日本人で唯一ワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)で優勝した経験のある井崎英典バリスタの2014年優勝した時のプレゼンテーションを紹介します。
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井崎英典バリスタは、元々彼の父が経営する福岡のハニー珈琲で16歳のときからコーヒーに携わってきました。その後、丸山珈琲へ入社し、ジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC)を2012年、2013年と2年連続で優勝しました。
現在は独立し、バリスタのコーチングなどをする会社、サムライコーヒーエクスペリエンス(Samurai Coffee Experience)を創立しています。
優勝後のワールドバリスタチャンピオンシップでは、毎回コメンテーターとして会場を盛り上げておられます。
井崎英典バリスタがコーヒー同年代の生産者であるエンリケ(Enrique)氏とともに、2年という時をかけてエスプレッソ用とカプチーノ用のコーヒーを作り上げたという内容です。
ことば、文化、そして距離という壁があったが、それを乗り越えるだけの「情熱」を持って取り組んだ結果、最良のエスプレッソを創りだすステップを真剣に学んだと語っています。
その「情熱」とは、お客様に最良のエスプレッソを提供したいという井崎バリスタの情熱と生産者エンリケ氏のコーヒー栽培に対する情熱なのだと思います。
井崎 英典バリスタと生産者エンリケ氏、どちらが欠けても作ることができなかった特別なコーヒーを紹介しています。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2014優勝
井崎英典-プレゼン概要
生産者とバリスタが協同してコーヒー生産
- 生産者エンリケはコスタリカ、タラス、モンテコペイマイクロミル、ラ・メサ農園の生産者である。
- 同年代であるエンリケがとても高品質なコーヒーを生産していたため、衝撃を受けたという。
- エンリケの作るコーヒーは、柑橘系の酸の美しい酸があった。しかし、エスプレッソにするには、酸が強すぎて、ボディが薄くバランスの欠いたものになってしまう。
- そこで、最終的にお客様に提供するバリスタという立場からどんなコーヒーがよいのか意見をエンリケにフィードバックすることでエスプレッソに適したバランスの良いコーヒーを作った。
- facebook, eメール、そしてコスタリカの現地に訪問してディスカッションを重ねて、導いた答えが、一緒にコーヒーを作ることだった。
- その結果が、「エスプレッソ フォーカスド コーヒー」と「カプチーノ フォーカスド コーヒー」
使用コーヒー1:エスプレッソ フォーカスド コーヒー
エスプレッソ フォーカスド コーヒーの基本情報
- 国:コスタリカ
- 地域:タラス
- マイクロミル:モンテ・コペイ
- 農園:ラ・メサ農園
- 生産者:エンリケ
- 品種:ティピカ
- 標高:1900m
- プロセス:レッドハニー
- スロー・ドライング(合計22日間)
エスプレッソ フォーカスド コーヒーの重要な4つのポイント
- 標高:標高1,900m
標高が高いことで、昼夜に急激な寒暖差が生まれ、それがコーヒーの実の熟成をゆっくりさせる。
そして、それが複雑な酸味をもたらす。 - 品種:ティピカ
モンテコペイの品種すべてをカッピングして、ラ・メサ農園のティピカは一番スムースなボディをもっている。 - プロセス:レッドハニー
レッドハニープロセス(80%のミューシレージを実に残して乾燥)が重厚な甘みをもたらす。
上記3点ではまだ酸が強かった。 - 乾燥:スロー・ドライング(合計22日間)
より甘みをもたらしバランス良いエスプレッソにするために、スロードライプロセスを導入。
このスロードライプロセスは、2日日光による乾燥でコーヒー豆の水分を蒸発させを、20日シェード下での乾燥をする。
→この工程が加わることで甘みが増し、最終的にバランスのよいコーヒーとなる。
使用コーヒー2:カプチーノ フォーカスド コーヒー
カプチーノ フォーカスド コーヒーの基本情報
- 国:コスタリカ
- 地域:タラス
- マイクロミル:モンテ・コペイ
- 農園:ラ・メサ農園
- 生産者:エンリケ
- 品種:レッド・カトゥーラ
- 標高:1900m
- プロセス:ナチュラル
- スロー・ドライイング(合計28日間)
- ミルクとの相性を考えて作られたコーヒー。
カプチーノフォーカスド コーヒーの重要な4つのポイント
- 標高:1,900m
エスプレッソフォーカスドコーヒーと同じく、標高が高いことで、昼夜に急激な寒暖差が生まれ、それがコーヒーの実の熟成をゆっくりさせる。
そして、それが複雑な酸味をもたらす。 - 品種:レッド・カトゥーラ
品種はカトゥーラを選択。カトゥーラは酸度が低く、ミューシレージが厚いことから濃厚な甘みをもたらす。 - プロセス:ナチュラル
ナチュラルを選択したのは、ベリーの風味をもたらし、それがミルクと合わさることで重厚感のある甘みに変化するため。 - 乾燥:スロー・ドライイング(合計28日間)
スロー・ドライイングは、エスプレッソ フォーカスド コーヒーより長い、28日間。これがさらなる甘みをもたらす。
ワールドバリスタチャンピオンシップ2014優勝
井崎英典-プレゼンの流れ
- エスプレッソコース(シグニチャービバレッジ用のエスプレッソを抽出)
- ミルクビバレッジ
- シグネシャービバレッジ
エスプレッソコース
レシピ
- エスプレッソ フォーカスド コーヒーを使用。
- 粉量:20g
- 抽出量43g
フレーバー・タクタイル
- きび砂糖の甘み
- スムースボディ
- オレンジの酸
- カカオの苦み
ミルクビバレッジ
レシピ
- カプチーノ フォーカスド コーヒーを使用。
- 粉量:23g
- 抽出量:40g
- ドースを3回に分けることで、ポルタフィルター内の濃度を上げ、濃厚な甘みを得る。
フレーバー・タクタイル
- セミスウィートチョコレート
- モルト
- ほんの少しのブラックベリー
シグネチャービバレッジ
コンセプト
- 期待を上回るエキサイティングなフレーバー体験を提供する。
- バリスタの仕事はただコーヒーを説明するだけでなく、お客様のコーヒーに対する期待を上回るエキサイティングなフレーバー体験を提供すること。
材料1:エスプレッソ フォーカスド コーヒー:4ショット
- プレゼン序盤に抽出した材料1をすぐにペーパーフィルターで濾し、クレマを取り除く。
→シトラスの酸がハイライトされる。
材料2:カプチーノフォーカスド コーヒー:2ショット
- 1ショットは加熱による減水を避ける。
- もう1ショットは加熱して減水させる。
→ココアの風味を引き上げ、ドリンク全体のバランスをよくする。
材料3:アップルシロップ:15g
- 新鮮なリンゴをリンゴの花の蜜に12時間漬け込んだもの。
- リンゴの酸とはちみつの甘みをもたらす。
- オリジナルのエスプレッソの風味を補完する。
材料4:ピーチネクター:11g
- 泡立ち始めるまで加熱することで、ピーチネクターの酸を強調する。
- カプチーノフォーカスド コーヒーに存在するベリーの風味をより明確にする。
- このベリーの風味がドリンクに複雑性をもたらす。
材料5:アイスキューブ
- 硬水の氷。
- 高いミネラル量により、ドリンクに重みを与え、フル・ラウンドボディになる。
シグネチャービバレッジの工程
- プレゼン序盤に抽出した材料1をペーパーフィルターで濾す。
- 材料3を加える。
- 材料4を泡立ち始めるまで加熱させる。
- 熱が収まってから、材料2を1ショット入れる。
→加熱による減水を避けるため。 - 材料2のもう1ショットは加熱して減水させ、ドリンクに追加する。
フレーバー/タクタイル
- シトラスの酸(エスプレッソ フォーカスド コーヒーのもの)
- アップル
- はちみつ
- ベリー(カプチーノ フォーカスド コーヒーのもの)
- ピーチネクター
- ココア(カプチーノ フォーカスド コーヒーのもの)
- フル・ラウンドボディ
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