダ
- スパークリングでフィニッシュ
インストラクション
- ヘッドホンをつけること。
- 飲む前に3回はスワリングすること。
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