2018年6月、オランダはアムステルダムにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)において、7位になったオーストラリア代表のクレイグ・サイモン(Craig Simon)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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クレイグ・サイモン バリスタは、2012年から2015年まで自身の会社シンクタンクコーヒー(Think Tank Coffee)を運営していました。現在は2007年から所属しているVeneziano Coffee Roastersにてコーヒーアンバサダーを務めています。
WBCは3度目の挑戦で、WBC 2012では20位、WBC 2014では4位でした。
今回のプレゼンでは、ワイン業界の演繹(えんえき)的なテイスティングシステムをコーヒーに応用して、オリジン、品種、農園、プロセス、焙煎を即座に理解する方法を提案しています。
WBC 2018 – クレイグ・サイモン-7位プレゼン動画
※ワールドバリスタチャンピオンシップ2018の詳しい動画視聴方法はコチラをご確認ください。
WBC 2018 -クレイグ・サイモン-7位プレゼン概要
使用コーヒー1:コロンビア・ラ パルマ イ エル トゥカン・ゲイシャ・ナチュラル
- 国:コロンビア
- 生産者:フェリペ・サルディ(Felipe Sardi)
- 地域:クンディナマルカ県(Cundinamarca)
- 農園:ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン(La Palma y El Tucan)(以下ラ パルマ)
- 品種:ゲイシャ
- プロセス:ナチュラル
使用コーヒー2:エチオピア・ゲシャビレッジ・ゲイシャ・ナチュラル
- 国:エチオピア
- 地域:ベンチ・マジ地方(Bench Maji)
- 村:ゲシャビレッジ
- 品種:ゲイシャ
- プロセス:ナチュラル
コーヒーのテイスティングマトリックス
オリジン、品種、農園、プロセス、焙煎を即座に理解する方法を提案。
ワイン業界の演繹(えんえき)的なテイスティングシステムから、コーヒーのテイスティングマトリックスを考案。
ワインのテイスティングシステムは、ワインの原産地と品質から何を飲んでいるかがわかるシステム。
このシステムは、ワインにおいて次の3点を即座に特定することができる。
- 一次的なフレーバー:品種とテロワール
- 二次的なフレーバー:ワインを作る過程のプロセス
- 炭化したフレーバー:エイジング
コーヒーに応用することで、コーヒードリンクが最終製品として誰にでもわかる共通言語で認知できるようになり、バリスタもソムリエのように、よりプロフェッショナルな方法で消費者を喜ばせることができる。
一次的なフレーバーについて
- コーヒーの品種とテロワールに影響される。
- そして、気温もフレーバープロファイルに多大な影響をもたらす。
- 成長の過程でクエン酸とリンゴ酸が生成され、この期間が長ければ長いほどより酸が生成される。
- それぞれの酸の生成量の違いはフレーバーに影響する。
- 例えば、コロンビア・ラ パルマのゲイシャ種のコーヒーは一次的なフレーバーとしてイエローフルーツがある。
エスプレッソとミルクビバレッジで異なるコーヒーを使用するが、同じ品種であり、どちらの農園も同じ17℃という平均気温のため、一次的なフレーバーはとても似ている。
二次的なフレーバーについて
- 二次的なフレーバーはプロセスの間に生成される乳酸や酢酸などに影響を受ける。
- 二次的なフレーバーは一次の段階のものとは異なり、一次の段階でそのフレーバーを作ることはできない。
二次的なフレーバーは2種類のコーヒー豆で少し異なる。
ゲシャビレッジは30日間レイズドベッドで日光のみで乾燥させるのに対し、ラ パルマは27日レイズドベッドとビニールハウスでのメカニカルドライヤーを併用している。
ゲシャビレッジのゲイシャはより日光を受けているのに対し、ラパルマのゲイシャはビニールハウスでミストのように覆われる。ゲシャビレッジのゲイシャは、二次的なフレーバーとしてオレンジの風味が生成されている。
炭化したフレーバーについて
- 最後に、ロースターによって生成される炭化したフレーバーは、メイラード反応と糖のカラメル化によるフレーバー。
- これら3要素を把握することで、即座にコーヒーのたくさんのことを把握することができる。
- 三次的なフレーバーである炭化したフレーバーは意図的に似るように焙煎プロファイルを調整。
焙煎について
- 焙煎温度:202.3℃
- 焙煎時間:11分30秒
- 一次、二次で生成されたフレーバーを補完するように焙煎。
- タフィーのような炭化したフレーバーをもたらす。
WBC 2018 -クレイグ・サイモン-7位プレゼンの流れ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
エスプレッソコース
レシピ
- コロンビア・ラ パルマのゲイシャ種を使用。
- 粉量: 21.5 g
- 抽出量: 46 g
- 抽出温度:23秒
ディスクリプタ
- トロピカルフルーツのアロマ
1口目:
- 一次的なフレーバー:ライム、グレープフルーツ
- 二次的なフレーバー:アプリコット
- 炭化したフレーバー:トフィー
2口目:
- 甘み:中程度より上
- 酸:中程度より上の
- 苦み:中程度
- ミディアムウェイト
- ベルベット
- 長く続くフィニッシュ
- インテンシティも複雑さも高い
インストラクション
- 3回かき混ぜた後、すぐにアロマを確認すること。
- その後2口飲み、エスプレッソをそれぞれ10秒間口の中に留めておくこと。
- 1口目はフレーバーに、2口目はストラクチャー(バランスとタクタイル)に意識を向けること。
ミルクビバレッジ
レシピ
- ゲシャビレッジ・ゲイシャ・ナチュラルを使用。
- 粉量: 22.5 g
- 抽出量: 38 g
- 抽出時間:26秒
- ミルク:125 ml
- カップサイズ: 145 ml
ディスクリプタ
- 1次的なフレーバー:オレンジ、ピーチ
- 炭化したフレーバー:70%ダークチョコレート
インストラクション
- ストロー(太めの)を使用して一口目を飲むこと。
- 2口目は通常通りカップのフチから飲むこと。
ストローついて
- ミルクのPh、バッファ、クエン酸、リンゴ酸はカップのフチから感じるのは難しい。
- 炭化したフレーバーとクレマ、油分はカップのトップにくるため、フチから飲むことで感じることができる。
シグネシャービバレッジ
- 演繹的なテイスティングは感じ取ったフレーバーとオリジンの源を論理的に結合させる。このロジックはワイン業界に存在するため、ワインのような創作ドリンクを考案。
- ラ パルマのゲイシャのコーヒーを使用し、エスプレッソのフレーバーをそのまま残しながら、若いオーク樽熟成のシャルドネのようなドリンクを作成する。
- このロジックをコーヒーへ応用することでどのようなことができるのかをデモンストレーションする。
エスプレッソ 6ショット
- コロンビア・ラ パルマ イ エル トゥカンのゲイシャ種を使用。
- 粉量: 22.5 g
- 抽出量: 48 g
- 抽出時間: 23秒
材料1:ノンアルコール ホワイト(品種)グレープジュース 50 ml
- ジューシーさを加えるため。
材料2: 炭化したフレンチオーク材 4 g
- かすかなバニラの風味をもたらす。
- ビクトリア州南部にあるオーストラリア屈指のワイン産地のヤラバレー(Yarra Valley)から若いフレンチオーク樽のもの。
材料3: ZnO(酸化亜鉛)0.1 gを加えた純水 20 ml
- ミネラルを加えるため。
材料4:ニワトコの実(elderberry ) 3 g
- ジューシーなテクスチャーと甘みをもたらす。
シグネチャービバレッジの工程
- 冷たいエスプレッソをドリンク用のウォーターバスの中へ入れて14℃で冷やす。
- 材料1,2,3,4を窒素充填機に入れて、6分間窒素充填して素早くアロマとフレーバをグレープジュースの中へ移す。
- ドリンク用のウォーターバスの中で冷やす。
- 冷やしたエスプレッソに加えて14℃で提供。
ディスクリプタ
- アロマ:トロピカルフルーツ
1口目:
- 一次的なフレーバー:ライム、グレイプフルーツ、パイナップル、ピーチ
→シトラスとトロピカルフルーツは涼しい気候と品種からくるもの。 - 二次的なフレーバー:かすかなバニラ
→フレンチオークのもので、軽くオーク樽で熟成されたシャルドネを想起させる。
2口目:
- 甘み中程度より上
- 酸:中程度
- 苦み:低度
- ミディアムウェイト
- ミネラルを含んだジューシーなテクスチャー、長く続くフィニッシュ
- アロマとフレーバーのインテンシティも複雑さも高い
インストラクション
- 指示するまで手渡したグラスを持っておくこと。
- アロマをかぐ前にグラスをスワリングすること。
- 2口飲み、エスプレッソをそれぞれ10秒間口の中に留めておくこと。
- 1口目はフレーバー、2口目はストラクチャーに意識を向けること。
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