2016年に開催されたジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC)にて優勝した鈴木 樹バリスタのプレゼンテーションを紹介します。
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鈴木 樹バリスタは、華やかなでクリーンな味わいをもつパナマのボケテ地区エルブーロ農園のゲイシャ種のコーヒー豆を使用しています。
ひとつのコーヒーを追求することで、新しい学びがあり、最高の体験をお客様に提供できるようになると語られています。
鈴木 樹バリスタのプレゼンテーションの主なポイントとして、以下の説明をされています。
- なぜ近年ゲイシャ種が脚光を浴びているのか
- ひとつのコーヒーを追求することで得られるものとは
- 華やかなでクリーンな味わいをもつコーヒーの風味に良くない影響を及ぼす過抽出について
- 過抽出を防ぐ方法について
JBC 2016 | 1位 | 鈴木 樹バリスタのプレゼンテーション概要
使用コーヒー : パナマ・エルブーロ・ゲイシャ
パナマ・エルブーロ・ゲイシャの基本情報
- 国:パナマ
- 地域:ボケテ
- 農園:エルブーロ
- 品種:ゲイシャ種
- オーナー:ウィルフォード・ラマストゥス
- プロセス:フーリーウォッシュト
- 標高:1750m
- 乾燥:パティオ
パナマ・エルブーロ農園について
- オーナーのウィルフォード氏はボケテ地区に3つの農園を所有している。
- それぞれの農園でゲイシャ種の栽培を行っている。
- 同じ地域、同じ標高、同じ品種であっても、マイクロ・クライメイトがそれぞれの農園で異なるため、全く異なるキャラクターのコーヒーが生まれる。
- その中でもパナマ・エルブーロ農園は、バル火山(Valcan Baru)の山頂付近南側に位置している。
- そのため、3つの農園の中でも最も華やかなコーヒーが生まれる。
- パナマ・エルブーロ農園では、ゲイシャの栽培が難しく、通常の品種に比べて約5倍近くが、苗床で枯れてしまう。
- 成長スピードが遅く、他の品種に比べて収穫量も少ないことが加わって、エルブーロ農園のゲイシャ種のコーヒー豆は希少となる。
- パナマ・エルブーロ・ゲイシャは、ゲイシャ種の特徴である甘さ、華やかなフレーバーだけでなく、構造的な酸、クリーンな味わいがある。
なぜ近年ゲイシャ種が、ひと際脚光を浴びているのか
- ゲイシャ種は品質が素晴らしいというだけでなく、エスプレッソでの抽出が難しくバリスタとしてやりがいがある。
- エスプレッソの抽出が難しいからこそ努力し、新たな発見があり、学ぶことができる。
- その新たな発見・学びから、お客様に新たな味わいの体験を提供できる。
ひとつのコーヒーの可能性を追求することで得られるものとは
- ひとつのコーヒーの可能性を突き詰めて考えることで新たな気付きを得ることができる。
- その可能性を見出す努力はそのひとつのコーヒーだけでなく、他のコーヒーにも応用でき、コーヒー全体の価値を引き上げることにつながる。
- ひとつのコーヒーの最高を追い求めることは、コーヒーから得られる最高の体験を追求することにつながる。
- その最高の体験からお客様にスペシャルティコーヒーの可能性の大きさをさらに感じてもらうことができる。
華やかなでクリーンな味わいをもつコーヒーの風味に良くない影響を及ぼす過抽出について
- 過抽出は品質に関わらず、すべてのエスプレッソに起こる。
- パナマ・エルブーロ・ゲイシャは、華やかなでクリーンな味わいをもつコーヒーである。
- 華やかなでクリーンな味わいをもつコーヒーは、過抽出のわずかな味わいでも強く影響を受けやすい。
- 過抽出の原因は、微粉によるもの。
- 微粉は、どんなに粒度分布の少ないグラインダーを使用しても必ず生成される。
- グラインド時に静電気が生じ、わずかな微粉が吸着され、そこから過抽出が生じる。
パナマ・エルブーロ・ゲイシャの華やかなフレーバーと酸と甘さがもっとも輝くポイントは、抽出量を多くとることで実現する。
ただ、抽出量を多く取るだけでは、過抽出のわずかな味わいが生じて、そのコーヒーのポテンシャルが表現できたとは言えないものとなる。
過抽出の対策について
- 300ミクロン以下の微粉を除去する必要がある。
- 微粉を除去できる装置を導入する。
- 微粉除去装置の中には、金属製のプロペラがあり、プロペラが回転することにより、300ミクロン以下の軽い微粉は舞い上げられる。
- 舞い上げられた微粉は、装置上部のスポンジ部分に付着させることで除去される。
JBC 2016 | 1位 | 鈴木 樹バリスタのプレゼンテーションの流れ
- シグニチャービバレッジ用のエスプレッソを抽出する。
- エスプレッソコース
- シグネチャービバレッジ用のコールドエスプレッソの作成
- ミクルビバレッジ
- シグネチャービバレッジ
エスプレッソコース
- Dose: 21 g
- Out: 48 g
- フレーバー1口目:パッションフルーツ、キャラメル
- フレーバー2口目:パパイヤ、チェリー
- タクタイル:ミディアムボディ、シロップ、スムース
- アフターテイスト:紅茶
- 焙煎:中煎り
- エイジング:7日目
- 微粉除去装置で300ミクロン以下の微粉を除去する。
- 間口の広いカップで抽出・提供する。
→そうすることで口の中に液体が広がりやすく、酸と甘さ、フレーバーがより鮮明になる。
- 飲む前にスプーンで5回底から混ぜる。
→液体が均一になり、よりフレーバーが鮮明になる。
ミルクビバレッジ
- Dose: 21 g
- Out: 48 g
- ミルクビバレッジでは、微粉はとらない。
→微粉はとらなくても、ミルクと合わせてフレーバーの明確さは出やすいため。
- 1カップのエスプレッソ量:24g
- ミルク量:100g
- ミルク温度:50度
→ミルクを100g、50度にすることで、フレーバーが鮮明になり、液体としてのバランスがとれる。
- フレーバー:カシューナッツ、キャラメル
- アフターテイスト:ミルクティー
→パナマ・エルブーロ・ゲイシャの華やかさにミルクの甘さが加わるとリッチで華やかなカシューナッツのようなフレーバーになる。
シグネチャービバレッジ
テーマ:シャルドネの白ワインをイメージしたドリンク
パナマ・エルブーロ・ゲイシャは、甘さ、華やかなフレーバーだけでなく、構造的な酸、クリーンな味わいがある。
パナマ・エルブーロ・ゲイシャと上質な味わいのシャルドネには以下の類似性がある
- 華やかなフレーバー
- 甘さ
- 構造的な酸
- クリーンカップ
材料
- エスプレッソ
- シリカ9を含む天然水の氷 40g
- ハチミツ乳酸シロップ 12g
- 山椒の水出し4 g
- コールドエスプレッソ 20ml
エスプレッソ
- Dose: 21g
- Out: 48g
- 冷やしておいたものを金属フィルターでクレマを濾す
→クリアな味わいにする
2. シリカ0.9 gを含む天然水の氷 40 g
- シリカは、触感に特徴のある天然のミネラル
- 上記に加えて急冷する。
→タクタイルを補う。
3. ハチミツ乳酸シロップ 12 g
- 乳酸2g
※乳酸は通常コーヒーには含まれない酸で、白ワインに多く含まれるもの。
→少量加えることで味わいの構造感が増す。
- ハチミツ8g
→乳酸にハチミツが加わることで白ブドウのようなフレーバーとなる。
山椒の水出し 4g
- 山椒1gを水100gで1時間抽出したもの。
→華やかなフレーバー、マンダリンオレンジの味わいを引き出す。
コールドエスプレッソ 20ml
→アップル、スパークリングな酸、味わいにスケール感をもたらす。
コールドエスプレッソの材料
完璧に300ミクロン以下の微粉を除去したコーヒー:8g
→この粒度のコントロールで、完璧に過抽出を防ぐことができる。
カスタムウォーター:100g
- カルシウム50ppmを添加
→甘さと引き出す。
- バッファー 50ppmを添加
→酸を調整
※バッファーは、コーヒー抽出時に酸を中和し、調整する働きがある。
炭酸カートリッジ:3本
→約8気圧この液体にかかる
コールドエスプレッソの工程
- 1,2,3の材料をエスプーマに入れて、8気圧の圧力をかける。
- ミルクビバレッジの前にここまでのプロセスを行い、5分放置する。
- 5分後にエスプーマの圧を抜く。
プロファイル
- フレーバー:白ブドウ、青りんご、マンダリンオレンジ
- アフターテイスト:キャラメル
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