2016年ダブリンにて開催されたワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC) にて11位に入賞した香港代表ドーン・チャン(DAWN CHAN)バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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ドーン・チャンバリスタは、WBC2016当時は、カポ・チウ バリスタが経営するカッピングルーム(The Cupping Room)で働かれていました。
プレゼンテーションでは、昨年同様コロンビア・セロ アズール・ウォッシュト・ゲイシャのコーヒー豆を使用しています。
記憶に残るコーヒー体験をお客様に提供するためには、プロ意識のあるバリスタが必要不可欠な存在であり、プレゼンテーションを通じてそのことを証明しています。それに加えて、消費者の反応をコーヒー生産者にフィードバックし、コーヒー生産者から新たなオリジンの情報を得るというコミュニケーションのループを築くことが、本当の意味でのサステイナビリティを確保することになると説明しています。それには長い期間繋がり続ける関係性が必要であり、ドーン・チャンバリスタとセロ アズール農園生産者との間で長く、信頼のおける関係を築けていることを意味しています。
シグネシャービバレッジでは、かなりハイレベルなことをされており、動画を何度か見返さないと、その複雑なルーティンを理解することが難しいかもしれません。
4つの副材料をそれぞれ5g、10g、15gずつ用意します。副材料には、冷間圧縮したグレープジュース、発酵させたキュウリのジュース、ハイビスカスの紅茶、カモミールティーを使用しています。
エスプレッソコースとミルクコースの後に、評価に関係しないテイスティングエクササイズを取り入れています。このテイスティングエクササイズはジャッジの好みが関係しており、それに応じてシグネシャービバレッジに使用する副材料の分量が変える、つまり風味も変わるドリンクを作成しています。
テイスティングエクササイズを通してコミュニケーションのループを築き、その結果を取り入れたドリンクを提供することで、バリスタの高等技術なしでは成しえないフロム シード トゥ カップ(from seed to cup)を表現しています。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016, 11位 –
ドーン・チャンプレゼン概要
使用コーヒー:コロンビア・セロ アズール・ウォッシュト・ゲイシャ
コロンビア・セロ アズール・ウォッシュト・ゲイシャの基本情報
- 国:コロンビア
- 地域:バジェ・デル・カウカ県トルヒージョ(Trujillo, Valle del Cauca)
- 農園:セロ アズール(セロ・アスール、Cerro Azul)
- 品種:ゲイシャ
- プロセス:ウォッシュト
- 生産者:カフェ・グランハ・ラ・エスペランサ(Café Granja La Esperanza)
- 標高:1700m~1900m
- 収穫年:2016年
- ロット:セロ アズール農園の最も標高が高い位置で栽培されているロット。
→ゲイシャが最もポテンシャルを発揮する標高で、より甘く、クリーンで、複雑なフレーバーをもたらす。
セロ アズール農園について
- セロ アズール農園の最初のクロップは2009年。
- 生産者オーナーのドン・リゴベルト(Don Rigobert)は、複数農園を持っており、セロ アズール農園はその一つ。
- セロ アズール農園のゲイシャの最初の収穫は2009年。
- パナマに契約して運営していたラ カルレイダ農園(La Carleida)が2008年にベスト・オブ・パナマを受賞した。
- セロ アズール農園の独特のマイクロクライメイトを見て、ドン・リゴはゲイシャに最適な土地と考えた。
- 異なるプロセス、品種を積極的に実験している。
- ナチュラルプロセスとハニープロセス用に新しいアフリカンベッドを導入。
- ウォッシュトプロセス用に新しい発酵タンクとサイロを導入。
- 2016年ロットでは、パルパーにかけた後、20%の果肉をつけたまま約40度で15時間から18時間かけてサイロにて乾燥させている。
→セロ アズール・ゲイシャのベストなフレーバーをもたらす。
セロ アズール農園との関わり
- 2014年に初めてセロ アズールのコーヒーに出会う。
- 焙煎業者Sweet Bloom Coffee Roastersを通して、受賞後すぐに農園オーナーのドン・リゴとコンタクトをとる機会に恵まれ、新しい土地でどのように新たな品種を栽培しているのかについて、コミュニケーションすることができた。
- 生産者、ロースターとの関係がずっと継続・拡大している。
- お客様の嗜好をフィードバックし、生産者ドン・リゴはさらなる実験を試みるというコミュニケーションのループを築いた。
- コンスタントにコミュニケーションを取ることと長い期間関係を続けることで、本当の意味でのサステイナビリティが確保される。
バリスタの役割について
- バリスタには、フロム シード トゥ カップ(from seed to cup)をより深く理解するために、コーヒーが生産されたオリジンを訪れてより多くのコーヒーの情報を調べる者もいる。
- バリスタには、研究施設と協働し、より細部の情報に焦点を当てることで、コーヒーの世界に影響を及ぼす者もいる。
- そしてバリスタには、ドーン・チャンバリスタのように、毎日コーヒーショップで働き、コーヒーを作ってお客様に提供することで、最良の経験を与えている者もいる。このバリスタであることに大変誇りを持っており、コーヒー生産者とロースターと共に働き、フロム シード トゥ カップを世界中のお客様、コーヒー愛好家に表現している。
- バリスタは、ただコーヒーを提供するだけの立場ではない。
- 記憶に残るコーヒー体験を提供するために、いかにバリスタが影響するのかをプレゼンする。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2016, 11位 –
ドーン・チャンプレゼンの流れ
- シグニチャービバレッジ用のエスプレッソを抽出
- ミルクビバレッジ
- エスプレッソコース
- シグネシャービバレッジ
ミルクビバレッジ
ミルクビバレッジのレシピ
- エスプレッソ:ミルク=1:3の比率
→繊細さと甘みを強調。
ミルクビバレッジのフレーバー
- 新鮮な白桃
- ピーチグミ
ミルクビバレッジでのテイスティングエクササイズ
- ミルクコースの評価後、評価とは無関係で、ジャッジに個人的に楽しんでもらうために以下のテイスティングエクササイズの提案をする。
- 黒色のカップ(冷間圧縮したグレープジュース)と白色のカップ(発酵させたキュウリのジュース)を用意する。
- 伝統的なミルクビバレッジの風味であるミルクチョコレートの風味を楽しみたい場合は、黒いカップを選び、一口飲んでからミルクビバレッジを飲むこと。
- リフレッシングで軽やかな、ドーン・チャン・ バリスタが個人的に最初に体験したセロ アズールの風味を楽しみたい場合は、白いカップを選択し、一口飲んでからミルクビバレッジを飲むこと。
- どちらか一つだけを選択すること。
- 蓋を金色の置き場に置くこと。
エスプレッソコース
エスプレッソコースのレシピ
- 粉量:20 g
- 抽出量:50 g
エスプレッソコースのフレーバー/タクタイル
- タンジェリンの酸
- レモングラスティー
- 少しシルキーボディ、心地の良い苦み、長く続くティーでフィニッシュ
エスプレッソコースでのテイスティングエクササイズ
- エスプレッソコースの評価後、評価とは無関係で、ジャッジに個人的に楽しんでもらうために以下のテイスティングエクササイズの提案をする。
- 黒色のカップ(ハイビスカスの紅茶)と白色のカップ(カモミールティー)を用意する。
- セロ アズール・ゲイシャはウォッシュトの他にナチュラルプロセスとハニープロセスを行っている。
- セロ アズール・ゲイシャのナチュラルプロセスで感じるダークチェリーの風味を楽しみたい場合は、黒いカップを選び、一口飲んでからエスプレッソを飲むこと。
(※セミファイナルのプレゼン動画ではハニープロセスと明確に言っていますが、プレゼン趣旨から察するにナチュラルプロセスだと思われます。また予選ではナチュラルとハニーでした。) - セロ アズール・ゲイシャのハニープロセスで感じるリフレッシングで明るく、クリーンな風味を楽しみたい場合は、白いカップを選択し、一口飲んでからミルクビバレッジを飲むこと。
- どちらか一つだけを選択すること。
- 蓋を黒色の置き場に置くこと。
シグネシャービバレッジ
シグネチャービバレッジのコンセプト
- エスプレッソコースとミルクコースで体験したテイスティングエクササイズでジャッジが選んだ結果を下にシグニチャービバレッジを作成する。
- 副材料は、全てセロ アズール・ゲイシャのエスプレッソに感じる風味。
- ミルクビバレッジでのテイスティングエクササイズの結果は、黒いカップ:白いカップ=2人:2人(※動画では、黒いカップ:白いカップ=1人:3人のように見えます。)
- エスプレッソコースでのテイスティングエクササイズの結果は、黒いカップ:白いカップ=1人:3人(※動画では、黒いカップ:白いカップ=3人:1人のように見えます。)
テイスティングエクササイズの材料
- ミルクビバレッジの黒いカップには、冷間圧縮したグレープジュースが入っていた。
- ミルクビバレッジの白いカップには、発酵させたキュウリのジュースが入っていた。
- エスプレッソコースの黒いカップには、ハイビスカスの紅茶が入っていた。
- エスプレッソコースの白いカップには、カモミールティーが入っていた。
エスプレッソ 4ショット
- ミルクコースの前に抽出し、クールダウンさせる。
材料1:冷間圧縮したグレープジュース 10g
- ミルクビバレッジの黒いカップに入っていたもの。
材料2:発酵させたキュウリのジュース 10g
- ミルクビバレッジの白いカップに入っていたもの。
- 48時間発酵させたもの。
- 材料1と材料2で合計20gになるように使用する。
材料3:ハイビスカスの紅茶 5g
- エスプレッソコースの黒いカップに入っていたもの。
- 茶葉1に対し、お湯10で4分浸漬したもの。
材料4:カモミールティー 15g
- エスプレッソコースの白いカップに入っていたもの。
- 茶葉1に対し、お湯10で4分浸漬したもの。
- 材料3と材料4で合計20gになるように使用する。
シグネチャービバレッジの工程
- ミルクビバレッジでのテイスティングエクササイズの結果から、材料1と2を1:1の割合で加える。
- エスプレッソコースでのテイスティングエクササイズの結果から、材料3と4を1:3の割合で加える。
- エスプレッソを加える。
- 密閉し二酸化炭素を加え、シェイクする。
→少し冷たいドリンクとなる。
シグネチャービバレッジのフレーバー
- 1口目:スパークリング、グレープフルーツ、チョコレート, キュウリ, ハイビスカス, カモミール,
シグネチャービバレッジの補足
予選では、それぞれのテイスティングエクササイズにおいて、ジャッジが半々ずつ選んでいました。そのため、全ての副材料を1:1の割合で作成していました。つまり、全ての副材料を10g使用していました。テーブルセッティングの金色と黒色のコースターのような置き場にジャッジが選んだカップの蓋を置いてもらうことで、その蓋もテーブルセッティングの一部になり、シグネシャービバレッジのときにお互い何を選んだのか見てわかるようになるのだと思います。しかし、セミファイナルでは蓋が回収されてしまっていたので、少し混乱が生じたのかもしれません。
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