「美味しい」コーヒーが好きな人にとって深刻な問題となりつつある現象があります。
それが地球温暖化です。
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地球温暖化はコーヒーの世界にも多大な影響を及ぼしています。地球温暖化は、コーヒーの生産量が減らすだけでなく、特に「美味しい」コーヒーが飲めなくなってしまう可能性があります。
その問題の「地球温暖化」をテーマに、ディッタ・アルティジャナーレ(Ditta Artigianale)所属のフランチェスコ・マッシューロ(Francesco Masciullo)バリスタが2017年1月25日イタリアのリミニにて開催されたSIGEPというイタリアのバリスタ大会にてプレゼンテーションを行いました。そしてフランチェスコ・マッシューロバリスタはSIGEP2017にて優勝しました。
2017年11月に韓国ソウルにて開催予定のワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)にイタリア代表として出場します。
あと数日と迫ったWBCに先駆けてフランチェスコ・マッシューロバリスタがイタリアのバリスタ国内大会にて行った「地球温暖化への適応」をテーマにしたプレゼンテーションを紹介します。
フランチェスコ・マッシューロバリスタについて
フランチェスコ・マッシューロバリスタは、元々はディッタ・アルティジャナーレ(Ditta Artigianale)の創業者であるフランチェスコ・サナポ(Francesco Sanapo)氏の「コーヒーの作り方」についてのセミナーに出席したことがきっかけでコーヒーに魅了されたようです。
その後、バーテンダーを約3年勤め、スペシャルティコーヒーを学びにロンドンへ行きました。
2013年イタリアのフィレンツェに有名スペシャルティコーヒー専門のコーヒーバーディッタ・アルティジャナーレが設立されました。
フランチェスコ・マッシューロバリスタは、現在ディッタ・アルティジャナーレでヘッドバリスタとして日々高品質コーヒーを提供しています。
2017 SIGEP 優勝フランチェスコ・マッシューロバリスタプレゼン動画
2017 SIGEP 優勝フランチェスコ・マッシューロバリスタプレゼン概要
地球温暖化はコーヒーの世界にも多大な影響を及ぼしており、地球温暖化への適応策が必要。
地球温暖化への適応例として3種類のコーヒーを紹介。
そして、高品質でありながら、地球温暖化に適応するために、品種、技術、プロセスを考え抜く大切さをプレゼンする。
バリスタの役割は、絶えず最新の技術を取り入れ、コーヒーの持つポテンシャルを最大限に引き出し、最良のカップを提供すること。
しかし、もはやそれだけではなく、地球温暖化がコーヒー業界に深刻な影響を与えているため、バリスタは「何をお客様に提供するのか」についても責任を持つ必要があると説く。
2017 SIGEP 優勝フランチェスコ・マッシューロバリスタプレゼンの流れ
- シグネシャービバレッジ
- エスプレッソコース
- ミルクビバレッジ
1. シグネチャービバレッジ
使用コーヒー:ケニア・ニエリ・カグモイニ
- 国:ケニア
- 地域: ニエリ地区(Nyeri)
- 工場:カグモイニ(Kagumoini)コーヒーファクトリー
- 標高:2100 m
- 品種:SL28
- プロセス:ダブルウォッシュト
- 一口目:スムースな質感、ストロベリーの風味
- 二口目:ブルーベリーの風味、フローラルハニーの甘み、はじけるような柑橘系の酸味
「SL-28」は「干ばつ」と「高温」に強い
地球温暖化がもたらす「干ばつ」と「高温」への適応可能な品種「SL-28」の存在を紹介。
「SL-28」は「干ばつ」に非常に強いことで知られてる。
それに加えて際立った素晴らしい風味特性も持ち合わせている。
そして、「高温」の影響で、暖かくなった土壌がユニークな風味をもたらしたことを説明。
その素晴らしい風味を表現するために、5つの材料(レモン、ストロベリー、ハニー、ブルーベリー、炭酸ガス)を使用し、風味をハイライト。
材料
- エスプレッソ コーヒー18g、40g抽出。
- レモンを漬け込んだストロベリーを加熱して減水させたもの 10ml
- フローラルハニーを入れ、ブルーベリーを加熱して減水させたもの 10ml
- 炭酸ガス 8g
工程
材料2と材料3をサイフォンにて加熱して減水させる。
そこから各10mlずつ抽出し、エスプレッソと混ぜる。
リンゴ酸と柑橘系の風味は、材料2で強調。
複雑な甘みは、材料3で強調。
エスプーマスパークリング(CO2エスプーマ)を使用し、炭酸ガスを8g追加。
とてもクリーン、イキイキとしたスパークリング感、複雑な酸味、デリケートな甘み、そして、素晴らしいフローラルな風味、全ての風味特性をハイライトさせることができているとのこと。
ケニア式ダブルウォッシュトではじけるような複雑な酸味
このケニアのコーヒーは、俗にいうケニア式ダブルウォッシュトというプロセスで精選処理されている。
通常のフルウォッシュトは、果肉と外皮を取り除いた後、発酵槽で発酵され、洗浄して乾燥するのに対し、ケニア式のダブルウォッシュトは、乾燥前に再度水に漬けて、取り切れなかったミューシレージを洗い流す。
このプロセスがイキイキとした、はじけるような複雑な酸味につながっている。
2.エスプレッソコース
使用コーヒー:コロンビア ラ・パルマ イ エル トゥカン(Palma & Tucan)
- 国:コロンビア
- 地域: クンディナマルカ県(Cundinamarca)
- 農園:ラ・パルマ・イ・エル・トゥカン(La Palma y El Tucan)
- 標高:1800m
- 品種:SL28
- プロセス:アナエロビック-ナチュラル
- 一口目:ストロベリー、ピーチ、プラムの風味
- 二口目:マジパンの甘み
ケニアのコーヒーと同じ品種「SL 28」
2012年に植えたそうですが、この「SL 28」は元々Scott Laboratoriesがケニアの風土に合った(干ばつに耐えうるような)環境でも美味しいコーヒーが育つように開発された品種。
「SL 28」は、コロンビアのように、継続的に雨が降るような湿度の高い環境にはあまり植えられない品種。
しかし、ケニアとは全く異なる風味特性で素晴らしいものができた。
その理由が、テロワールとプロセスとのこと。
エルニーニョ現象で「高温」と「干ばつ」
コロンビアでは、エルニーニョ現象にとって高い温度での栽培条件となります。
フランチェスコ・マッシューロバリスタいわく、エルニーニョ現象は地球温暖化によって引き起こされているもの。
このエルニーニョ現象によって、このコーヒーの栽培地であるコロンビアも高温と干ばつと戦っている現状がある。
(※日本の気象庁はエルニーニョ現象と地球温暖化を明確に結び付けることはできないと断言を避けています。)
異なるテロワールが、全く異なる風味特性をもたらす
「SL 28」はケニアの風土に合うように開発されたが、全く別のコロンビアという地で全く異なるテロワールの中で育つことで、全く異なる風味特性を得た。
異なるプロセスが、全く異なる風味特性をもたらす
アナエロビック-ナチュラルプロセス
- コーヒーチェリーをステインレス製のコンテナに38時間浸漬
→乳酸発酵を促進させ、シルキーで丸みのある質感になる。
- 室温と温度を徹底管理できるプランテーションへ移動させる。
→甘み、クリーンなカップになる。
インストラクション
- 少なくとも10回スプーンでかき混ぜてから飲む。
3.ミルクビバレッジ
エスプレッソコースで使用したSL28のコロンビアコーヒーは例外的な結果で、実は、地球温暖化の悪影響でどんどんコーヒーを育てることは難しくなってきている。
その地球温暖化の一つの結果に、森林破壊がある。
なぜなら、気温が上がってしまっているがゆえに、より良いコンディションをみつけるためには、生産者はコーヒーをより高い標高へ移動して育てなければならない。
そして、その「高い標高へ移動していく」というのは、正しい解決方法ではないと主張。
そして、以下のコーヒーを紹介。
使用コーヒー:コスタリカ・フィンカ・エル・ディアマンテ
- 国:コスタリカ
- 地域: West Valley
- 農園:フィンカ・エル・ディアマンテ(Finca el diamante)
- 標高:1400m
- 品種:カツーラ
- プロセス:アナエロビック-ハニー
- アロマ:香り高いシナモン
- 風味:バター、キャラメルクッキー
低い標高でも素晴らしい風味特性のコーヒーができる好例である。
その最もキーポイントとなっているのが、プロセスとのこと。
ユニークなプロセスであるAnaerobic honey process
- パーチメントの状態でステインレス製タンクに20時間浸漬
- 全てのミューシレージに加えて、20%多く他からとれたミューシレージを追加して浸漬
- 4日間、アフリカンベッドで日光の下で乾燥
- その後18日間、日陰で乾燥
ミューシレージにはたくさんのフレーバーと糖分が含まれている。
ミューシレージを加えて発酵させることによって、より糖分がコーヒー豆に浸透する。
そして、カップにリッチさ、複雑さをもたらす。
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