2017年のジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC) にて4位に入賞した山本 知子バリスタ(株式会社ヒサシヤマモトコーヒー、ウニール阪急梅田店)のプレゼンテーションを紹介します。
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「バリスタはコーヒーの声である。」
今年農園を訪れて言われた言葉だそうです。コーヒーは話せない、その声を聞いて伝えられるのがバリスタであると語られていました。
プレゼンテーションでは、スペシャルティコーヒーがいかに多様性に富んでいるかを示す2種類のコーヒー豆を使用しています。
その2種類のコーヒー豆は、品種も標高も同じで、ともに収穫が始まった時期も同じです。さらに栽培地もとても近くに位置している農園のコーヒー豆です。
バリスタがそのコーヒーに何を感じ、どうしたいかによって、いかにコーヒーの表情が変化するかを説明しています。
ミクルビバレッジでは、コーヒー豆を挽く直前に液体窒素で急冷する手法が取り入れられています。
ジャパンバリスタチャンピオンシップ 2017, 4位
山本 知子-プレゼン動画
残念ながら動画が削除されておりました。
また確認できたらご紹介します。
ジャパンバリスタチャンピオンシップ 2017, 4位
山本 知子-プレゼン概要
2種類のコーヒー豆(コスタリカ・ラ・パストラ農園とコスタリカ・コペイ農園)を使用。
品種も標高も同じ、そして農園の距離もとても近くに位置する。ともに収穫が始まって4年目のもの。
使用コーヒー1:コスタリカ・ラ・パストラ農園
コスタリカ・ラ・パストラ農園の基本情報
- 国:コスタリカ
- 農園:ラ・パストラ
- 品種:ゲイシャ種
- マイクロミルのオーナー:エドガー
- プロセス:ナチュラル(※エドガーによって工夫を凝らしたナチュラルプロセスが行われている。)
- 標高:1900m
- 収穫が始まってから4年目のもの
- エイジング:5日目
- 焙煎:213度、浅めに優しく仕上げる。
- エスプレッソコースとシグネシャービバレッジのエスプレッソで使用。
ゲイシャ種のポテンシャルを引き出せる最適な環境
- 豊富なシェードツリーがある。
- 谷間の土壌で湿度が確保される。
- 肥沃な土壌がある。
マイクロミルのオーナーエドガーによるナチュラルプロセスについて
乾燥工程は、サルバド・ドライプロセスとウニフィカードドライの二段階に分けられる。
サルバド・ドライ・プロセスについて
- 最初の乾燥工程をサルバド・ドライ・プロセス(Salvad Dry process)と呼ぶ。
- サルバドとは、救出するという意味で、コーヒー豆が発酵する前に救い出すイメージ。
- 乾燥工程1日目から3日目までのプロセスのこと。
- この工程にて、ゲイシャ種のフレーバーを引き出す。
- アフリカンベッドの上でコーヒー豆を重ねなることのないように、1層の状態にする。
- 30分置きに小まめに撹拌する。
→クリーンさと爽やかさが残る。
ウニフィカード・ドライ・プロセスについて
- 次の乾燥工程をウニフィカード・ドライ・プロセス((Unificard Dry process)と呼ぶ。
- 乾燥工程4日目から20日目までのプロセスのこと。
- ウニフィカード・ドライ・プロセスは、エドガー氏と山本知子バリスタの共同によって名付けられたもの。
- この工程にて、ナチュラルプロセスのフレーバーを加える。
- アフリカンベッドの上で1層だったコーヒー豆を4層に重ねる。
- 最初の工程(サルバド・ドライ・プロセス)で引き出したゲイシャ種のフレーバーに、この工程(ウニフィカード・ドライ・プロセス)によってナチュラルプロセスのフレーバーを重ねていくイメージ。
使用コーヒー2:コスタリカ・コペイ農園
コスタリカ・コペイ農園の基本情報
- 国:コスタリカ
- 農園:コペイ
- 品種:ゲイシャ種
- プロセス:ブラックハニープロセス
- 標高:1900m
- 収穫4年目のもの
- エイジング:10日目
- 冷めたときの甘さと質感が特徴
- 焙煎:218度で13分と長めに仕上げる。
- ミルクビバレッジのエスプレッソで使用。
- 挽く直前に液体窒素で急冷して使用。
コスタリカ・コペイ農園の栽培環境について
- シェードツリーが小さい。
- 土地が乾燥している。
- 風も強い。
- 毎月、土を管理・分析することでコーヒーの品質を向上することに成功。
ブラックハニープロセスについて
- ビニールハウス内のアフリカンベッドで、コーヒー豆を5cm程度の厚さに重ね、乾燥工程3日間は撹拌することなく置いておく。
- 乾燥工程4日目から20日目は、撹拌作業を行い、ビニールハウスの開閉によって温度と湿度のコントロールをする。
→甘さと質感の向上につながる。
コーヒー豆を挽く直前に液体窒素で急冷させる
- 熱伝導の優れたステンレスの容器にコスタリカ・コペイ農園のコーヒー豆を入れておく。
- 二重にしたトレイにコーヒー豆の入ったステンレスの容器を置く。
- トレイに液体窒素50gを注ぎ入れて30秒放置し、急冷させる。
- 常温のコーヒー豆に比べて冷却したコーヒー豆は、挽いたときに粒度が揃う。
- 豆が冷えることで、豆が固くなり、粒度が揃いやすくなる。
- 粒度が揃うとフレーバーにフォーカスしやすくなる。
コーヒー豆を急冷させる3つのメリット
- 液体が冷えることで甘さを感じやすくなる
- コーヒーオイルが冷えることで質感が上がる
- 粒度が揃うことで狙ったフレーバーを出しやすくなる
JBC 2017, 4位 – 山本 知子バリスタのプレゼンの流れ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
- シグネシャービバレッジ
エスプレッソコース
エスプレッソは、素材の味がそのままに出るため、ポテンシャルを引き出すことを考える。
レシピ
- コスタリカ・ラ・パストラ農園のコーヒー豆を使用。
- 常温のコーヒー豆を使用。
- 粉量: 20g
- 抽出量: 40g
焙煎後のガス濃度と香りの強さの相関分析
- エスプレッソでコーヒー豆のポテンシャルを引き出すため実施。
- 焙煎後のガス濃度は、コーヒーの質感に関係する。
- 焙煎後の香りの強さはフレーバーに関係する。
- ガス濃度が減って、香りの強くなるクロスポイントを分析し、エイジング5日目のコーヒー豆を使用。
- もっとも甘さと爽やかな酸を感じることができる。
フレーバー
- オレンジ
- トロピカルフルーツ
- マンゴ-
タクタイル
- ミディアムボディ
- スムース
ミルクビバレッジ
ミルクビバレッジでは、コスタリカ・コペイ農園のコーヒーの最大の特徴である、冷めたときの甘さと質感にフォーカスする。
甘さと質感にフォーカスするためにした3つのこと
- 焙煎後のガス濃度と香りの強さの相関分析
→エスプレッソコースと同様、ガス濃度が減って、香りの強くなるクロスポイントを検証し、ベストのエイジング10日目のものを使用。 - 総量140㏄のカップを使用することで、甘さのバランスをとる。
- コーヒー豆を挽く前に液体窒素で急冷させる
→キャラメルのフレーバーがより強くなる。
レシピ
- コスタリカ・コペイ農園のコーヒー豆を使用。
- 液体窒素で急冷したものを使用。
- 総量:140㏄
フレーバー
- キャラメル
- ミルクチョコレート
- バニラ
シグネシャービバレッジ
コンセプト
- ウニフィカード・ドライ・プロセスとサルバド・ドライ・プロセスをイメージしたドリンク。
- コスタリカ・ラ・パストラ農園のコーヒー豆でコーヒーを抽出し、コスタリカ・コペイ農園から採取したカスカラを合わせたトロピカルなドリンク。
コスタリカ・ラ・パストラ農園の常温のコーヒー豆でエスプレッソ:2ショット
材料1:ガストリックソース:12g
- ウニフィカード・ドライ・プロセス(チェリーを重ねていく工程)をイメージしたもの
- コスタリカの純度の高いグラニュー糖:100g
- コスタリカ・タラス地区特有のテロワールをイメージしたリンゴ酢:20g
- 上記を合わせて火にかけて、メイラード反応を起こす。
- バレンシアオレンジの果汁を50g加える。→爽やかな酸が加えられる。
- その後4日間寝かせる。
材料2:ビターズ:2g
- コスタリカ・コペイ農園から採取したカスカラ:10g
- スパイス感を出すためクローブ: 6粒
- 水:100 g
- 上記を混ぜ合わせる。
- エスプーマに入れて炭酸ガスを注入し、2時間放置する。
→強い液体となる。 - その後、炭酸を抜くため一晩置く。
→クリアな質感になる。 - ドリンクに苦味と複雑さが加わる。
材料3:水出ししたコーヒー:50g
- コスタリカ・ラ・パストラ農園のコーヒー豆を3時間水出ししたもの。
- サルバド・ドライ・プロセスの爽やかさとクリーンさを表現。
シグネシャービバレッジの工程
- ピッチャーをステンレスのバケットに入れて、周りに液体窒素を流し込み、冷却する。
- 材料1の上にエスプレッソ抽出する。
- スプーンでかき混ぜ、ピッチャーに流し込む。
- 材料2,3を加える。
- そして液体窒素を加て急冷させる。
→ドリンクに一体感が生まれ、風味をドリンクに閉じ込めることができる。
フレーバー
- フローラル
- ピーチ
- トロピカルフルーツ
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