2017年11月に韓国ソウルにてワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)が開催されました。
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毎年最先端のコーヒーに関する知識やエスプレッソの抽出における新たな手法がたくさん見られるワールドバリスタチャンピオンシップで、2017年のトレンドとも言える手法が見られました。
セミファイナリスト全16名のうち5名(約30%)のバリスタが様々な方法でコーヒー豆を冷却してからグラインドしています。
この結果に影響を及ぼしたのは、2016年にクリストファー・ヘンドン氏によって発表された研究論文です。
研究論文を端的にまとめると、コーヒー豆を冷やしてから挽くことで、コーヒー粉は粒子径の分布が狭くなり、細かな粒子が揃うことで、同量のコーヒーでも多くのフレーバーを抽出できると同時に、冷やしていないコーヒー豆と比較してより多くの抽出量を確保できるようになると結論づけています。
先だって開催された2017年9月のジャパンバリスタチャンピオンシップでもウニールの山本知子バリスタとサザコーヒーの飯高 亘バリスタがコーヒー豆を冷却してからグラインドする手法が見られました。
このトレンド手法とも言える挽く前に冷却したコーヒー豆を使用したプレゼンテーションを使用した冷却媒体別にまとめてご紹介します。
液体窒素(沸点:-196度)を使用したプレゼンテーション
挽く前に液体窒素をコーヒー豆に注ぎ、粗めにグラインドし、さらにその粉に液体窒素を注いでグラインドするという新たな手法「ダブルグラインド」を考案しています。
ミルクビバレッジで、二重にしたトレイにコーヒー豆の入ったステンレスの容器を置き、トレイに液体窒素50gを注ぎ入れて30秒放置し、急冷させています。
ドライアイス(沸点:-79度)を使用したプレゼンテーション
- オーストラリア代表 ヒュー・ケリーバリスタのワールドバリスタチャンピオンシップ2017-5位プレゼン
- アメリカ代表 カイル・ラメージバリスタのワールドバリスタチャンピオンシップ2017-6位プレゼン
- サザコーヒー 飯高 亘バリスタのジャパンバリスタチャンピオンシップ2017-5位プレゼン
ショックフリーザ(ー-25度)を使用してプレゼンテーション
フランチェスコ・マシューロバリスタのワールドバリスタチャンピオンシップ2017-11位プレゼン
冷蔵庫(6度)を使用したプレゼンテーション
ギリシャ代表 コンスタンティノス・イアトリディスバリスタのワールドバリスタチャンピオンシップ2017-13位プレゼン
おまけ1:液体窒素を使用する場合は、十分ご注意を。
クリストファー・ヘンドン氏によって発表された研究論文の実験温度は、液体窒素の沸点である-196度、ドライアイスの沸点である-79度、フリーザーは-19度、室温は20度です。
上述の通り、昨今液体窒素を使用したプレゼンテーションを世界でも日本でも見かけるようになりました。
しかし、特に液体窒素の取り扱いには十分な注意が必要です。
お味噌汁が突然大爆発したというニュースが一昔前に話題になっていました。
これは突沸によるものです。
突沸とは、沸点以上に熱してもその液体が過熱状態で沸騰せず、さらに過熱した場合に爆発するように沸騰する現象のことです。
お味噌汁の場合は、混ぜずにゆっくり火を通し続けると危ないということです。
この突沸は、液体窒素に常温の食べ物などを入れても起こります。
液体窒素は、その他にも気化することで、莫大な体積になりますので、窒息に気を付ける必要もあります。
また、バリスタの大会では、ステンレス製の容器に入れて使用することが多いと思います。
その場合、その断熱容器で保管する際に完全に密閉してしまい、爆発するということもあります。
断熱容器は完全に外気をシャットダウンできるものではないため、中の液体窒素が暖められて常に液体窒素が蒸発している状態となります。
密閉されていると、その気体の増加の影響で保管容器内の圧力が高まり、爆発してしまうことがあります。
先進した技術を試す場合は、必ず専門家に相談して使用することをおすすめします。くれぐれもお怪我のないように。
おまけ2:液体水素に期待
昨今産業界で話題にのぼっているのが、液体水素です。
液体水素は将来の大量水素導入を想定した水素社会のエネルギー媒体として期待されています。
現在では液体水素は、ロケット燃料、宇宙船用電池、家庭用燃料電池、燃料電池自動車など多肢に渡る活躍をしています。
しかし、クリストファー・ヘンドン氏によって発表された研究論文では液体水素温度の実験はされておりません。
液体水素の沸点は、-252.6度であり、実験された以上に温度が低いのが特徴です。
絶対零度の-273.15度と約20度程度しか変わらず、この温度まで感度のある温度センサーの素子を開発することがそもそもの課題であり、まだまだ一般普及するには開発途中だと思われます。
逆に言えば、近い将来新たな技術革新が起き、さらにスペシャルティコーヒーの世界を広げてくれる可能性があるということです。
今後どのようなシナジーが生まれるのか非常に楽しみです。
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